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レコード針クリーニング [オーディオ]

レコード針クリーニングにメラミンスポンジを使ってみました。

私自身は、長い間、カット綿を使ってきました。実は私の友人のUNICORNさんも、メラミンスポンジでクリーニングをしています。UNICORNさんはレコード盤面のクリーニングに使うなどメラミンスポンジを使い倒しています。良さそうだとは思っていても、もともとメラミン樹脂は硬いものでスポンジは研磨用として使われているものなので怖くて躊躇していました。

つい先日、同じ方法をとられている方のFB投稿を見かけました。この投稿に、ついに背中を押されたという格好です。

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市販のスポンジを小さめにカット。よく切れる包丁でスパッと切ると、思いのほか綺麗な断面で切れます。針先クリーニングにほどよいサイズにして、電解アルカリ洗浄水(超電水クリーンシュ!シュ!)をスプレーして、慎重に針先を擦ります。軽くあてて慎重に手前方向に2,3回引く。

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なかなかいい具合です。

カット綿は、繊維が引っかかるので、使ってみるとスポンジの方がかえって安心です。思ったより硬いと感じることはなくスポンジの細かい組織がほどよく破断するようです。ホコリや汚れもすっきり取れます。カット綿は、いったん湿させるとすぐに乾燥して繊維がほぐれて緩んでしまいすぐに使えなくなってしまいますが、スポンジはそんなことはありません。

長年使い続けたカット綿(+アルカリ洗浄水)ですが、メラミンスポンジに切り換えます。
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スピーカーのネジ締め直し [オーディオ]

スピーカーユニットのネジを締め直しました。

ふだんも、増し締めはしているのですが、やはり季節の変わり目にはトルクがばらばらになっているので締め直しが必要です。全てのネジをいったんゆるゆるにして、イチから締め直します。

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六角レンチと手の感覚だけで締めていきます。ツィターが本体とプレート部とフロント固定と4本ずつで計8本、ウーファーが8本、合計16本。ツィター本体の4本以外は、特注のチタンボルトです。対角線上に互いに徐々に締めていくので手間はかかります。とはいっても30分ぐらいで左右両ユニットを調整し終わります。

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トルクドライバーは使いません。空転式のものを使ったことがありますが、使いにくい。空転式は、ある種、リミッターのようなものなのでかえって不正確。トルク値の数字そのものに意味があるわけではないし、緩まず締めすぎずというのは手先の感覚でつかみやすい。

今年は、夏から秋を飛び越えて急に冬を迎えたという感じなので調整のタイミングが取りにくかったところがあります。

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Chopin [Sony Classical] 96Khz/24bit flac

気がついたきっかけは、つい先日にお訪ねしたベルイマンさんに教えてもらったソフト。特に、ポゴレリッチのショパン(幻想曲)がなかなか手強かったから。締め直したら、一気に冴え冴えと鳴るようになりました。高音の透明感に満ちた美音が空間に抜けていくように伸びやかになり、低音の衝撃的な堅さがなくなってピアノの胴に沈み込むように共鳴していく。

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passage /藤田真央 [Naxos Japan] 352.8kHz/24bit flac

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オンド・マルトノ作品集 / 大矢素子  [King International] DSD256 dsf

藤田真央も軽やかで躍動感に満ちたすこぶる美音です。オンドマルトノの神秘性も深まりました。女性ボーカルの微かな渋みもトルクの乱れのせいだったようです。

スピーカーの調整というのは大事ですね。片時も手が抜けない。
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USB端子サポーター [オーディオ]

とあるSNS投稿を拝見していてビビっと来ました。さっそくパクさせていただきました。

その投稿は、USBDACの入力USBコネクターがぐらぐらしていて気になるので、消しゴムを小さく切ってインレットに貼り付け下から支えるようにするというアイデアです。

私も、DAC入力のこのUSBコネクタがゆるゆるなのが気になっていたので、さっそく試してみることにしました。

私の場合は、消しゴムではなくて、手持ちのアルファゲルを奢りました。

アルファゲル(αGEL)はタイカが開発した、シリコン系ゲル状素材です。非常に柔らかいもので、上から生卵を落としても割れないという驚異的な衝撃吸収力で、振動周波数帯域も広い防振・制振材料。個人的に、オーディオ用インシュレーターなど様々な箇所に使っています。

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この角形チップを、入力部の下に貼り付けるだけ。コネクタを下から支える肘木のようにします。堅すぎずぎりぎりに触れる程度の位置に貼り付けると、揺れがピタリと止まります。もちろん手で揺らせば動く程度のクッションです。

このアルファゲルの開発ストーリーがちょっと面白い。衝撃吸収材の開発に疲れ果てた開発者が、ふと使ってみた熱冷まし用の枕が、偶然に大ヒントになったそうです。

今回のアイデアは、いってみれば、USBコネクタの枕みたいなもの。

これが大ヒット!

