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「産経新聞と朝日新聞」(吉田 信行 著)読了 [読書]

標題だけ見ると、何だか右派ジャーナリズムと左派のそれとの罵り合いに思えてしまう。ところがそうではない。読んでみると、ジャーナリストの矜持が示された良書。

著者は、産経新聞の元論説委員長だから、もちろん朝日新聞や論壇左派、あるいは共産党への批判はある。産経新聞の自画自賛のようなものであることも否定できない。けれども、基本はジャーナリズムとしての矜持である。著者が改訂に関わった新しい「新聞倫理綱領」についての考察は、起草委員会の責任者であった朝日新聞・中馬清福に対する公正な評価とともに傾聴に値する。

著者の産経新聞社内での立ち位置も微妙であった。フジサンケイグループの総帥として君臨し続けた鹿内親子と反りが合わず、台湾やモスクワ、ソウルへ降格左遷されたりしている。そこで得たものが大きかった。李登輝との知己を得て、もともとは産経新聞記者の先輩だった司馬遼太郎が朝日新聞に連載していた「街道をゆく」シリーズで台湾での取材を取り持つことにもなる。ここらあたりの経緯は、国際ジャーナリズムのあり方のみならず、日中関係や台湾問題を考えるうえで、その思考に深みを与えてくれると思う。

重ねて言うが、良書である。

産経新聞が常に好戦的な保守反動のジャーナリズムではないし、それと同じ程度に、朝日新聞が筋の通った左派リベラルというわけでもない。著者の新聞人としての冷静沈着な主張や、日本新聞史の俯瞰、今の世相やそれを導いているジャーナリズムに対する警鐘は読むに値する。

それを、何かサンケイv.s.朝日のように見せるタイトルはどうかと思う。あえてそうしているのは産経新聞そのもの。そのことは、下記のような産経新聞掲載の書評でよくわかる。

「朝日新聞はなぜこうまで日本人を貶(おとし)めたいのだろうか。
…それでも朝日は〈世界の潮流の音に合わない平和の歌を虚(むな)しく歌い続けるしかない〉と著者は喝破(かっぱ)する。
…朝日内部の具体的人名を挙げ社論の変遷をたどる筆致が次第にその歴史的な罪を炙(あぶ)り出す手法に、新聞人の矜持(きょうじ)が溢(あふ)れる。」
(2020/12/17 評・門田隆将)

こういう著しく内容を歪めた書評を喜々として掲載する産経新聞は、やはり、どこか狂っている。


産経新聞と朝日新聞_1.jpg

産経新聞と朝日新聞
吉田 信行 (著)
産経新聞社
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