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「激動の韓国政治史」(永野 慎一郎 著)読了 [読書]

盧武鉉政権時代の2004年に設置され、軍事独裁政権下の事件を調査した「国家情報院過去事件真実糾明発展委員会(真実委)」の資料を中心に、ベールに包まれ謎の多かった事件の実情を暴露している。

扱われている事件は、金大中拉致事件、朴正煕狙撃事件(文世光事件)、朴正煕大統領暗殺事件、光州民主化運動、ラングーン事件、大韓航空機爆破事件、ソウルオリンピック招致など。

こうした激烈な事件の数々を通じて、軍政から民政への政権交代へと韓国現代政治史の流れを俯瞰していく。苛烈な政策をそれをもたらした凄まじい独断専制の圧政と、それに命がけで抵抗した民主化運動の実態を生々しく描いている。それは同時に、韓国社会に巣くう社会身分階層や地域差別、新興財閥と結びついた金権政治など分断社会の実態をも露わにする。

個々には、すでに、本書でも紹介されている映画「KCIA 南山の部長たち」やその原著などで紹介されているものばかりで新味には乏しい。また、そうした秘密資料の開示や暴露のほとんどが、軍事政権への批判という民主化運動の立場・視点からのもので、韓国政治史の見方としてはやや一方的と言わざるを得ない。あるいは日本の保守政権、財界が韓国とどのように関わってきたかについてはほとんど触れられていない。

歴代大統領のなかでは金大中が抜きん出た人物だったと思う。単に波瀾万丈の生涯というだけでなく、最後に軍政や北との和解を説いたその度量の大きさに圧倒される思いがする。

そういう金大中の遺志を継いだはずの人々が、盧武鉉のように悲劇的結末を迎え、あるいは文在寅が政治腐敗と憎悪と分断の政治手法に陥ったのはなぜなのか?韓国にはなお理解しがたい社会の深淵が潜んでいると思う。本書はそのことに何も応えてはくれない。

そうした限界はあるものの、韓国政治の流れを知るにはコンサイスにまとまっているし、濃厚で刺激に満ちた内容で、政治史として読ませてくれる一書だと思う。



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秘密資料で読み解く 激動の韓国政治史
永野 慎一郎 (著)
集英社新書
2024年7月22日 第一刷

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