解像度や分解能が上がると、高域の微妙な濁りやささくれ、女性ボーカルのさびのハイノートの母音のざらつきなどがここのところ悩んでいたのですが、まさに、それにピタリとはまりました。高音弦のハーモニーが綺麗に滑らかに伸びで、女性ボーカルのハイノートがどこまでも伸びやか。胸にすーっと染みわたってくれるようになりました。もちろんバックスのちょっと鳴りにくかったカスタネットやウッドブロックなど木を強く叩く音などもナチュラルに解像してくれる。

最近にない大ヒットのプチ・アクセサリーとなりました。

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狂気のチェロ (中木健二 無伴奏チェロ・リサイタル) [コンサート]

とても刺激的なソロリサイタルでした。

中木が最近リリースしたCDのいわばキャンペーンツアー。「狂気のチェロ」というのはそのCDのタイトルそのまま。プログラムやポスターの写真も、CDジャケットがそのまま使われています。

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無伴奏というのは、バッハの無伴奏ヴァイオリンを始め様々な楽器のために作曲されていて、楽器の音色や演奏技巧などがむき出しに聴き手に迫ってきます。その中でも、チェロは、帯域が広く音量もあって弓も長く多彩な技巧もあるので、無伴奏の王様という気さえします。意外に多くの作曲家が楽曲を提供している。

そこに大胆に踏み込んできたというべきプログラム。それを目の当たりにすることで、ほんとうにどきどきするほど刺激的なリサイタルだったのです。凄い!

「狂気」というのは、「フォリア(Folia)」のこと。

"虚しい、気が狂った、無分別な、頭が空っぽな"という意味のトスカーナ地方の言葉"folle"から生まれた。英語の"folly"と語源は同じ。

低音のコード進行が執拗に繰り返され、その反復がもたらす高揚感のなかで即興と変奏が繰り返される舞曲。フォリアは最も有名で、ポルトガルに起源を持ち、スパニッシュ・ギターのためのタブラチュア譜が広く流布し17世紀のヨーロッパを席巻する。スペイン、イタリア、オランダなど、それこそ狂気のように流行し、コレッリ、ヴィヴァルディなど、名だたる作曲家が取り上げています。

リサイタル・プログラム最初のバッハの無伴奏は、CDには含まれていません。ある意味で、リサイタルに足を運んでくれた人々へのプレゼントのようなもの。

けれども、中木のバッハは、歴史への深い敬意とともに、このプログラムへの前口上のような役割も果たしています。冒頭のプレリュードは、モダンチェロによるバッハとして実に正統・中庸で久々に聴き応えのある演奏。そこからスタートしながら続くアルマンドからどんどんと舞曲的性格と開放感を露わにしていきます。そういうバッハの舞踏的俗性に改めて気づかされていきます。

ガスパールは、スペイン・カタルーニャ出身の20世紀のチェリスト。バッハと同じくプレリュードで同じ拍節の連続から無我の幻想世界に誘われ、そこからスペインの地方色が紛々と薫り立つ伝統舞曲との交錯により理性を失っていく。終曲のフラメンコは、夜を徹して踊り狂う狂気のクライマックス。

黛敏郎の曲で、個人的に一番好きなのは「BUGAKU(舞楽)」ですが、無伴奏チェロのための「BUNRAKI(文楽)」は、初めて聴きました。どちらも和楽器の色彩や和声、音律を巧みに西洋楽器に移し替えたものですが、この「BUNRAKU」も太棹三味線と義太夫節の肉声を無伴奏チェロの技巧で聴かせるもの。義太夫節の狂乱とその横で顔色ひとつ変えない三味線方の冷徹な拍節との対比を見事に聴かせてくれました。

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休憩後は、いよいよ「フォリア」。マラン・マレーの二曲だけ。

それだけで後半が成立するのかとさえ思いましたが、あに図らんや、実に内容の濃いものとなりました。マラン・マレーはフランスのヴィオールの名手。「スペインのフォリア」は、一連のフォリアものでも有名な曲のひとつで、フルート独奏などがよく聴かれますが、もともとがヴィオールと通奏低音のために作曲されていますのでむしろチェロで弾かれるのがぴったり。それをまったくの無伴奏チェロでやってのける――凄い、凄すぎる!…という以外に言葉が出ません。

