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赤と黒 (キヴェリ・デュルケン&實川 風 ピアノ・デュオ 日経ミューズサロン) [コンサート]

ピアノ・デュオが続いたのは、たまたまのこと。

それにしても、一見、同じ楽器であるピアノ2台の連弾という没個性のデュオであっても、演奏者たちの取り合わせといい、取り上げられる演奏される曲といい、こんなにもヴァラエティがあるとは…!というのが率直な感想でした。

ピアノ・デュオといえば、例えば、バレンボイムとアルゲリッチみたいな両巨匠のようなタイプや、デュオ・クロムランクを頂点とする、夫婦、姉妹兄弟による融合一体タイプもあって、多士済々。

曲の方も、ブラームスやドヴォルザークの「ハンガリー舞曲」のようにもともと4手連弾として出版されて大ヒットして管弦楽曲に編曲したものもあるし、逆に管弦楽曲を4手や2台ピアノに編曲したものもあります。もともと、作曲家による試演とか、オペラやバレエのリハーサル、小規模な公演のためにしばしばピアノ版が伴奏に使われ、連弾かどうかはともかくピアノと管弦楽とは密接な関係になっているわけです。

今回は、特に大規模な管弦楽をピアノ・デュオに編曲したもの。ともにとびきりド派手なヴィルティオーソ性を発揮するような曲が2曲。

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キヴェリ・デュルケンは、真っ赤なワンピースパンツドレスで颯爽と登場。ハイヒールとボディコンのパンツドレス、体格も立派なので実にかっこいい。パートナーの實川風は、知的な好青年。こちらは実直な黒に近い暗灰色のスーツ。

前半は、ストラヴィンスキーの「春の祭典」。

もともとスキャンダラスな野趣あふれるバレエ曲ですが、作曲者自身の編曲によるピアノ連弾版は、リズムや打楽器的性格がむき出しになって迫ってきて大迫力。二番ピアノ側に回ったデュルケンが大活躍。こういうリズムの打撃感は、弾き手にとっても聴き手にとっても快感で、そこに一種の一体感が生ずるのは、どこか和太鼓集団の演奏に通じます。

後半は、ブルーノ・ワルターが編曲したマーラーの「巨人」。

こちらは、デュルケンは一番ピアノで、實川は二番ピアノに回り実直に基音や音響の下支えを響かせます。もちろん、低音部側や和声にも聴かせどころはあるのですが、目立つのはデュルケン。あの葬送楽章でもずっと實川が物憂い卑属なテーマを虚ろに奏でている(原曲:コントラバス独奏)が、そこにデュルケンが突然に被るように旋律線が闖入する(原曲:オーボエ)。そういうコントラストがむしろ際立つピアノ・デュオ。

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とにかくデュルケンは積極的で果敢。多少のミスタッチや頭のずれはものともせず、所狭しと立ち回る。一方の實川のテクニックは実に正確で乱れが無い。縦横無尽に引っかき回すデュルケンに対し、實川は見事に受けに回り丁々発止の打ち込みをものの見事にやり返す。嵐のような終楽章は、まさにそういう疲れを知らぬ二人の大熱演。客席ものけぞり返るような迫力の熱量を浴びて大いに盛り上がりました。

アンコールは、二人並んでの4手連弾。グリークの「ペールギュント」は、やはり管弦楽からの編曲。独奏曲は有名で、腕の立つピアニストがよく取り上げていますが、連弾曲があることは知りませんでした。これまでの興奮を鎮めるような「朝」のメロディがとても綺麗でした。

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第532回日経ミューズサロン
キヴェリ・デュルケン&實川 風
 ピアノ・デュオ・リサイタル

2023年3月6日(金)18:30~
東京・大手町 日経ホール
(E列24番)

キヴェリ・デュルケン(Kiveli Doerken)
實川 風(Kaoru Jitsukawa)

ストラヴィンスキー/春の祭典

マーラー(ブルーノ・ワルター編)/交響曲第1番「巨人」(2台ピアノ編曲版)

(アンコール)
グリーグ/ペール・ギュント 第1組曲 より 第1曲「朝」作品46-1

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