ダイレクト・カット盤の再生 [オーディオ]
秋葉原アムトランスでの新忠篤氏ミニコンサート。
今回のテーマは、ダイレクト・カット盤の再生。
ダイレクト・カットとは、磁気テープを介さずに直接、収録現場でラインミックスしたものをそのままカッティングマシンでラッカー盤をカットするというもの。
今回再生されたのは7枚。いずれも凄い音がした。
01 日本のキンテート・レアル VOL.1
02 ロイ・エヤーズ・クァルテット
03 ザ・スリー
04 ダイレクト・フロム・クリーヴランド
05 アーサー・フィードラー・アンド・ボストン・ポップス
06 ワーグナー、エーリッヒ・ラインスドルフ指揮ロス・アンゼルス・フィル
07 テルマ・ヒューストンとプレッシャー・クッカー
先鞭をつけたのは日本コロンビアだったそうだ。01はその第一弾。来日して連夜のショーで人気を博していたタンゴ演奏グループに声をかけたところ快諾。深夜のスタジオで収録。恐ろしいほどのリアルさと、眼前で生の音を浴びるようなエネルギーで、文字通りダイレクトな音がする。45回転だからなおのこと。
02は、やはり来日したハービー・マンのクィンテットに声をかけたら即座にOK。ただしハービー・マンはアトランティックとの契約の縛りがあって参加できない。言ってみればマン抜きの、ハービー・マン・クァルテット。こちらも45回転。
03は、1974年に設立された日本のジャズ・レーベル。設立者は伊藤八十八。LAに遠征して収録。ラッカー盤をそのまま日本に持ち帰ったのだとか。クルセイダーズのジョー・サンプルが、レイ・ブラウン、シェリー・マンと組んだ豪華な顔ぶれのスペシャル・セッション。
ダイレクト・カットはやがて米国レーベルへと波及する。
04は、世界初のクラシックのダイレクト・カットと銘打ってテラークが手がけたもの。後のテラークのワンポイント的な音場感は皆無で、ちょっとのけぞってしまうような近接感。あからさまなハイ上がりにむせかえる。……と、思ったその瞬間、新さんの手が伸びる。
新さん設計・自作のフォノイコライザーアンプはEQ可変式。SPを聴くためにあらゆるEQカーブに対応できる。切り換え式ではなくて、ターンオフ/ロールオーバーをそれぞれ連続可変で調節できるのでトーンンコントロールのようにも使える。ステレオレコードを、ffrrだ、ColumbiaだというRIAA否定派とRIAA統一派との不毛な論争の双方をあっという間に黙らせてしまうような新さんの瞬間技に感じ入ってしまう。このアンプは、21世紀の真空管ユニットで組んであって、しかもバッテリー駆動。
こうしたダイレクト・カットは、簡単に再生できるわけではない。なかなかダイレクト盤らしい本領を発揮するのは実は難しい。そのことは実体験で知っているつもり。今回の再生のカギは、カートリッジ。
使用されたのは、クラング・クンストの10A。
ラッカーマスターのカッティング状態チェック用に開発されたもの。いかにもダイレクト再生にふさわしいが、そんじょそこらのカートリッジではない。その秘密は、コイルが、カンチレバーを介さずスタイラス真上に直接ついている。最近、フィデリックスが新開発したMC-F1000やオーディオテクニカがモデルチェンジしたART1000Xのいわば本家本元。
セッティングもかなり難しそうでなかなか素人にできることではないようだ。
推奨針圧は最大5.5gだそうだが、それを7gまでかけている。もっとかけたいところだそうだが盤を痛めかねないのでこれが限界なんだとか。バイブやピアノ、あるいは06のようなクラシックのフルオーケストラの大音量でもびくともしない。とびきりの安定度に驚いてしまう。大針圧のせいか盤によってはハイハットやパーカッションの高域がちょっと粗っぽいところがあるが、その広帯域、広ダイナミックレンジには腰が抜けるほど。アナログとは思えないが、その音にはデジタルには感じられないリアルな音の振動感覚がある。電気吹き込み以前のSPレコードは、すなわちダイレクト・カットだったので、どんなにレンジが狭かろうが、サーフィスノイズがあろうが、その魅力はこの音感覚がある。いわばアナログの魅力の根源のようなもの。
「爆音でどうもすみませんでした。」と新さんもしってやったりとご満悦のようで満面の笑顔です。
ダイレクト・カッティング盤は、けっこう沢山発売された。最近ではアナログ復権の潮流にのって21世紀のダイレクト・カットと称してキングレコードもチャレンジしているようだ。
ただし、ダイレクト・カッティング盤をそのままプラッターに載せて針を落とせばたちどころに別世界……というものではない。セッティングの完成度が試される。けっこうチャレンジングなものだと思う。こんなサウンドを聴かされると、なおのことそう思いました。
使用機材
カートリッジ Klang Kunst 10A
フォノイコライザー KORG Nutube使用連続可変型フォノイコライザー
アンプ ELEKIT TU-8900
スピーカー GIP Monitor 1
