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旧古河庭園と染井霊園 [自転車散策・紀行]

6月1日から、都内の公園がようやく再開となったようです。

先日、立ち寄った時には堅く閉ざされていた旧古河庭園の門も、今日は開いていました。

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せっかくなので中へ入ってみることにしました。

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庭園だけの開放だと思いきや、建物の方も公開されています。なかのカフェのメニューもみやげ店のメニューも季節柄、バラづくし。

バラ園は、開園時間も限っているので、残念ながら例年のようなライトアップもないし、バラの開花時期としても半分近くが失われてしまいました。でも、バラは桜のように一斉の満開を楽しむものではないし、種類も豊富で、開花時季もまちまち。その日、その日に色と匂いを競い合うような、濃いめだけどうつろいやすい個性美を愛でるのも楽しさです。

ここから、本郷通り沿いに長い坂の下り、ふたたび坂を上りきるとJR駒込駅があります。

池袋駅が開業し、田端までの間、つまり旧・豊島線が開通したのが明治36年のこと。さらに、そこが明治43年になって複線化されたことで新たに開業した駅でした。明治末年にかけて十条や鶯谷などが次々と開業していきます。ちなみに、上野と御徒町、秋葉原、神田がつながって、山手線の環状化が完成したのは大正14年のことでした。

駒込駅のすぐそばにあるのが六義園の染井門です。

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六義園そのものは、旧古河庭園と同じように開園しているようですが、染井門は開いていません。今は、ふだんこの門は開けていないのでしょうか。駅にとても近くて便利な門を閉ざし、わざわざ遠い上富士前の正門に回らせるのは「○○ファースト」を標榜する知事さんの主張とは真っ向に反するようで残念です。

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それはさておき、この染井門の正面のまっすぐな一方通行路をずっと行くと、その突き当たりにあるのが染井霊園です。

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谷中、青山とともに都営の公営墓地のひとつ。歴史は古く、それだけに多くの著名人が埋葬されています。

ちなみに都区外の公園墓地として、府中市と小金井市にまたがる多磨霊園が造営されたのは、もっとずっと後のことになります。東郷平八郎元帥が埋葬されたことでようやく名が知れるようになったといういきさつで、あちらの有名人は山本五十六、古賀峯一など海軍軍人が多いようです。

有名人のお墓といえども、そこは公営墓地。とても質素で、広い墓地のなかで探すのにひと苦労でした。

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比較的、見つけやすいのは高村光雲、光太郎と智恵子夫人が眠る高村家のお墓。墓石が明るいからでしょうか。

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日本の美術と茶道などの独特の美意識を世界に知らしめた岡倉天心の墓でさえ、こんな程度です。

公営の霊園なので無宗教。そもそも染井霊園は、既存の墓地が仏教寺院の所有であったために、明治新政府の神仏分離策によって進められた神式葬儀では埋葬場所が確保できなかったことを背景として開設された霊園でした。事情はキリスト教会も同じでしたので、ここには墓石に十字架が印刻されたものも多く見かけます。

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戦後の音楽界を駆け抜けた天才ヴァイオリニストの巌本真理もここに、両親と三人で仲良く眠っています。

真理は、教育者の長男である巌本荘民(まさひと)とアメリカ人マーグリトの間の長女として東京西巣鴨に生まれます。ハーフであることで何かと差別を受け、病弱でもあったために小学校を退学してしまいます。天才少女として華々しく世に出ますが、戦争のために戸籍上のメリー・エステルという名前を名乗れなくなり、真理と改名することになりました。

戦後まもなく渡米し、帰国後から本格的な演奏活動を再開しますが、1977年に乳がんを患い2年後に53歳の若さで死去しています。

そういうこともあって、私自身は生の演奏に接する機会はありませんでしたが、当時からもラジオやテレビで聴いたり見たりして鮮烈な印象を受けたことをよく覚えています。

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染井霊園に隣接した周囲にも寺院の墓地があるのは、寛永寺の墓地と不分明な谷中霊園と共通しています。霊園の道をまっすぐに突き抜けると芥川龍之介が埋葬されている慈眼寺の墓地があります。

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墓石には、長子である俳優・比呂志の名のみで、作曲家の也寸志の名は刻まれていません。明治以来の先祖代々の墓というのはそういうものなのでしょう。

霊園と慈眼寺の間の細い道をたどっていくと、都中央卸売市場豊島市場の脇を通って白山通りの大通りに出ます。

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