アンコールで弾いたリゲティも、CDに収納された楽曲ですが、これもちょっとした聴きものでした。

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会場のリサイタルホールは、ほんとうに久しぶり。

確か松尾葉子さんの指揮による室内オーケストラでプーランクを聴きました。もう20年以上も前、オペラシティがオープンして間もない頃。なかなか気づきにくい場所にありますが、改めて聴いてみると、とてもよい。パイプ椅子を並べても300席に満たない小さな平土間のホールですが、天井も高く壁面がしっかりしていて、響きが心地よく残響反射がとてもクリーン。室内楽には持ってこいのホール。これはめっけもんだと思いました。

中木健二の新境地ともいうべき世界で、無伴奏チェロの魅力を存分に味わえた素晴らしいリサイタルでした。






狂気のチェロ
無伴奏チェロ・リサイタル
中木健二

2024年11月15日(金)19:00
東京オペラシティ リサイタルホール
(自由席/3列目中央左手 )

J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV1007
ガスパール・カサド: 無伴奏チェロ組曲
黛 敏郎: BUNRAKU ~独奏チェロのための~(1960)
マラン・マレ:ラ・フォリア(中木健二 編曲)
人々の声「ヴィオール曲集 第2巻」より

(アンコール)
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番 より「サラバンド」
リゲティ:無伴奏チェロ・ソナタより「第2楽章」



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J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007
カサド:無伴奏チェロ組曲
黛敏郎:BUNRAKU ~独奏チェロのための~(1960)
マラン・マレ:
ラ・フォリア(中木健二 編曲)
人々の声「ヴィオール曲集 第2巻」より
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「往年の真空管アンプ大研究・復刻版」(別冊ステレオサウンド) [オーディオ]

2008年に発刊されたものの復刻版。もともとも、「ステレオサウンド」誌や「管球王国」誌などに掲載された記事からの抜粋だから、復刻の復刻。記事内容も《往年の…》というわけだから、骨董趣味もよいとこと言われそうだが、ヴィンテージオーディオが一定の位置づけを得ている現代の視点からみても、なかなか濃い中身で面白かった。

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新忠篤、石井伸一郎、井上卓也、上杉佳郎、長島達夫、山中敬三といったそうそうたるオーディオ評論家・アンプビルダーの面々が寄稿し、あるいは鼎談を展開しているのはなかなかの読み物になっています。

特に、マッキントッシュやマランツの歴代管球アンプの実働品を集めての聞き比べは、なかなかに読み応えがあります。自身がアンプ製作者だけに、回路の評価やその実装、コンストラクションの細部に及ぶ観察評価、パーツの目利きなど、ほんとうに中味が濃い。

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素人には難しい記述も多く、読めば読むほどに味があるというところだろうが、パラパラとめくり読みだけでも楽しい。

ざっと目を通しただけだけど、印象に残ったのは…

1.オリジナルパーツ(?)
2.謎の多いメーカーの匠の技
3.トランス技術
4.NFBの是非

1.については、新氏が再三繰り返し述べています。『無理に古いオリジナル・パーツを使うよりも新しいパーツを使うべき』『当時の特性を発揮できないパーツを使って、"オリジナルでなければこの時代の音は再現できない"というのは間違い』というのはその通りだと思います。マランツ#7などに使用されたセレン整流器は、確かに優秀で当時の米国技術の高さを示すものですが、レプリカ版のシリコンダイオードで何ら不足はないでしょう。

とにかくそうそうたる面々が、試聴器の内部を観察して具体的にレストア状況や置き換えたパーツを吟味してコメントしているのは、とても参考になります。

2.は、特にQUADのアンプについての各氏のコメントが面白い。ほとんどまったく謎で理解できないとまで言わせています。名器マランツ#7でも、その複雑な回路は不安定で、『コピーしただけの自作アンプは発振しているものが多い』などと自作派には耳に痛い話しも多々あります。

3.については、例えばマッキントッシュのバイファイラー/トライファイラー巻きの出力トランスの技術力。『真空管アンプは、出力トランスと電源部が音を決める』と断言しています。トランスは、オリエントコアなど素材の優秀さで国産品が圧倒していきますが、それは本当の真空管時代が終わった後のこと。真空管の時代は、アメリカの工業製品の優秀さは抜きん出ていました。

4.は、千日のごとく繰り返されてきた議論。画期となったのはウィリアムソン回路の登場だったと言います。SP時代の電蓄にはフィードバックはかかっていなかった。当時は5極管でもNFBがほとんどかかっていなかったので『低域などはボンボンいうだけ』と5極管の評価が低く、3極管の2A3の評価が高いのもそのせい。そこにウィリアムソン・アンプが登場してNFBが話題となって、3極管接続でもNFBをかけるという技術に皆が驚いた。その結果、高SN比、広帯域、低歪の本格的なハイファイの時代がやってきたというわけです。今の時代、頭からNFBを否定し目の敵にするような論調がありますが、NFBにも非NFBにもどちらにもそれぞれ一長一短があって、どう活かすかは回路技術次第だということ。歴史は繰り返すということでしょう。

