「オーディオクリニック」シリーズを聴く [オーディオ]
秋葉原アムトランスでの新忠篤氏ミニコンサート。
今回のテーマは、「オーディオクリニック」シリーズ。
1970年代末、LPレコード後期に日本フォノグラムが発売した高音質LPレコード。ちょっとマニアックな演奏家の顔ぶれで、実のところあまり売れなかったレコードを、新しいテーマでシリーズ化し廉価盤として再発するという販売戦略。これが知る人ぞ知るという高音質盤。
使用機材は、文末の一覧の通り。カートリッジは先だってこの会で紹介された、クラング・クンスト10A。――ラッカーマスターのカッティング状態チェック用に開発されたもの。コイルが、カンチレバーを介さずスタイラス真上に直接ついているというシロモノ。
先ずは、リストアップされた10枚の中から、新さんの選んだ3枚。それから会場のリクエストに応えるかたちで4枚。かけたレコードは以下の通りです。
①FH-5 サラサーテ
ツィゴイネルワイゼン
グレール・ベルナール(ヴァイオリン)クレール・ジポー(指揮)
モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団
②FH-4 クープラン
Les Lis Naissans=開きはじめた百合
Le Dodo, Ou L'amour Au Bercear=子守歌(ゆりかごの愛)
ファラエル・プヤーナ(クラブサン)
③FH-10 ストラヴィンスキー
春の祭典 「生贄の踊り(選ばれし生贄の乙女)」
ベルナルト・ハイティンク(指揮)
ロンドン・フィルハーモニー
④FH-5 バッハ
無伴奏チェロ組曲第3番 プレリュード
ヤーノシュ・シュタルケル(チェロ)
⑤FH-30
ルクー ヴァイオリン・ソナタト長調 第1楽章
アルトゥーロ・グリューミオ(ヴァイオリン)ディノラ・ヴァルン(ピアノ)
⑥FH-6 リスト
死の舞踏
ミケーレ・カンパネッラ(ピアノ アルド・チェッカート(指揮)
モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団
⑦FH-25 ショパン
プレリュード
クラウディオ・アラウ(ピアノ)
①のツィゴイネルワイゼンは、10AではなくてオルトフォンのSPU-GTEでかけました。新さんとしては、まだちょっと10Aの高域の不安定さを気にされているご様子。
シリーズのジャケットは奇抜なデザインで、左側には両盤面の波形がタテに描かれていて経過時間毎に聴きどころが小さな文字でコメントされています。このコメントは、オーディオ評論家・和田則彦によるものだそうです。
そのコメントには、中間部のハンガリー民謡風のところで弱音器による音色変化に注目ということが書いてあるのですが、どうも聴いていると弱音器をつけているように聞こえない。楽譜には確かに弱音器("avec sourdine")と表記されているのですが、つけないまま演奏するひとも少なくない。コメントが的外れなのか、私の耳が駄耳なのか、あるいは、これがSPU-GTEの限界なのか??よくわかりません。
②のクラブサンでは、本来の10Aに戻します。たちまちにしてその本領発揮。恐ろしいほどの鋭い切れ込みです。アナログ時代にこれほどチェンバロの音を見事に録音していたのかと改めて驚きました。
③のハイティンクの「ハルサイ」。フィリップスでは、コリン・デイヴィスとコンセルトヘボウの録音がマニアにはもてはやされていますが、個人的にはこのハイティンクの方が演奏も録音も格上だと思っています。「ハルサイ」は人気曲でレーベルにさえ冷遇されていた若きハイティンクの悲哀を感じさせますが、その分、わかるひとにはわかるという隠れた名演・名録音になっています。
④のシュタルケルは、超有名盤。もともとはマーキュリーの録音ですが日本フォノグラムがたびたびフィリップスレーベルで発売していました。これは、幾多のオーディオファイル向けのカッティング、デジタルマスター化がされていて比較が可能でしょう。ちょっとメタリックで神経質な高域倍音がのっているのが気になるところ。これが10Aの神経質で針圧調整が難しいところなのでしょうか。
⑤のグリューミオは、いささかも人工的な甘味が添加されていない厳しい美音が見事。ルクーのほか、イザイ、ヴュータンとベルギー派の作曲家ばかりを弾いたアルバムで音楽的価値もとても高い。
⑥は、さすがの優秀録音。ピアノの音がピアノらしいリアリティでオーケストラの演奏も素晴らしい。モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団というのは、昔、よくFM放送のクラシック番組で取り上げられていましたが、こうやって聴いてみると素晴らしい技量のオーケストラ。感心させられました。
最後の最後にかかった⑦のアラウのピアノが素晴らしかった。
"凄い!"のひと言。
かけたのは、作品28の24曲最後の6曲ほど。19番目の変ホ長調の途中あたりから。B面の最内周ということになります。終曲となる24番の最後の最後、最低音のD音(36.7Hz)が鐘のように3度鳴り響くと、会場はしばらく言葉も出ないほど。
「いやあ、こんなによく鳴ったのは初めて。ようやくこなれてきたということでしょうけど、我が家でもこれほどには鳴らせなかった」と、新さんもため息まじりに苦笑い。
最後の最後に、すっかりクラング・クンスト10Aに話題を持って行かれてしまいました。凄いカートリッジです。
(参考:使用機材)
カートリッジ :クラング・クンスト10A (Ortofon SPU-GTE)
フォノイコライザー :Phasemation
アンプ :ELEKIT TU-8900(300Bシングル)
スピーカー :GIP Laboratory Monitor 1(励磁型2ウェイ)
