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ドレスデンのフェルメール (中野振一郎 チェンバロ・リサイタル) [コンサート]

東京・春・音楽祭のミュージアム・コンサート。

美術館とのコラボレーションで古楽を楽しむという催しで毎年恒例の企画で楽しみにしています。今回は、「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」とのコラボ。

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ドレスデン国立古典絵画館(アルテ・マイスター絵画館)の自慢のフェルメール。その2点のうち「窓辺で手紙を読む女」が目玉の絵画展。長い間、背景の壁の下にはキューピッドが隠されていることは知られていましたが、それがオリジナルの画中画だということが証明されて修復が行われました。今回はそのお披露目というわけです。

コンサートの方は、その所蔵がドレスデンの美術館だということで、17世紀ドレスデンにまつわる音楽家たちの音楽。「フェルメールとオランダ絵画」とドレスデンというのは、一見、ちぐはぐですが、実はそういう関連付けというわけです。

エルベ川河畔の街、ドレスデンは、18世紀にザクセン選帝侯領の首都として、戦争に明け暮れる一方でその繁栄の頂点にありました。ドイツ諸国のなかでもマイセン陶器を始め最新の文化を誇り、音楽でもイタリアやフランスなどの文化をいち早く取り入れ、やがて独自の古典音楽を生み出しています。まさに疾風怒濤の中心。

まずは、ヘンデルやテレマンなど、その時代に人気を誇った作曲家のけん盤音楽から始まります。面白かったのはペツォールトという作曲家の作品。

大バッハのメヌエットは、実はバッハの作曲ではなかった…ということで有名ですが、その真正の作曲家ということでペツォールトは現代に蘇ったというわけです。そのメヌエットに続いて、組曲が演奏されました。耳障りのとてもよい端整な曲です。

その大バッハの長男フリードリッヒも、ドイツ前古典派時代の作曲家。古典的な風合いではあっても、ちょっと衝動的で多感な音楽。疾風怒濤の先がけとも言うべき作風が印象的でした。

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使用された楽器は、グスタフ・レオンハルトが使用した楽器なのだそうです。ドイツの音楽にふさわしいアーティキュレーションが明解なジャーマンタイプ。中野さんはふだんはフレンチタイプを愛用されているそうで、確かにちょっと弾きにくそうでした。

会場の東京都美術館の講堂は、その用途から残響は短めなのですが、昨年、聴いた印象では、ボーカルの発声や楽器の発音が明瞭で古楽にも意外にマッチしていたのですが、今回はどこか響きに乏しく楽器が鳴らない。ステージ後方に並べられた音響チューニングの衝立のせいなのでしょう。ただでさえデッドな傾向なのに、なぜ、こんなチューニングをするのか疑問です。中野さんが弾きにくそうにしていたことの一因もこれだったのかもしれません。



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東京・春・音楽祭2022
ミュージアム・コンサート
「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」記念コンサート vol.2
 中野振一郎(チェンバロ)
2022年3月24日(木)14:00~
東京・上野 東京都美術館 講堂


チェンバロ:中野振一郎

ザクセン選帝侯と音楽―アウグスト1世&2世の時代
 ヘンデル:組曲 ニ短調 HWV437
 テレマン:《チェンバロのための6つの序曲集》より 第1番 ト短調 TWV32:5
 C.ペツォールト:
  2つのメヌエット ト調
  組曲 変ロ長調 より
 W.F.バッハ:チェンバロ・ソナタ イ長調 Fk.8

(アンコール)
F. クープラン:『クラヴサン曲集第4巻』第23オルドルより「アルルカン」

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