『オーディオの楽しみのひとつは、音を自分で変化させるということ。それが、ケーブルだとか部屋だとかばかりになって、電気的に音を変えることはやらなくなってしまった』という石井氏らの指摘に、新氏が、『その理由は、生演奏の音がどういうものかということを考えないから』『生の音を参考にすれば、どういう音が自然なのかということがわかり、大きな間違いはしない』とズバリと答えています。

ヴィンテージオーディオは、『現代のオーディオ機器のように情報量は多くないが、音楽の美味しい部分、ここを聴きたいと思う部分がちゃんと再現されるので、聴いていて心が動かされる』。これもまた至言だと思います。


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往年の真空管アンプ大研究・復刻版 (別冊ステレオサウンド)
ステレオサウンド編集部

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岡山・秋の音会2024 [オーディオ]

岡山のオーディオ仲間の集い「音会」は、年に四季折々集まって楽しんでおられますが、その「秋の音会」に今年もまた参加させていただきました。

まずは、スイートサウンドさんのお宅に集合。

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独特の正12面体のキャビネットの中音ユニットを中心に、3ウェイスピーカーシステムが、広々とした空間の一角に据えられています。チャンデバとネットワークを組み合わせたハイブリッドのマルチドライブで、とてもクリーンでピュアなスイートサウンド。

絶えず手を加えておられますが、そのサウンドは一貫しています。加えて、一年前の記憶だけなので、ちょっと聴いただけでは違いは定かではないのですが、今年の第一印象は、とても立体音場が安定して、音像定位も空間の拡がりもとてもナチュラルだということ。中低音がしっかりして実体感も増しました。

一年前からの変更点はなんですか?と聞いても、ご本人も、さあ?なんだったけなぁ…と心もとない(笑)。でも明らかに違っているのは、金田式アンプの電源をAC電源から、リポバッテリー(リチウムイオンポリマー二次電池)のDC直結に変更したこと。

それを聞いて大いに納得。やはり、立体音場再生は電源からなのです。

オーディオマニアのあいだには、「バッテリー電源」ということになかなか理解が拡がりません。車載の鉛蓄電池の連想で《内部抵抗が大きい鈍い音》だとか、乾電池時代の小電流から《音が薄い》といったイメージが強い。リチウムイオンの二次電池はまったく別物。逆に、バックアップバッテリー電源のノイズだらけのAC100V供給をバッテリー電源だと勘違いしている向きも多い。

スイートサウンドさんのアンプは、私のものと同じでバッテリーDC電源のために回路設計されているもの。リポバッテリーは、家庭用100V・AC電源よりもはるかに瞬時電流供給能力が大きい。その余裕とクリーンさが、このナチュラルな立体音場再生につながっていると納得した次第です。

このシステムで、いろいろなソフトを聴かせていただきました。日本でのようやくの解禁で話題となっているQobuzとの聴き較べ。NAS音源と較べると、どっちもどっちという感じ。マスタリングの違いの方が大きい。ネットワーク構成である以上は、音質的には互角というところでしょうか。

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別棟のサブシステムは、今年新たに導入したバックロードホーンシステム。アンプ類は以前のままで、メインシステムと同じで金田式アンプですが、まるで違っています。ジャズ専用と銘打ったスピーカーシステムだそうですが、むしろタイトな低音にチューニングされたホーンと、少し高域が強調気味なダブルコーンのシングル一発の米国製ユニットの組み合わせは、とても活気があって聴いていて楽しい。

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このバックロードホーンは、新潟・燕三条のメーカーが開発したものだそうで、なかなかの仕上がり。スムーズな曲線の音道が自慢の積層構造。クセのないタイトな音調と屈託のない出音は、むしろ、よく出来たバスレフという感じで、私のバックロードへの期待をよい意味で裏切りました。

第二部は、EDさんのお宅へ移動。

最初はダリのOBERON-5の試聴。TV音声用に導入したそうで、中音域の分解能が高いバランスはとても聴きやすい。これを聴くと、これでもう十分という気がしてきます。これをさっと片付けて、主役を鳴らします。ATCが鳴り出すと、これはもう格が違うという感じ。アンプはすべて自作の管球アンプ。
(撮り忘れましたので写真はありません-汗)

