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ハイレゾとチャクムル [オーディオ]

Direttaの導入やサテライトアースの追加などで微妙な変化がありました。

変更してすぐにはわからないのですが、時間をかけていろいろなソフトを聴いたり、逆にひとつのソフトを何度も聴いてみたりするうちにいろいろとじわりと気づくことが出てきます。

気になり出したのは、特に、高域です。日によって感じが違うのですが、どうも上流のクウォリティが上がると下流の微妙なコンディションの違いが表面化するようです。状況に慣れてくると、静電気の帯電とかプリアンプの数mAのDCドリフトが耳で聴いてわかってきてしまうようです。

いままでDACは、オリジナルFsままを選択するのがベストと頑なに信じていました。DSD再生もフィルターはオフにセットしてきました。何度も試行錯誤した結果でしたが、ここにきて考えが改まりました。

CDフォーマットの44.1KHzよりも、96KHz、192KHzのほうがアップサンプリングの効果をより感じます。ハイレゾは、弦楽アンサンブルの高域の質感が粗く感じるのです。大げさに言えば砂とか素焼きの感じ。それがアップコンで滑らかでリアルになる。線が一本一本透けて見えるような高解像度はそのままです。ハイレゾほどそのせいで細かいトゲが見える。それがフィルター効果で滑らかにつながってくれるという感覚。

逆に、DSDのフィルターは、SACDフォーマットのDSD64で効果を感じます。DSD128やDSD256ではほとんど違いは聴き分けできません。DSD64ではハイ上がりに聞こえてしましますが、フィルターでそれがDSD本来の透明な空気感を取り戻してくれるというような感覚です。

理由はわかりません。でも、アプコンとかDSDフィルター(アプコンも補間ということでフィルターの一種?)は、上流・下流との相性のようなものがあってその効果は一概にこうだと決めつけられないということがわかりました。チップやハードに備えられているアルゴリズムもそうした相性の間を取り持つもうひとつの相性があってさらに複雑なのかもしれないとも思えます。どれかひとつに決めつけず、オプションはいろいろ試すのがよいのだと思いました。ここでも頼れるのは自分の聴感です。

きっかけは弦楽アンサンブルの高域ハーモニーや倍音が気になったからですが、ツボにはまってみるとピアノの音もよくなりました。音色に深み艶、濃度が出るようになりました。FMエアチェック音源で、時として耳につくサーというスノーノイズも、気がついてみればほとんど聞こえません。

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そんな時にハマったのが、ジャン・チャクムル。

最初は、FMの「ベストクラシック」での出会いでした。とてもピアノの音がよいことにはっとさせられたのです。すみだトリフォニーでの2019年8月5日の収録とあります。

チャクムルは、トルコ出身でパリのスコラ・カントルムで学び、2018年の浜松国際ピアノコンクールで優勝しています。これから本格的な活動をというところでコロナ禍で出鼻をくじかれた格好で昨年予定されていた公演はことごとく中止・延期となったことで知名度はいまひとつということだったのでしょう。

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NHKBSの「クラシック倶楽部」でも同じライブが放送されています。そこで、チャクムルが弾いているのがカワイのフルコンサートグランドピアノShigeru Kawai EXであることが画面を見てわかりました。純度と透明度の高い音色の秘密がこのピアノにあったのです。

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チャクムルの魅力は、美しい音色だけではなく、その知的な音楽性にあると思います。そのことは、とてもユニークなプログラムを見るとすぐに感じとることができます。その知性は、決して言語的な饒舌ではなくて豊かな情感や構成に現れます。ショパンの前奏曲も単に順番通り全曲を弾くのではなくて抜粋してひとつの感情の起伏を知的に再構成しています。TVでそうしたことを、訥々と生真面目に語り、語り終えると「いかがでしょうか?」と言わんばかりにふと表情を和らげる、その笑顔がとてもチャーミング。

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デビューアルバムでも、ベートーヴェンのソナタとかシューベルトの後期ソナタとか、ありきたりなものを取り上げずに、やはり、独自のレパートリーを組んでいます。リサイタルでも弾いていた超絶技巧のバルトーク「戸外にて」では、彼が考えた特殊なペダリングを行っているそうです。もちろんトルコの先輩・ファジル・サイの曲も取り上げている。そうしたことも、彼の知的な取り組みの一端だと思います。

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セカンドアルバムでは、リスト編曲のシューベルトの歌曲を取り上げていますが、ここでも「魔王」とか「糸を紡ぐグレートヒェン」とかではなく、弾かれることの珍しい歌曲集「白鳥の歌」を取り上げています。この歌曲集は、シューベルトの死後に出版されたもので、「冬の旅」「美しい水車小屋の娘」のような一貫した物語性はなく、もともとリストの編曲も原曲の順番から変えているのですが、チャクムはさらにそのリストの順番も守りません。原詩にこめられた物語とリストが緻密にピアノで描出する情感を存分に考察しながら、ここでも彼独自の構成で組み上げています。

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BISの録音も、このレーベル本来の知的な透明感がチャクムルの資質とぴったり。録音は、96KHz/24bitで行われていて、SACDとオリジナルままのフォーマットでのネット配信、いずれでも入手可能です。浜松のコンクール以来、すっかり気に入ったというKAWAIを弾いています。

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