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「こう見えて元タカラジェンヌです」(天真みちる著) [読書]

100年以上の歴史を持つ、日本の誇るユニークなエンターテーメント宝塚少女歌劇に、これまた、新たな男役バイプレーヤーのキャラクターを打ち立て「オジサン」役に徹した天真みちるの「清く、正しく、美しい」女の世界の爆笑内幕本。自身も「誰も悲しまない暴露本」を標榜する。

おばあちゃんに言われて目指したタカラヅカに見事一発不合格…から始まり、究極の本番初日台詞落ちまで、爆笑の自虐ネタが満載。

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得意にするタンバリン芸は、内輪の宴会の余興芸から生まれたのだとか。最初はピン芸人・ゴンゾーの物真似から始まったが、これが“たそ”の大ウケのパワー芸になった。

“たそ”とは彼女のニックネーム。愛称(ニックネーム)は、タカラジェンヌを身近に感じさせる伝統の風習。もともと本名にちなんで「うめちゃん」→「うめタン」と自称しようとしたが、ヘタ文字の「タン」が「タソ」と読まれてしまい、失笑とともにそれがそのまま愛称になったという。

トップスターの輝かんばかりの才色兼備とは縁遠い、何だかちょっと落伍気味の脇役と受けとめられるかもしれないが、宝塚音楽学校の文化祭では、ピアノが得意そうだからと先生の指導でラフマニノフの前奏曲「鐘」とかもっと難しい「ト短調」とかを披露したというからけっして並の凡才ではない。そんな話しも爆笑ネタにしてしまうところに、タカラヅカという場所の凄みが伝わる。

入学から卒業、試験と競争、組への配属、新人と年長者、トップスターへの道…とタカラヅカの厳しい世界とともに、その対極にあるタカラジェンヌたちの女の友情や、後輩への暖かい情愛と濃やかな気づかいなど、ヅカの分厚く深い芸道の世界が見えてくる。そこが、トップスターの成功体験だけの評伝からは見えてこない、独自の世界なんだと思う。

文調もイマドキの若者用語、女性用語、新奇な誤用、用法を駆使していて楽しい。そんな文章も雰囲気満点で、私のようなホンモノの「オジサン」にも楽しめた。


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こう見えて 元タカラジェンヌです
天真みちる 著
左右社
タグ:宝塚
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