今回は、オルトフォンのカートリッジの比較。

SPUや、Synergy、MC20などの新旧織り交ぜての試聴です。50年前のSPU-GTEの圧勝でした。EDさんによれば、知り合いのオルトフォンのコレクターから譲ってもらった個体ですが、そのコレクター氏もその機会にコレクションを改めてひと通り聴いてみてGTEの良さに自分で驚いていたそうです。ちょっとぺらぺら感のあるプラシェル内に小さなトランスがはめ込まれた、安っぽい作りから信じられないほどナチュラルな高分解能の音が出てくる。ナチュラルさと分解能の高さはオルトフォンに一貫するものですが、GTEはその完成度が高いということ。

昇圧トランスは、インピーダンス切り替え式で、こういう比較試聴にはとても便利。インピーダンスによって音はコロコロ変わります。

残念だったのは、リファレンスにされたDL-103。高域にクセが乗っていてちょっと粗い。歌謡曲などには相性の良さも感じますが、クラシックでは音像定位が不安定で不正確。これは、アームのセッティングや針圧の調整の問題だとしか思えません。EDさんも、オルトフォンとの互換性のためにスペーサーやらウェイトやらいろいろなハンディキャップを背負わせているようです。DL-103愛好家の私としては、こんなはずはないと大いに不満です。

個人的には、こういう同じアームでの取っ替え引っ替えしての比較は、あまり信用できないと思っています。それでもGTEの優秀さは確認できたということでしょう。"E"(楕円針)でなく丸針も聴きたいところですが、丸針タイプは希少で前述のコレクター氏もお持ちではないそうです。

その後、総社市内の中華のお店で懇親会。瀬戸大橋の架線事故で混乱のなか、早め変えられた2Hさんを除いて、Helicatさん、トリさんの総勢5人でオーディオ近況に会話がはずみ、楽しいひとときでした。

スイートサウンドさん、お世話になりました。ありがとうございました。

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モーツァルトへの挑戦 (プロジェクトQ・第22章 公開マスタークラス③) [コンサート]

若いクァルテットの発掘と育成を目的としたクァルテット振興運動《プロジェクトQ》。

音楽大学の学生で結成された6組の若いクァルテットが、モーツァルトのハイドンセットの1曲ずつ演奏して全6曲に挑戦する。本番の演奏会は来春の3月30日。それまで、楽界のベテラン講師による公開マスタークラスを受講し、先立つ2月のトライアルコンサートと場数を踏んでいく。

前回第21章は、シューベルトに挑戦ということで、同様に6組が参加。今年の2月のトライアルコンサートを聴いてとても興味深かったので、今回は公開マスタークラスから参観してみました。

その第3回のクラス。

講師は、ともに桐朋学園の草創期に学び、斉藤秀雄の直接の薫陶を受けた超ベテランのお二人。第1部は、ヴァイオリンの小栗まち絵さん。個人的には水戸室内管でもおなじみでした。第二部は、ヴィオラの第一人者ともいうべき今井信子さん。

お二人の指導スタイルはそれぞれで、好対照。と見えて共通するものが多い。

どちらも曲全体のイメージを大切にする。けれども技術的にとても細かい。演奏を細かく止めて、執拗なまでに技術的な細部を指摘する。1時間はあっという間に過ぎてしまうが、ほとんど第1楽章で終わってしまう。

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対照的なのは、小栗さんは全体的なアドバイスからすぐに技術に入る。とても直截的。ニ短調の四重奏曲では、特に「"点"(スタッカート)」のことを指摘。「短調なので"点"は軽くてはダメ」。スラーとスタッカートが両方ついている部分は、ピアノを始めあらゆる楽器でその矛盾に奏者は悩みますが、小栗さんは「長めに、テヌート寄りにして」との指摘。この曲の出だしの部分。

「不協和音」では、ほとんどがボーイングの指摘に集中する。アップかダウンかの選択。どこまで弾くか、どこで返すか。小さく弾くか、弓を一杯に使うか、先か根元か。弦楽器では、ボーイングはアーティキュレーションに直結する。左手の運指との連携もある。けれども、いざ音楽を造るとなると決まりがあるわけではなくて悩ましい。同じフレーズなのに個々のパートでバラバラでそろっていない。早速、それを指摘されてしまっていたけど、音大生でもそんなレベルなのかとちょっと驚いてしまいます。

今井さんは、同じように全体的なアドバイスから始まるが、技術的な指摘も容赦ない。ボーイングなど、ある意味で小栗さん以上に執拗で徹底的。小栗さんは、ある程度、《解》を与えてくれるが、今井さんはあくまでも奏者に考えさせる。一見、和やかで親しみのある言葉だけれども「あとは、みんなで相談してね」と突き放してしまう。時に自分で「どちらかしらねぇ」とヴィオラを弾いたり、腕をシャドウで動かして自分が考え込んでしまって、学生たちも苦笑してしまう。

