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勤勉実直な天才少年・メンデルスゾーン (オーケストラ・リベラ・クラシカ) [コンサート]

念願かなっての初めてのオーケストラ・リベラ・クラシカ(OLC)体験。しかも、これも念願だった三鷹の風のホール初見参でした。

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OLCが創設されたのは2002年。年に2~3回の定期演奏会を開催するなど活動を続けてきましたが、2019年のバルトルド・クイケン(フルート)をソリストに迎えての演奏会から定期を一時休演。そのままコロナ感染の影響で活動の制約を受けることになってしまいます。だから、今回の定期はおよそ2年振りの定期公演だそうです。会場も以前までの石橋メモリアルホールから、この風のホールに場所を変えたというわけです。

この日は、すべてメンデルスゾーンのシンフォニア。

早熟の天才、メンデルスゾーンは、12歳から14歳にかけて「弦楽のためのシンフォニア」を(最後の「断章」も含めて)全部で13曲作曲しています。OLCはこれまでも何曲か演奏していて、今回はこれまで演奏していなかった曲がほとんど。そのせいか、前半は短調の曲ばかり。後半の唯一の長調の11番には打楽器つきのスイス民謡楽章を持つ5楽章からなる大曲。

いかにもこの団体らしいアカデミックなプログラム。

それだけに聴き手にもそれなりに忍耐力が必要かも。弦楽オーケストラという彩色が単調なわりに、勤勉実直な天才少年がバッハ一族など先達に習って駆使する旋律と対位法にいささか過剰感もあって、それを律儀なピリオド奏法で短調ばかり続けられるといささか疲労感を覚えます。休憩でひと息ついてから、11番のヘ長調に転じるとほっとします。しかも第2楽章スケルツォで、ティンパニ、シンバル、トライアングルが参加してのウェディング・ダンスの楽しさに、ようやく目が醒めました(笑)。

面白かったのは、オーケストラの配置が完全に左右対称なこと。

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中央にコントラバス1台とチェロが2台。扇形の左右にヴァイオリン(各4台)とヴィオラ(各2台)が向き合う対向両翼型。ヴィオラが左右に分けられていることに首を傾げましたが、どうもヴィオラも2パートに分割されているようです。少年メンデルスゾーンは、弦5部ではなく、6部として作曲したということなのでしょう。勤勉実直な書法ぶりがよくうかがえます。

風のホールは、音楽的な響きの良さを大事にしながらも、多様なジャンルの公演会場としての多目的ホールとして、残響時間にはほどよい抑制があります。木材パネル中心の壁面には人造大理石など硬質材でのデザインパネルで凹凸が施されて、シューボックスタイプのホールでありながら、うまく定在波対策が施されています。そういうバランス感覚が、このホールにも実直な響きという印象を感じさせます。OLCの演奏会場としては、響きの豊かな石橋メモリアルホールのほうがよりふさわしかったのではないかという気もしないではありません。

話題がそれますが、石橋メモリアルホールは音楽興行会社に譲渡されるとのこと。

その会社は、アニメやゲームなどの音楽を事業とする新興企業で、その傘下の劇団公演のグループ会社に運営が委ねられるとのこと。音楽大学の講堂、音楽ホールとしてその甘美な残響の豊かさで独自の立ち位置にあった名ホールの今後がいったいどのようになるのか、いささか心の痛みをともなう不安を感じています。


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オーケストラ・リベラ・クラシカ 第45回定期演奏会
2021年11月12日(金) 19:00
東京・三鷹市 三鷹芸術文化センター 風のホール
(1階E列11番)

鈴木秀美 指揮
ヴァイオリン:若松夏美(コンサートマスター)
       高田あずみ、荒木優子、堀内麻貴、高田はるみ、山内彩香、
       高橋奈緒、池田梨枝子 
ヴィオラ:成田寛、森田芳子、廣海志帆、高岸卓人
チェロ:山本徹、島根朋史
コントラバス:今野京
ティンパニ:菅原淳 
打楽器:森山拓哉、箕輪飛龍

フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ
弦楽のためのシンフォニア
 第4番 ハ短調
 第10番 ロ短調
 第3番 ホ短調
 交響的断章(第13番)ハ短調
 
 第11番 ヘ長調

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