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「楽器の科学」(フランソワ・デュボワ 著)読了 [読書]

音楽ファンとしては、なかなか面白そうだと思って手に取ってみた。

なるほど、楽器の構造、発音機構に着目した「分類」、「倍音」「共鳴」と、楽器のキモともいうべき項目が並ぶ。西洋音楽理論の根底にある整数論をふまえた説明も平明でわかりやすい。けれども、平易であるだけに浅い。「科学」というほどには、実証的ではない。例えば、取り上げられる楽器の数も限られているし図版も少なく具体性に乏しい。

著者は、マリンバ奏者にして作曲者だそうだが、それだけに実のところ「科学」からは遠いからだろう。せいぜいが数理に強い音楽家といったところ。「倍音」などは、ウィキペディアよりも易しく説明している…という程度でツッコミ不足。音楽ファンには不満。

むしろ面白かったのは、コンサートホールについてのお話し。ホールも楽器のひとつというわけだろう。しかし、これとても、取り上げられたホールは、ウィーン楽友協会大ホールなどごくわずかな有名ホールに限られる。日本在住の著者なら日本に限って、もっとたくさんのヴェニューを取り上げてもよかったのでは。直接反射と回折の指摘などはグッジョブなんだけど、結局、「音響技術者のセンスも主観的」というのでは「科学」にならない。

最終章のプロ演奏家たちの体験談や楽器論議も面白い。それは単なる楽器談義には終わらない。やはり、演奏家の生の体験とか感じていることは興味深い。むしろこうした生のトリヴィアルな話しをテーマとしてひとつひとつ掘り下げたほうが面白かったんじゃないかな。

やっぱり「科学」ってのは、やってみることなんだと思う。

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楽器の科学
 美しい音色を生み出す「構造」と「しくみ」

フランソワ・デュボワ 著
木村 彩 訳
ブルーバックス


楽器の個性を生み出す「倍音」とは?
音色を美しくする「共鳴」とは?
バイオリンの最重要パーツ「魂柱」とは?
楽器の素晴らしさを引き出すコンサートホールの条件は?
そして、プロが考える「最高の楽器」とは?
フランスで最も栄誉ある音楽勲章を最年少受章した著者が楽器の秘密を解き明かす!


プレリュード──音楽は「五線譜上のサイエンス」
第1楽章 作曲の「かけ算」を支える楽器たち──楽器には5種類ある
第2楽章 楽器の個性は「倍音」で決まる──楽器が奏でる「音」の科学1
第3楽章 楽器の音色は「共鳴」が美しくする──楽器が奏でる「音」の科学2
第4楽章 「楽器の最高性能」を引き出す空間とは?──コンサートホールの音響科学
第5楽章 演奏の極意──世界的ソリスト10人が教えるプロの楽器論

タグ:楽器
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