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「とっておきブラームス」 (芸劇ブランチコンサート) [コンサート]

秋になるとブラームスが恋しくなってきます。

夏にはちょっと暑苦しい…ということの裏返しなのかもしれませんが、かといって春というわけでもない。やっぱりブラームスは秋が一番お似合いなのかも。

それでもハンガリー舞曲というのはちょっと例外なのかもしれません。

この曲、特に第5番は、オーケストラのアンコールピースとしてとても有名です。子供の頃、音楽課外授業ということで区の公会堂でのオーケストラコンサートに行くのが楽しみでしたが、アンコールはたいがいこれだったというのも懐かしい思い出。

ウィーンなどのビアホールでの楽団のライブなんかも連想させますが、そちらはヴァイオリン独奏板でしょうか。実際、この曲集はブラームスが若い頃にジプシー楽団から得た曲想をリメイクしたもの。それを当時、ピアノが普及し始めた富裕な市民家庭で人気があったピアノ連弾用に出版したもの。はじめからウケを狙ったもの。実際に楽譜は大ヒット。そういう意図は大成功だったというわけです。

ピアニストの三原未紗子さんは、桐朋音大を卒業後、ベルリン芸大に学び、その後もザルツブルク・モーツァルテウムでも学び、ともに首席で卒業。2019年のブラームス国際コンクールで優勝したというから、この曲はお手のもの。ところが、ほとんどを第二奏者ばかり演奏してきたそうです。それを清水和音さんが、やっぱり男性が低音側を担当するほうが座りが良いということで、強引に第一奏者をやらされたらしい。弾くこと自体よりも、相方の音や響きが違うことがとても新鮮だったのだとか。

あらためてオリジナルのピアノ連弾版を聴くと、プライベートな楽しさももちろんですが、ブラームスの濃い目のシンフォニックなピアノ作法がよく見えてきてとても楽しい。


この日の池袋・東京芸術劇場の大ホールは、いつもとは違ってオルガンが見えません。

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ここのパイプオルガンは、コンサートホール備え付けのものとして恐らく日本最大。珍しい回転式で、一方は、ルネサンス様式とバロック様式という2台のオルガンがはめ込まれたクラシック・デザインで、もう一方は、ロマン派移行期の5段鍵盤のモダン・デザイン。どちらが見えるかで、ちょっと風景が違います。

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なぜ、この日に限って音響パネルなのかはわかりませんが、オーケストラ公演では音響パネルを使用することが多いようです。

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そのせいなのか、この日はちょっと残響が長く、遠い。一次反射が遅く遠く残るので室内楽としては少し違和感があります。それでもブラームスの厚い響きにはむしろマッチしているとさえ感じるところがブラームスのブラームスたるところなのでしょうか。

そして、二曲目のピアノ四重奏曲が素晴らしかった。

編曲といえば、この曲はシェーンベルグの管弦楽編曲版が有名。私自身は、若い頃にNHKFMからエアチェックしたシェーンベルク版にすっかり馴染んでしまい、頭の響きはむしろそちらのほうなのですが、改めてオリジナルをナマで聴くとその素晴らしさに惚れ込んでしまいました。響きがとてもシンフォニックで、しかも、音調の濃淡や、色彩の遠近が鮮やか。終楽章コーダ直前の擬古的でロマンチックな弦楽器の掛け合いなど、曲調も変幻自在。シェーンベルクが絶賛するのもわかる気がします。

特に松田理奈さんのヴァイオリンにはぞっこん。

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終楽章の主題には装飾音符の前打音(アポジャトゥーラ)がついていますが、それをボーイングのアップダウンでしっかりと弾いている。装飾的というよりしっかりとした後拍に近い強アクセントに感じさせて、それが厚みと力強さを感じさせていかにもブラームスらしい。どんな奏者でもあのように弾くのかはわかりませんが、松田さんの正確なボーイングテクニックとその美音がそこかしこに発揮されていて、とても強く印象に残りました。


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芸劇ブランチコンサート
清水和音の名曲ラウンジ
第32回「とっておきブラームス」
2021年10月13日(水) 11:00~
東京・池袋 東京芸術劇場コンサートホール
(1階N列22番)


ブラームス:ハンガリー舞曲 第1番~第6番(ピアノ連弾)
(Pf)三原未紗子、(Pf)清水和音
ブラームス:ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 op.25
(Vn)松田理奈、(Va)佐々木亮、(Vc)佐山裕樹
(Pf)清水和音

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