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「反日種族主義」(李 栄薫 編著)読了 [読書]

ウソをつく国民、ウソをつく政治、ウソつきの学問、ウソの裁判。

実際、韓国は度しがたいウソつき文化だ。偽証罪で起訴された人の数は日本の172倍、誣告件数は500倍、保険詐欺総額は4500億円でアメリカの100倍。パク・クネ大統領は、セウォル号沈没事故の対応がきっかけで追い込まれたが、麻薬中毒だの美容手術中だっただの、愛人との密会だのと、それはとんでもないウソの羅列だった。

そういうウソの文化が社会を侵食した一番の責任は、ウソつきの学問にあるという。著者に言わせると、この国の大学はウソの製造工場だという。だいたい60年代から始まりその後60年もの歳月が過ぎ、全ての国民、全ての政治が平然とウソをつくようになった。そしてそのウソつき文化は、ついに司法まで支配するようになったというわけだ。

「種族主義」というのは、"Tribalism"のこと。

「部族主義」と訳すほうが一般的だが、共通の言語,宗教,文化などによって結合された部族集団への排他的で狂信的な帰属意識のこと。社会的に未成熟なもので、むしろ、自由と人権という価値観に基づいた近代国民国家の形成・成長を阻害する偏狭な精神状態だと言える。近代の民族主義とは区別して、そういうネガティブな意味合いを込められることが多い。著者の意図は、韓国独特の土俗文化と血統主義など遅れた精神性に根ざした「反日」の理不尽さを「種族主義」の呼称に込めているのだろう。

編著者の李栄薫は、長くソウル大学教授の職にあった経済史研究者。

韓国では11万部のベストセラーとなる一方で一部の公立図書館では閲覧禁止となった問題の書。自国の「反日」に対して激烈な批判・批難を込めている本書だが、エッセイともいうべき小論文集となっていて、執筆姿勢は極めて学術的、実証的なもの。

それにしても、今さらながら、「反日」の臆面もないウソの大行進に改めて驚かされる。

その指摘のほとんどは、日本でもすでに産経新聞や西岡力らの、いわゆる《保守言論》によってさんざん紹介されよく知られているもので、いちいち羅列するつもりはないが、こうして一望してみると韓国の反日言論や運動家のみならず、悪意善意にかかわらず国全体に広く深くウソが浸透しているその劣悪な現状に唖然とする。

本書で初めて知ったたこともある。

例えば、統治時代の総督府が行った土地測量活動と所有登記推進について、日帝の「暴力的一方的な土地収奪」と決めつけられていること。もちろん、それはウソ。しかも、それは「鉄杭神話」というとんでもないウソにまで拡大される。「鉄杭」とは測量三角点設置への無知に由来する。それば未開の住民の反感・抵抗となり、解放後には、日帝が国土のあらゆる血脈に鉄製の杭を打ち込んだという神話を作り上げ、それを引き抜く狂信的大衆動員を政治が煽ったのだという。著者らは、そこに風水思想という前近代的な韓国の「種族主義」も見いだす。

こうしたウソの大攻勢は、「国定」教科書へ堂々と記述され、統治も戦争も知らない世代に刷り込まれ、「反日」はどんどんと拡大再生産されている。

日本の政治外交は、教科書問題などと一方的に押し込まれる一方で、対する韓国の教育現場で強制徴用にせよ従軍慰安婦にせよウソがどんどんと拡大浸透することを放置してきたのだ。日本のジャーナリズムは、双方性や公平性を欠いたばかりか、朝日新聞の「慰安婦狩り」報道などジャーナリズムがそういう虚偽のきっかけを創り出し幇助さえしてきた。

本書にも、いささか得心がいかない部分もある。

著者らは、大韓民国初代大統領イ・スンマンの信奉者であることを隠さない。編著者は、「李承晩学堂」の校長。「反日種族主義」の主張は、「李承晩TV」という動画で配信されたもの。

しかし、そのイ・スンマンこそが「反日主義」の始まりではなかったか。

本書では、「独島」は「反日種族主義の最高象徴」と反日のシンボルにされてしまったと、竹島の歴史的経緯と国際法上の地位を正当に評価している。けれども「竹島」問題のそもそもの発端はイ・スンマンの引いた一方的な領海線、いわゆる「李承晩ライン」にあることは、私たちのような団塊世代には記憶が鮮明だ。実態は漁業権をめぐる争いで多くの日本漁民が不当に排除(時には拿捕・抑留)されて苦しめられた。それがいつのまにか反日シンボル化されたというのは事実だが、根っこはイ・スンマンの反日主義にある。

編著者は、独立当時の韓国の国民国家としてのアイデンティティとレジテマシーのためには必要だったと正当化するが、そういう評価姿勢は不可解だ。もっと言えば、イ・スンマンは、独立運動の一派ではあるが、ウッドロー・ウィルソンに連なる米国のキリスト教原理主義者のロビーイストに押されて南北分断後の大統領に据えられたに過ぎない。運動家、理想主義者としてはともかく、為政者としての資質には欠ける人物だった。

本書は、日韓問題をよく知る上では良書だが、決して「反韓」「嫌韓」という低い次元で祭り上げるべきでもない。「歴史問題」というものは厳然としてそこに在るからだ。

「反日」は、つまりは韓国国民の心根にかかわる国内問題だけれど、「反日」への反論が、「反日」の始祖ともいうべきイ・スンマンの信奉者から発せられているということでは、いつまでも保守vs革新という不毛の二項対立から抜け出せないだろうとも思う。

そういうことを、深い嘆息とともに、読後感として抱かざるを得ない。




反日種族主義_1.jpg


反日種族主義 日韓危機の根源
李 栄薫(編著)
文藝春秋

タグ:反日
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