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今井さんは、先ず通しで第1楽章を弾かせてみて、まずはひと言。「どんなパートだって面白い」「それぞれにキャラクターをつかむことが大事」だと。それから、「どんなイメージを想い抱いているの?」とひとりずつ聞いていく。「蝶蝶が舞うような春の野原」「曲集第一曲の第1楽章らしい前口上、挨拶」「のどかな春」などと4人がそれぞれ。今井さんは、「ひとりひとりが抱いているイメージがとても大事」「ひとつである必要はないけれど、出だしで決まる」とも言う。自分が学生時代にアンサンブルに挑んだ時の経験を紹介して「どうしようかと思うほど合わなくて最初は収拾がつかなかった」と学生たちを苦笑させる。「そのうちに合ってくる」と。4人の最初の着想が次第に統一へと向かっていくという意味でしょうか。そう言われて、学生たちもほっとした表情。

実際、この言葉ですっかりリラックスした様子で、合わせようと萎縮するのではなくて、指摘されたことを先ずはどのように咀嚼して身につけていくかに集中できる。アンサンブルということでは、むしろ第一奏よりもバラバラ。時には出だしがぐちゃぐちゃになっても構わず、言われたことに集中している。今井さんに「ダウンかなあ、アップかなあ。後でみんなで相談して決めてね」と突き放されても、素直にうなずいている。実際、このグループが最もアドバイスによく反応していて、みるみるうちに音楽が変化していく。クァルテットというのは、民主主義的な合議共感であって、権威主義ではないのですね。

こういう公開マスタークラスは、私のような聴くだけのクラシック音楽ファンにとっても、とても面白く勉強になる。今回だけでも、モーツァルトがイタズラのようなものをどれだけ仕掛けたり織り込んでいるかがよくわかりました。そこが流れや響きを作ったり変えたりするきっかけになっていて、必ず演奏のポイントになるからです。

2月のトライアルコンサート、3月末の本番へと、各グループがどのように成長していくのか、とても楽しみです。




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プロジェクトQ・第22章
若いクァルテット、モーツァルトに挑戦する
公開マスタークラス③
2024年11月9日(土)15:30開講
東京・池袋 東京音楽大学 池袋キャンパス B館

第1部 講師:小栗まち絵(ヴァイオリン)

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クァルテット風雅
[落合真子/小西健太郎(Vn)川邉宗一郎(Va)松谷壮一郎(Vc)]
モーツァルト:弦楽四重奏曲第15番ニ短調 K.421


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クァルテット・ルーチェ
[渡辺紗蘭/中嶋美月(Vn)森智明(Va)原田佳也(Vc)]
モーツァルト:弦楽四重奏曲第19番ハ長調 K.465 「不協和音」


第2部 講師:今井信子(ヴィオラ)

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クァルテット・ベアトリーチェ
[西岡舞桜/箕浦 彩(Vn)遠藤望名(Va)森 朝美(Vc)]
モーツァルト:弦楽四重奏曲第14番ト長調 K.387 「春」
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ドイツ正統の美音 (ロータス・クァルテット) [コンサート]

1日おいて、たて続けにサルビアホール。

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聴いたのはロータス・クァルテット。

こんなに日を置かずしての公演というのには訳がある。先日のターリヒQとロータスQは、この週末に上野の東京文化会館でメンデルスゾーン・プロジェクトと銘打って八重奏曲を共演する。

もともとは日本人女性4人で結成された日本発祥のクァルテット。それが今はシュトゥットガルトを拠点に活躍する国際的なクァルテット。すでに30年の実績を積んでいる常設クァルテット。

モーツァルト、ベートーヴェン、そしてシューマンというドイツ正統のプログラム。演奏も、何の奇をてらうところのない、王道のど真ん中をゆく。しかも、実に密度の高いアンサンブルで、このクァルテットの理想郷ともいうべきサルビアホールのアコースティックのなかでの濃密な響き。クァルテット好きにはたまらないひととき。

「不協和音」は、まるで透視図のように緻密な構成で、そして美音。冒頭の導入も整然としている。不安というよりも人間の不調和や無意識的な分断。それが次第に古典の調和、人の協調へと解決していく。最後はモーツァルトらしい嬉遊の世界。

ベートーヴェンは、意外なほどに優雅。ちょっとかしこまった一礼から始まって各パーツの応答が面白い。そういう若い作曲技巧をとても雅びに感じさせるのも、アンサンブルの呼吸と音色の揺るぎない統一感があるから。そこから若々しいゴツゴツとした挑戦が始まるけれど、古典的な構成は揺るがない。最後はいかにもベートーヴェンらしい音型が繰り返されるロンド。

