LPクリーニング アップデート [オーディオ]
アナログ再生で、デジタルなみのSNを求める。
CDP/DACが不在ということもあってアナログ三昧の日々ですが、それはまたクリーニングとの格闘の日々。
もともとの発端は、4月末連休初日の友人宅訪問でした。
張り切ってLPディスク数枚を持参したのですが、これがピチパチノイズがひどくてがっかり。たまたま、CBSソニーの盤ばかりでしたが、これが程度の差はあれことごとくダメ。見かねたオーナーさんがご自分の太田裕美をかけてくれました。こちらは完璧。
クリーニング方法をお尋ねすると、基本的には私の方法とほとんど変わらない。違いは私が重用する強アルカリ電解水を使わないこと。基本はレイカのA液・B液とのことでした。
これは実は思い当たることがあります。
アルカリ電解水は、水100%と言っていますが、厳密には微量成分を含みます。アルカリイオン水とは水酸化イオン(OH-)のみならず、電解の誘因としてのカルシウムなどの金属イオン微量に含んでいます。飲用のアルカリイオン水は電解促進のために事前に少量のカルシウムを添加します。これが残留していれば乾燥するとカルシウムを析出する可能性があるわけです。
ピチパチノイズは、どうも盤面に細かなカルシウムやカリウムなどのミネラルの微粒子が析出、融着しているからだと思えるようになりました。アルカリイオン水の濫用が、むしろ、このことを助長していた可能性がある。カルシウムなどのミネラル分が盤面に残れば、それが析出して残留付着する。そもそも、そうした金属や金属酸化物はアルカリでは落ちないのです。
そこでいろいろ道具を総動員しました。
新たに導入したのは、精製水。
酸性イオン水は入手困難ですが、精製水なら安価で供給豊富。ミネラル洗浄には十分なパワーがあるはずです。この導入をメインにありとあらゆる方法を試しました。半年近くかかったのは、なかなか決定的方法が見出せなかったからです。期待した超音波洗浄機はほぼ無力でした。
もうひとつのポイントは、メラミンスポンジの本格採用
以前はおっかなびっくりの試用レベルでした。メラミンは本来とても堅い樹脂。それを発泡させたスポンジはいわば紙ヤスリのようなもの。スポンジ構造の網目と研磨作用による洗浄力は強力ですが、やり過ぎれば傷をつけてしまうからです。けれどもきちんと用法を守ればさほど危険ではなく、効果は絶大であることがわかってきました。
あらかじめ申し上げておきますが、しつこいまでにノイズが残るディスクは一部です。一度は、満足いくレベルと思ったものの不満が残る。オフ会で持参したものも事前にクリーニングしてあったもの。一度で完璧に仕上がるものがある一方で、頑固なまでに何度やっても不満が残るディスクがあるのです。そういうものへの最終兵器的なメソッドです。
結論を先にまとめると以下のような基本手順となりました。
《機材》
a. 予洗: 流水(水道水)+メラミンスポンジ
b. 洗浄液: 精製水
c. スプレー サイエンス ミラブルケア ウルトラファインバブル
d. 仕上げ用洗浄液: レイカ バランスウォッシャーB液
e. 磨きブラシ: オムロン音波式電動歯ブラシ
f. 拭き取り(洗浄) ケルヒャー バキュームクリーナー(WV 50 plus)
(仕上げ) ディスクユニオン レコクロス50
g. ターンテーブル TV用ターンテーブル+DJ用スリップマット
h. ラベル保護プロテクター NAGAOKA CLP02
《手順》
1.予備洗浄
2.本洗浄
3.仕上げ
4.乾燥、仕上げ拭き
5.針通し
《補足》
1. 予洗
ポイントとなるのはここです。これがピチパチノイズ除去の決定打となります。
とにかく蛇口から水を出し常に水をかけ続けます。メラミンスポンジはやり過ぎは禁物。決して力を入れず水をたっぷりかけながら盤面を滑らすようにします。くれぐれも力を抜いてやり過ぎないように。
このプロセスを飛躍的にやりやすくさせてくれたのはNAGAOKAの改良型プロテクター。取っ手が大きく持ちやすくなりました。また、机上にも取っ手の平面を使って置けるようになり扱いやすくなりました。
2. 本洗浄
ここで従来使用していた強アルカリ電解水をやめて、精製水を使用することとしました。
ミラブルケアのマイクロバブルスプレーを使用するのは、従来と同じです。
e. 磨きブラシ
オムロンの音波式電動歯ブラシを使用します。オムロンは、TVのランキング情報番組で圧倒的に歯垢除去能力が高いと紹介されていました。音波振動式がよく、回転振動はNGです。もちろんデンターシステマ極細の手磨きという力仕事でもOKです。
f. 拭き取り
盤面に残った精製水を拭き取るのは、ケルヒャー バキュームクリーナーです。これを布などで拭き取るのは手間です。レコード専用の再生紙ではコストが半端ではありません。バキュームクリーナーならあっという間に吸い込んでしまいます。水分で洗い出した汚れを盤面に刷り込んでしまうこともありません。
以上のプロセスでも一回できれいにならないものもあります。
どんな理由があるのかわかりませんが、とにかくしつこくてなかなかノイズがきれいにならず満足できないものがあるのです。その場合は、二回、三回と繰り返します。
進めていくと、ピチパチというノイズが除去されてもジュクジュクと連続するノイズがあるディスクがあります。皮脂など生物由来の有機物の汚れで、なかでも頑固なのはカビによる汚れのようです。
これは再び強アルカリ電解水の登場です。
上記の基準プロセスの前に、従来の強アルカリ電解水の洗浄を加えます。最初に行うことが肝心です。強アルカリ電解水の洗浄後は特に予洗時の水洗いを十分に行い金属イオンを洗い流してしまうことがポイントとなります。
ノイズの原因となる盤面の汚れには、様々な種類があって、大きく二分すると、酸化金属などのミネラル分が残留している無機系汚れと、カビなどの生物由来の有機系汚れの二つがあるようです。静電気で呼び込んだゴミや皮脂による部分的な汚れは超音波洗浄機でも落ちますが、本格的な汚れは無理です。これらには、どうしてもクリーニングの力仕事は必要で、無機系→精製水(または酸性水)、有機系→アルカリという使い分けとなります。
現実的にはノイズの完全除去は不可能であっても、アナログの場合はノイズというのはほぼ全てが可聴帯域にあるので、クリーニングの効果はめざましく、この改善によって音楽の印象が激変することしばしばです。もちろん、よい方向にです。
最後になりますが、手順の最後の針通しは必ず必要です。クリーニングを終えてすぐにはノイズは完全に除去されません。それでもがっかりしないこと。最低1回は針を通すことが必要です。針先のクリーニングもお忘れなく。
レコードは、繰り返し聞けば聴くほど音が良くなる。クリーニングは、場合によっては一度では済まない。それでも忍耐強く繰り返せば、目覚ましく改善します。
アナログレコード鑑賞はやっぱり愛情です。聴けば聴くほど音は良くなる。再生音質は注ぎこんだ時間と愛情の量に比例します。
タグ:レコードクリーニング
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