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音の良いCD [オーディオ]

 最近、また、たびたび聴くようになったのがこのCD。

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 正確に言えば、CDで聴いていたのは昔のことで、今は配信ダウンロードの176.4KHz/24bitのハイレゾ音源で聴いている。

 Reference Recordings(RR)は、言わずと知れたスペクトラルの設計者であり、HDCDの発明者でもあるキース・ジョンソン博士が率いる高音質レーベル。デジタル録音が成熟した現代であっても、このレーベルは優秀録音の宝庫。

 なかでも特に印象深いのが、大植英次が指揮したミネソタ管弦楽団の一連の録音で、このCDは好きなレスピーギの大編成オーケストラの醍醐味が味わえるのでもっとも気に入っている。

 何が良いのかということを、ひと言で言ってしまえば、音像や音場がきわめて自然で、ツギハギ感がないこと。大編成のオーケストラをホールのロイヤルシートで俯瞰するような自然なたたずまいと幅いっぱいの拡がりを持つステージ感がある。打楽器など音のキレとスピードがあり、広大な帯域とダイナミックレンジがあり、同時に弱音も高精細で澄み切った美音で鳴ってくれる。

 特に、最近になって再び愛聴しているのは、その奥行きの距離感を見事にとらえた自然な立体音場が、新バージョンのMFPCでより鮮やかに感じ取れるようになったからだ。

 けれども、この立体音場という感覚は、ソースが一般にはとっつきにくいクラシック音楽ということもあって、なかなか理解してもらえない。オフ会などのデモには向いていない。ただ、とにかく大音量の部分で驚かすだけならともかく、聴かせどころを聴いてもらおうとしてもあまりわかっていただけない。


 一曲目の「シバの女王ベルキス」(Tr.1~Tr.4)は聴きどころ満載。

 もともとはバレエ曲で、あまりに大がかりな曲なので再演はほぼ不可能ということで、作曲者自身が4曲のオーケストラ用組曲にした。近年、吹奏楽のレパートリーとしても人気があるようだが、原曲に較べれば編成は縮小されている。

第一曲「ソロモン王の夢」(Tr.1)
 寝室でまどろむソロモン王。フルートとクラリネットの重なり合うメロディのピュアな音色。やがて、盛り上がり荘重な行進となるのは「王の入場」の場面。ダイナミクスとともに低音の魅力が聴きどころ。これが静まるとハープのアルペジオにのせてチェロのソロが愛を語る。こういうソロを決してクローズアップしないでそのままの距離感で捉えているのはこのCDで一貫している。立体感とともに弱音のコントラストをしっかり再生する能力が問われる。

第二曲「夜明けのベルキスの舞」(Tr.2)
 絶世の美貌と気品ある叡智の女王ベルキスは、まだ、朝方のまどろみのなかにいる。アラビアの大太鼓のリズムと、フルートのソロ、チェレスタ、コールアングレの調べ。こういうオーケストラの楽器の音色のが織りなす色彩は、続く「舞い」の場面でも弦楽器が加わって、このトラックの聴きどころ。

第三曲「戦いの踊り」(Tr.3)
 打楽器群の狂宴ともいうべきトラックで、まさにアップテンポのリズムが交錯する。大事なのは甲高いEs管クラリネットや雄叫びをあげるトランペットなどとの奥行きの距離感の違い。そういう階段状に幾壇にも連なるレイヤーが、この喧騒のなかでどれだけ感じ取れるかというのも聴きどころ。

第四曲「饗宴の踊り」(Tr.4)
 ソロモン王とベルキス女王の結婚の饗宴。バレエの大団円。第三曲に続いての狂乱。それが一瞬静まって、バンダからテノールがヴォカリーズ(言葉無しの母音)で歌う。バンダというのは舞台裏の楽器のことを言う。はるか遠くから、まるでコーランを詠唱するかのように恍惚と響いてくる。この《バンダ》は、後ほどの「ローマの松」にも使われる。このテノールの遠さが、単にボンヤリと聞こえるようでは、システムの実力が知れる。あるいは、聴き手の音楽的教養の浅薄さ、お里が知れてしまうということにもなりかねない。この《バンダ》の効果は、ベートーヴェンの「レオノーレ序曲第3番」がおなじみだし、マーラーもその交響曲でよく使っているからだ。まさに、この《バンダ》のテノールが、このCDの自然な立体音場を聴き取る一番わかりやすいポイントになる。


 二曲目の「地の精(ノーム)の舞曲」(Tr.5~Tr.8)
 レスピーギのオーケストレーションは、最高域と最低域といった音色のコントラストを強調して、猟奇的な原詩の鮮烈さを描く。ここでは、あまり立体音場ということよりも、そういう帯域やダイナミクスの両端の対比が生き生きと出ているかがポイント。ホールトーン豊かな音場のなかで、音が芯を食うように痛烈になるかどうか。そういうところが全体として聴きどころになる。


 三曲目は、人気曲の「ローマの松」(Tr.9~Tr.12)。

 これも聴きどころ満載。

 話しが長くなってしまったので次回に続けることとしたい。
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