白眉は、後半のシューマン。

これは、大変な名演だったと思う。

シューマンは、このクァルテットの十八番なのかもしれない。

シューマンの小難しい輻輳するリズムは影を潜めるけれど、切ないまでに思いつめて突き進む憧憬のような情感が貫いている。そういう熱を帯びた推進力が独特のグルーヴ感覚を生み集中力が素晴らしく、そして美しい。第2楽章の変奏曲は、これまでは漫然と聞き流していたのだろうか、まるで初めての出会いのように新鮮で感動した。

破調のようなものは一切無い。ほんとうに正統な中欧ドイツのクァルテット。日本のクァルテットという気がしない。ほんものの本場のクァルテット。そこにどこか東洋陶器美術の美意識のようなもので磨かれたクァルテット。

アンコールのメンデルスゾーンも小粋で素敵。週末の上野では全曲を演奏することになっているようだ。




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Salvia-hall Quartet Series #184
ロータス・クァルテット
2024年11月7日(木)19:00
横浜市鶴見区民文化センター サルビアホール
(C-6)

モーツァルト:弦楽四重奏曲第19番ハ長調 K.465「不協和音」
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第2番ト長調 作品18-2

シューマン:弦楽四重奏曲第3番イ長調 作品41-3

(アンコール)
メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲第2番ホ短調より第3楽章インテルメッツォ


ロータス・クァルテット
ヴァイオリン:小林幸子 スヴァンチェ・タウシャー
ヴィオラ:山碕智子
チェロ:斉藤千尋
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土臭さの魅力 (ターリヒ・クァルテット) [コンサート]

ターリヒ・クァルテットをサルビアホールで聴いた。

このクァルテットは、1962年にプラハ音楽院で学ぶ若手で創設された老舗。70年代半ば、フランスのカリオペ・レーベルに登場してたちまちADFディスク大賞を受賞、世界デビューした。私にとっては、この時のLPレコードが、私にとってドヴォルザーク「アメリカ」の最も愛聴している盤でいまだに個人的規範になっている。

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現在のメンバーは、創設時とはすっかり代替わりしている。

リーダーのヤン・ターリヒ(Jr.)は、創設時のリーダー(Sr.)の子息になる。ちなみに上記のレコード録音時には、ターリヒ(Sr.)は、第1ヴァイオリンをペトル・メッシエレウルに譲って、ヴィオラに転じている。そのメッシエレウルを継いだのが今のターリヒ(Jr.)。

コロナ禍の前後、チェコ楽壇の再編が進み、元パヴェル・ハースQのラディム・セドミドゥブスキー(ヴィオラ)が加わった。さらに元プラジャークQのミハル・カニュカ(チェロ)も加わる。プラジャークQの解散公演は、コロナ禍で再三延期となり、最後の公演が日本ツアーになった。一昨年、横浜「ひまわりの郷」での公演で最後と思ったカニュカの顔を名門ターリヒQメンバーとして再び見ることになるとは、当時は思いもよらなかった。

こんなメンバーの変遷を振り返ると、このターリヒQこそ弦の国チェコを代表する最高のクァルテットだと思える。そのターリヒQのドヴォルザークとスメタナのプログラム。高度な技術とアンサンブルの完成された一体感で繰り広げられる音楽は実に強烈だった。

ドヴォルザークの2曲は、初めて聴く。特に「8つのワルツ」は、とても土俗的。同じワルツといってもヴィーンのワルツとはまるで違う。どこか、プラハのビアハウスとか、そういった酒場でのバンド演奏を聴いているかのよう。とても人間的。俗っぽいというのとも違う。「生きる」ということに直結しているかのように感じてくる。映画「タイタニック」で最後まで演奏し続け船と運命をともにしたバンドメンバーの姿が思い浮かんできた。

同じ曲ではないが、前述の私の愛聴盤「アメリカ」は、ずっと行儀の良いドヴォルザークに思えてしまう。行儀の良いという意味は、西欧正統音楽の教養主義のウケを目指した演奏ということ。現前のターリヒQは、もっともっとボヘミアの民族音楽の血の気をむき出しにしている。

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そういうドヴォルザークが伏線となった後半のスメタナが凄かった。

「わが生涯より」は、スメタナが健康を悪化させ難聴を来してからの作曲。不幸と不遇が続いた波瀾万丈の生涯のなかでただでさえ遅咲きの作曲家が、最後の最後でチェコの国民楽派として成功を垣間見ることができた名曲が、この四重奏曲と連作組曲「わが祖国」だった。プラハの国民劇場が開設されるのは、その直後のことになる。チェコ人が、支配層のドイツ人に対して民族意識を爆発させた時代だった。

