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富田心 東京・オーケストラデビュー (都響 プロムナードコンサート) [コンサート]

先日の、東京デビューリサイタルにすっかり魅せられて、サントリーホールまで追っかけしました。

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そのグラズノフの協奏曲が素晴らしかった。

そもそもこの曲は滅多に演奏されない。私もナマは初めて。いざ聴いてみると、オーケストラも充実した響きでいかにもグラズノフらしい充実した音色が聴ける。しかも、ヴァイオリンの独奏も、難技巧が地味にちりばめられているのがナマでこそ分かるとことがあって、やっぱり名曲だなぁと実感したり、演奏されたがらないことにも納得するやら。

富田心は、その難曲を何事もないように端然と弾き進める。

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祝祭日のプロムナードコンサートのせいか、あんなタイミングだったにもかかわらずよい席が取れました。自分としてはこのホールベストのLBブロック。右か左か多少迷いましたが、かえってヴァイオリン独奏の指がよく見えて正解。オーソドックスな右低弦配置なので低域もたっぷりと届きます。

甘美なほどに流麗な第一楽章もたっぷりと聴かせてくれます。ソロの出だしの低域もよく鳴っていて中高音も豊か。先日のリサイタルとは、やはりホールの残響の長さの違いを感じます。やっぱり凄みを感じさせるのは中間のカデンツァ。派手な振りは何一つないのに重音奏法の技巧の限りが尽くされている。特に終盤の十六分音符のトレモロ音型を重ねるところは、こうやってこの目で指遣いを見てみると凄い。民族色がたっぷりの終楽章も華やか。

富田心は、二十歳前とは思えないほどステージマナーも堂々たるもの。ほんとうにこれから目を離せない若手だと思いました。楽器は、サイタルの時と同じという印象。ホールの響きの違いはあっても、低域がややリッチさに不足するところや高域のクセなどが同じだと感じたからです。でも、若さがあってよい楽器です。とにかく、若い奏者と若い楽器の、そういうしなやかな感性を心から楽しませてもらいました。

この日の指揮者は、代演のアクセルロッド。11月半ばに来日。その後の政府の外国人締め出し政策のおかげで代演に引っ張りだこ。ビザの3ヶ月をフルに使って、なんと5つのオーケストラと21公演の指揮台に上ったのだとか。ひと呼んで《国境封鎖の指揮者》。

最初の「ポロネーズ」はノリノリ。

この曲は、チャイコフスキーの歌劇「エフゲニー・オネーギン」第3幕冒頭に演奏される曲。それまでの晩秋の田舎貴族の邸宅、凍てつく厳冬の原野の決闘という場面から、一転して華やかなペテルブルクの大舞踏会の場面に転換する曲。だから、この曲の演奏は華麗であればあるほど映える。都響の面々も身体をポロネーズのリズムに任せて弾きまくる。さすが都響ならではの頭からのフルスロットルは気持ちがよいほど。

後半の交響曲4番も、大変な熱演でした。

冒頭の運命のファンファーレからして壮麗。アクセルロッドの指揮は、聴かせどころは盛大に聴かせる。ホルン5台、トランペット4台と、それぞれ1台が補強されていて全奏の場面では全員参加で目一杯強奏させる。各楽章のテンポも緩急がエキスパンドされていて、加速、減速、ギヤシフトが小気味よいほどにスポーティ。

アクセルロッドは、指揮者を志す前は、カリフォルニアのワイナリーで働いていたという異色の経歴だそうです。なるほどいかにもアメリカ的な曲想のとらえ方で、運命とか陰鬱なロシアなどはお構いなしで、さながらサンタモニカかナパのワインディングロードを、大排気量のオープンカーで疾走するかのようなチャイコフスキー。これに応えて、吹き上げる金管セクションも、ノンブレスのオーボエソロも、疾走するピッツィカートの弦セクションも、最後の怒濤の行進とドスの効いたグランカッサもやれるだけやりきってしまうのが、さすが都響といえばさすがでした。

グラズノフがそうならなかったのは幸い。想像だけどソリストとオーケストラは、予定されていたオスモ・ヴァンスカと事前にこの演奏をよくよく打ち合わせていたのではないでしょうか。アクセルロッドは、この曲だけは大人しくソリストとオーケストラに従っていたという気がします。

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終演後は、大熱狂の拍手喝采。アクセルロッドは、この公演を最後に3ヶ月に及んだ日本滞在を終えてアメリカへと帰国するのだそうです。






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東京都交響楽団
プロムナードコンサートNo.395
2022年2月11日 14:00~
東京・赤坂 サントリーホール
(2階 LB4列 9番)

指揮/ジョン・アクセルロッド
ヴァイオリン・ソロ/富田 心
管弦楽/東京都交響楽団
コンサートマスター/矢部達哉

チャイコフスキー:歌劇『エフゲニー・オネーギン』より「ポロネーズ」
グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 op.82
エネスク:「幼き日の印象」より I.辻音楽師 op.28-1

チャイコフスキー:交響曲第4番 ヘ短調 op.36
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