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「ピアノ・デュオの極み」 (芸劇ブランチコンサート) [コンサート]

なかなか聴く機会の少ない2台のピアノデュオ。ステージには2台のピアノ差し向かいに置かれていて、右手鍵盤・手前のピアノの上蓋は外されています。

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ちょうど2年前には若手の入江一雄さんとのデュオでしたが、今回は、同じ桐朋学園大学でともに教鞭をとる同僚の有吉亮治さん。前回のように、デュオは苦手だとかそんな言い訳もなくずいぶんとリラックスした雰囲気なのは、互いにとても気心が知れた仲だからということでしょうか。

最近でこそ聴く機会が増えてきましたが、今回改めてステージ上の2台連弾を聴いてみると、ふたりのそれぞれのパートがずいぶんとはっきりと分離して聴き取れるのが意外なほどでした。ほとんどユニゾンで始まるモーツァルトですが、すぐに二人で愉快そうに掛け合いが始まります。早いパッセージと基音の連打のタッチの引き分けもそれぞれにあるのですが、二人のタッチの個性のようなものも感じ取れて楽しさも増します。清水さんはとてもクリーンな透明感が魅力、有吉さんは暖かみがあってスラーのつながりがとてもまろやか。

二曲目は、有吉さんの独奏でブラームスの間奏曲。

晩年にはピアノ独奏曲ばかりを書いたブラームスですが、その中でもとびきり優しく感情を抑えた静謐さのなかに慈愛に満ちあふれた曲集です。「きれいな音」を連発していた清水さんの紹介の通りで有吉さんの音色はほんとうにピュア。弾き手のいない蓋が外されたピアノが共鳴しているのでしょうか、心優しいぬくもりを感じさせます。2台ピアノの音の魅力の秘密をちょっとだけ垣間見たような気もしました。

三曲目は、ハイドンヴァリエーション。

オーケストラ版も魅力ですが、先に完成したのはこの2台連弾版で、もちろんスケッチとしての性格もあるのでしょうが、こちらが本家本元。このピアノ連弾版はCD時代になってからいくつもの演奏が聴けるようになりましたが、生演奏はたぶん今回が初体験。お二人の演奏は、融け込むようなアンサンブルが引き立ち、闊達な変奏が続くのにもかかわらずとても耳に心地よい。和声的な部分と対位法的な部分が錯綜前後しますが、やはり、ここでも2つのパートの聞き分けの魅力があって楽しいのです。まったく同じ楽器から様々な色彩とテンペラメントを編み出していく、そういう楽器手法の魅力を感じて心が華やぎます。ゴッホが毛糸玉をキャンバスの手元に置いて、様々な色合わせを確認しながら、色絵の具を隣り合わせたり塗り重ねたりして画いていたというエピソードを思い出しました。

とても素敵な2台ピアノのデュオでした。



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芸劇ブランチコンサート
清水和音の名曲ラウンジ
第40回「ピアノ・デュオの極み」
2023年2月15日(水) 11:00~
東京・池袋 東京芸術劇場コンサートホール
(1階P列18番)


モーツァルト:2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448
 清水 和音(Pf) 有吉亮治(Pf)
ブラームス:3つの間奏曲 op.117
有吉亮治(Pf)
ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 op.56b
 有吉亮治(Pf) 清水 和音(Pf)

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