今回のテーマは、ダイレクト・カット盤の再生。
ダイレクト・カットとは、磁気テープを介さずに直接、収録現場でラインミックスしたものをそのままカッティングマシンでラッカー盤をカットするというもの。
今回再生されたのは7枚。いずれも凄い音がした。
01 日本のキンテート・レアル VOL.1
02 ロイ・エヤーズ・クァルテット
03 ザ・スリー
04 ダイレクト・フロム・クリーヴランド
05 アーサー・フィードラー・アンド・ボストン・ポップス
06 ワーグナー、エーリッヒ・ラインスドルフ指揮ロス・アンゼルス・フィル
07 テルマ・ヒューストンとプレッシャー・クッカー
先鞭をつけたのは日本コロンビアだったそうだ。01はその第一弾。来日して連夜のショーで人気を博していたタンゴ演奏グループに声をかけたところ快諾。深夜のスタジオで収録。恐ろしいほどのリアルさと、眼前で生の音を浴びるようなエネルギーで、文字通りダイレクトな音がする。45回転だからなおのこと。
02は、やはり来日したハービー・マンのクィンテットに声をかけたら即座にOK。ただしハービー・マンはアトランティックとの契約の縛りがあって参加できない。言ってみればマン抜きの、ハービー・マン・クァルテット。こちらも45回転。
03は、1974年に設立された日本のジャズ・レーベル。設立者は伊藤八十八。LAに遠征して収録。ラッカー盤をそのまま日本に持ち帰ったのだとか。クルセイダーズのジョー・サンプルが、レイ・ブラウン、シェリー・マンと組んだ豪華な顔ぶれのスペシャル・セッション。
ダイレクト・カットはやがて米国レーベルへと波及する。
04は、世界初のクラシックのダイレクト・カットと銘打ってテラークが手がけたもの。後のテラークのワンポイント的な音場感は皆無で、ちょっとのけぞってしまうような近接感。あからさまなハイ上がりにむせかえる。……と、思ったその瞬間、新さんの手が伸びる。
新さん設計・自作のフォノイコライザーアンプはEQ可変式。SPを聴くためにあらゆるEQカーブに対応できる。切り換え式ではなくて、ターンオフ/ロールオーバーをそれぞれ連続可変で調節できるのでトーンンコントロールのようにも使える。ステレオレコードを、ffrrだ、ColumbiaだというRIAA否定派とRIAA統一派との不毛な論争の双方をあっという間に黙らせてしまうような新さんの瞬間技に感じ入ってしまう。このアンプは、21世紀の真空管ユニットで組んであって、しかもバッテリー駆動。
こうしたダイレクト・カットは、簡単に再生できるわけではない。なかなかダイレクト盤らしい本領を発揮するのは実は難しい。そのことは実体験で知っているつもり。今回の再生のカギは、カートリッジ。
使用されたのは、クラング・クンストの10A。
ラッカーマスターのカッティング状態チェック用に開発されたもの。いかにもダイレクト再生にふさわしいが、そんじょそこらのカートリッジではない。その秘密は、コイルが、カンチレバーを介さずスタイラス真上に直接ついている。最近、フィデリックスが新開発したMC-F1000やオーディオテクニカがモデルチェンジしたART1000Xのいわば本家本元。
セッティングもかなり難しそうでなかなか素人にできることではないようだ。
推奨針圧は最大5.5gだそうだが、それを7gまでかけている。もっとかけたいところだそうだが盤を痛めかねないのでこれが限界なんだとか。バイブやピアノ、あるいは06のようなクラシックのフルオーケストラの大音量でもびくともしない。とびきりの安定度に驚いてしまう。大針圧のせいか盤によってはハイハットやパーカッションの高域がちょっと粗っぽいところがあるが、その広帯域、広ダイナミックレンジには腰が抜けるほど。アナログとは思えないが、その音にはデジタルには感じられないリアルな音の振動感覚がある。電気吹き込み以前のSPレコードは、すなわちダイレクト・カットだったので、どんなにレンジが狭かろうが、サーフィスノイズがあろうが、その魅力はこの音感覚がある。いわばアナログの魅力の根源のようなもの。
「爆音でどうもすみませんでした。」と新さんもしってやったりとご満悦のようで満面の笑顔です。
ダイレクト・カッティング盤は、けっこう沢山発売された。最近ではアナログ復権の潮流にのって21世紀のダイレクト・カットと称してキングレコードもチャレンジしているようだ。
ただし、ダイレクト・カッティング盤をそのままプラッターに載せて針を落とせばたちどころに別世界……というものではない。セッティングの完成度が試される。けっこうチャレンジングなものだと思う。こんなサウンドを聴かされると、なおのことそう思いました。
使用機材
カートリッジ Klang Kunst 10A
フォノイコライザー KORG Nutube使用連続可変型フォノイコライザー
アンプ ELEKIT TU-8900
スピーカー GIP Monitor 1
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