今回のテーマは、「オーディオクリニック」シリーズ。
1970年代末、LPレコード後期に日本フォノグラムが発売した高音質LPレコード。ちょっとマニアックな演奏家の顔ぶれで、実のところあまり売れなかったレコードを、新しいテーマでシリーズ化し廉価盤として再発するという販売戦略。これが知る人ぞ知るという高音質盤。
使用機材は、文末の一覧の通り。カートリッジは先だってこの会で紹介された、クラング・クンスト10A。――ラッカーマスターのカッティング状態チェック用に開発されたもの。コイルが、カンチレバーを介さずスタイラス真上に直接ついているというシロモノ。
先ずは、リストアップされた10枚の中から、新さんの選んだ3枚。それから会場のリクエストに応えるかたちで4枚。かけたレコードは以下の通りです。
①FH-5 サラサーテ
ツィゴイネルワイゼン
グレール・ベルナール(ヴァイオリン)クレール・ジポー(指揮)
モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団
②FH-4 クープラン
Les Lis Naissans=開きはじめた百合
Le Dodo, Ou L'amour Au Bercear=子守歌(ゆりかごの愛)
ファラエル・プヤーナ(クラブサン)
③FH-10 ストラヴィンスキー
春の祭典 「生贄の踊り(選ばれし生贄の乙女)」
ベルナルト・ハイティンク(指揮)
ロンドン・フィルハーモニー
④FH-5 バッハ
無伴奏チェロ組曲第3番 プレリュード
ヤーノシュ・シュタルケル(チェロ)
⑤FH-30
ルクー ヴァイオリン・ソナタト長調 第1楽章
アルトゥーロ・グリューミオ(ヴァイオリン)ディノラ・ヴァルン(ピアノ)
⑥FH-6 リスト
死の舞踏
ミケーレ・カンパネッラ(ピアノ アルド・チェッカート(指揮)
モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団
⑦FH-25 ショパン
プレリュード
クラウディオ・アラウ(ピアノ)
①のツィゴイネルワイゼンは、10AではなくてオルトフォンのSPU-GTEでかけました。新さんとしては、まだちょっと10Aの高域の不安定さを気にされているご様子。
シリーズのジャケットは奇抜なデザインで、左側には両盤面の波形がタテに描かれていて経過時間毎に聴きどころが小さな文字でコメントされています。このコメントは、オーディオ評論家・和田則彦によるものだそうです。
そのコメントには、中間部のハンガリー民謡風のところで弱音器による音色変化に注目ということが書いてあるのですが、どうも聴いていると弱音器をつけているように聞こえない。楽譜には確かに弱音器("avec sourdine")と表記されているのですが、つけないまま演奏するひとも少なくない。コメントが的外れなのか、私の耳が駄耳なのか、あるいは、これがSPU-GTEの限界なのか??よくわかりません。
②のクラブサンでは、本来の10Aに戻します。たちまちにしてその本領発揮。恐ろしいほどの鋭い切れ込みです。アナログ時代にこれほどチェンバロの音を見事に録音していたのかと改めて驚きました。
③のハイティンクの「ハルサイ」。フィリップスでは、コリン・デイヴィスとコンセルトヘボウの録音がマニアにはもてはやされていますが、個人的にはこのハイティンクの方が演奏も録音も格上だと思っています。「ハルサイ」は人気曲でレーベルにさえ冷遇されていた若きハイティンクの悲哀を感じさせますが、その分、わかるひとにはわかるという隠れた名演・名録音になっています。
④のシュタルケルは、超有名盤。もともとはマーキュリーの録音ですが日本フォノグラムがたびたびフィリップスレーベルで発売していました。これは、幾多のオーディオファイル向けのカッティング、デジタルマスター化がされていて比較が可能でしょう。ちょっとメタリックで神経質な高域倍音がのっているのが気になるところ。これが10Aの神経質で針圧調整が難しいところなのでしょうか。
⑤のグリューミオは、いささかも人工的な甘味が添加されていない厳しい美音が見事。ルクーのほか、イザイ、ヴュータンとベルギー派の作曲家ばかりを弾いたアルバムで音楽的価値もとても高い。
⑥は、さすがの優秀録音。ピアノの音がピアノらしいリアリティでオーケストラの演奏も素晴らしい。モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団というのは、昔、よくFM放送のクラシック番組で取り上げられていましたが、こうやって聴いてみると素晴らしい技量のオーケストラ。感心させられました。
最後の最後にかかった⑦のアラウのピアノが素晴らしかった。
"凄い!"のひと言。
かけたのは、作品28の24曲最後の6曲ほど。19番目の変ホ長調の途中あたりから。B面の最内周ということになります。終曲となる24番の最後の最後、最低音のD音(36.7Hz)が鐘のように3度鳴り響くと、会場はしばらく言葉も出ないほど。
「いやあ、こんなによく鳴ったのは初めて。ようやくこなれてきたということでしょうけど、我が家でもこれほどには鳴らせなかった」と、新さんもため息まじりに苦笑い。
最後の最後に、すっかりクラング・クンスト10Aに話題を持って行かれてしまいました。凄いカートリッジです。
(参考:使用機材)
カートリッジ :クラング・クンスト10A (Ortofon SPU-GTE)
フォノイコライザー :Phasemation
アンプ :ELEKIT TU-8900(300Bシングル)
スピーカー :GIP Laboratory Monitor 1(励磁型2ウェイ)
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