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日下紗矢子リーダーによる室内合奏団 (読響アンサンブル・シリーズ) [コンサート]

読響のアンサンブル・シリーズ。
今シーズンから会場を多目的ホールの読売ホールから、コンサート専用のトッパンホールに移しての公演です。
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日下紗矢子さんがリーダーとなっての室内合奏団。今回のテーマは、とても明快。ずばり、チェコの音楽。
チェコといえば「弦楽のチェコ」。
前半は、ビーバーの音楽。なるほどビーバーは、チェコの生まれだったか。しかも、ヴァイオリンの名手で、バッハに先駆けて無伴奏のヴァイオリン曲というジャンルに金字塔を打ち立てたひと。
〈パッサカリア〉を含む「ロザリオソナタ」が余りに有名ですが、そのほかの曲は滅多に演奏されません。チェンバロやリュートを含む通奏低音と組み合わせた様々な編成での合奏曲はほとんどが初めて聴く曲ばかりでした。
バロック音楽といえば、典雅なメロディと端麗な響きというイメージがありますが、ビーバーの合奏曲は、むしろ、野趣に富んでいて遊び心がいっぱい。ところどころに現代音楽さながらの微分音や、あえて調子外れのパニックがあったりと冗談音楽の先駆けみたいなところもあってびっくり。
「描写的なソナタ」は、以前にFM放送で紹介されていたことがあって聴き覚えがありましたが、ヴィヴァルディも超えた鳥やカエルなどのものまねのオンパレード。猫の鳴き真似などはネコ好きにはたまらないでしょう。そうやって楽しませておいて、すぐに済ました顔で元の典雅な音楽に戻るという仕掛けです。
大いに受けたのは、前半最後の「夜の見張りの歌」。セレナータ(夜曲)と夜警をひっかけたというわけでしょうか、途中で「夜警の歌」が入ります。「夜警」というのは、ちょっと日本人にはなじみにくい言葉ですが、「夜回り」みたいな意味で江戸時代の拍子木を叩いて夜を見回る町の自警の「火の用心」に近いようです。今でもヨーロッパの古い町では観光半分で残っているそうです。
そういう節をつけた掛け声みたいな歌が、「チャコーナ」でピチカートの伴奏にのって歌われる。その歌をなんとコントラバスの瀬泰幸さんが歌い出す。なんとも微笑ましいのですが、ドイツ留学で身につけたドイツ語と本業の合間に通った声楽やボイストレーニングの成果を披露せよとのご指名に、ご本人もいささか緊張したのだとか。
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後半は、打って変わって19世紀、20世紀の弦楽合奏曲。
マルティヌーは、ちょっとわかりにくい音楽ということでなじみは薄いのですが、前半のビーバーの奔放な音楽を聴かされた後だと、不思議なほどに作曲技巧の面白みがすんなりと胸に響いてきて面白く聴けます。和声やリズムに弦楽器ならではの奔放な掛け合いがあって楽しいのです。
そのことは雰囲気こそ違え、ヤナーチェクも同じ。ちょっとしたリズムの肩透かしや、取り澄ましたような正統音楽に民俗音楽の野趣を忍ばせてみたり、ドゥムカとかアルペン踊りのステップをかましたり。弦楽器ならではの奔放な音型で大いに盛り上がるところもマルティヌーと同じ。
チェコというのは、まさにヨーロッパの中心だったということを大いに実感する楽しいひとときとなりました。
読響アンサンブル・シリーズ
第341回 《日下紗矢子リーダーによる室内合奏団》
2022年7月31日(日) 18:00~
トッパンホール
(P6列 12番)
ヴァイオリン=日下紗矢子(特別客演コンサートマスター)
瀧村依里(首席)、岸本萌乃加(次席)、大澤理菜子、太田博子、小田透、鎌田成光、川口尭史、武田桃子、山田耕司
ヴィオラ=柳瀬省太(ソロ・ヴィオラ)、正田響子、長倉寛
チェロ=遠藤真理(ソロ・チェロ)、木村隆哉、唐沢安岐奈
コントラバス=瀬泰幸、石川浩之
チェンバロ=大井駿
リュート=野入志津子
ビーバー:楽しいソナタ
ビーバー:ヴァイオリン・ソナタ「描写的なソナタ」
ビーバー:セレナータ「夜の見張りの歌」
マルティヌー:弦楽のためのパルティータ H.212
ヤナーチェク:弦楽のための牧歌
(アンコール)
ビーバー:バッターリア


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