半自叙伝的といわれるこの四重奏は、それだけに技術的に高度で前衛的。そういう深刻ぶったものと思われた曲から、民族的な土臭い音調や音階、リズムなどがむき出しに発せられることに驚いた。スメタナの畢竟の力作が、こんな土臭い音楽だったのかと目を瞠る思いがした。

アンコールがこれまた秀逸だった。

いずれもロマのダンス音楽が基調となっている。いわば、クラシック音楽から外れたくだけた俗曲。

ジョルジ・ブーランジェは、ルーマニア人のロマ。本名ではなく、第三共和政の転覆を謀ったとされるブーランジェ事件の首謀者からとった芸名。二曲目は、タンゴのようなものとの紹介もあったけれど、強烈なジプシー音楽の技巧的高揚と官能の世界。どちらも、強烈な民族的な土臭さの魅力を発散させている。本来の発想からすれば本プログラムにはそぐわない。けれども、エベーヌQがハイドンやベートーヴェンのあとにジャズを演奏するようなチグハグさとはまるで違う一貫性がある。このアンコールだって大変な聴きものだった。

クラシック音楽ファンが思い浮かべるヨーロッパとはまるで違う風景と臭いが、確かにそこにはあった。


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Salvia-hall Quartet Series #183
ターリヒ・クァルテット
2024年11月5日(火)19:00
横浜市鶴見区民文化センター サルビアホール

ドヴォルザーク:弦楽四重奏断章ヘ長調 B.120
8つのワルツ 作品54

スメタナ:弦楽四重奏曲第1番ホ短調「わが生涯より」

(アンコール)
ジョルジ・ブーランジェ:命尽きるまで愛す
ルーマニア民謡:ホラ・マルツィショルルイ


ターリヒ・クァルテット
ヴァイオリン:ヤン・ターリヒ ロマン・パトチュカ
ヴィオラ:ラディム・セドミドゥブスキー
チェロ:ミハル・カニュカ
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クラシックバレエの真髄 (新国立劇場「眠れる森の美女」) [コンサート]

新国立劇場「眠れる森の美女」の千穐楽。

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2014年の新制作ということですが、クラシックバレエの楽しさがぎっしり詰まって、なおかつ、ロマンチックな内面表現や舞台美術や照明も新鮮で、素晴らしい公演でした。

幕開け冒頭に、リラの精がシャンデリアに乗って登場。カラボスとにらみ合うということで、この物語の主軸を印象づけるという趣向。この導入が見事。

振り付けは、プティパの原振付を尊重したものだそうで何の奇をてらうところはありませんが、現代的な感覚も取り入れてとても見映えがします。プロローグの宮廷の場面も、とてもオーソドックスで安心して楽しめます。

休憩を入れてから、第1幕と第2幕が続けて演じられるのは、オーロラ姫がカラボスのワナにはまって呪詛が実現し華やかな宮廷が鬱蒼とした暗い森に暗転する場面転換は見事です。

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何と言っても見応えがあったのは、第2幕第1場。

ひとりになった王子が、暗鬱と佇んでいるとリラの精が現れ、王子を森の奥へと誘い、そこでオーロラ姫の幻影を見る。王子は、この幻のオーロラ姫に心から惹かれていき理想の愛を感じていく。ここでの木々や蔦に閉ざされた原始の森の深淵を現す舞台美術、巧みな照明が映し出す王子の内面心理、オーケストラのソロとが一体となって、小野絢子、奥村康祐のアダージョを彩る。ロマンチックバレエの極致。

王子とカラボスの闘いがあって、オーロラ姫は王子の口づけで100年の眠りから目覚める。それとともに華やかな宮廷が再び現れるところで幕。

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ここでまた一息入れて、第3幕は、お決まりのヴァリアシオン。金銀宝石の精に、シャルル・ペローのおとぎ話の主人公たちが入れ替わり立ち替わりでにぎやかこのうえないし、とにかくバレエの個人的な晴れ晴れとした妙技は見ていてほんとうに楽しかった。

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ギャヴィン・サザーランドは、いかにもベテランという感じでとても手堅い指揮ぶり。指揮者もダブルキャストで、本音としては冨田実里さんの指揮を見たかった。ピット内の東フィルは、そこそこの健闘ぶり。上質だけれど、舞台上のレベルの高さに見あう盛り上がりがあったかといえば多少の不満は残りました。

とにかく、いまや新国立劇場のバレエは、たいへんな充実ぶりで世界的にもトップクラスの舞台ではないでしょうか。満席の華やかな客席の盛大で熱い拍手がそれを雄弁に語っていたと思います。


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新国立劇場
チャイコフスキー「眠れる森の美女」
2024年11月4日(月・休) 14:00
東京・初台 新国立劇場 オペラハウス
(2階3列16番)

【振付】ウエイン・イーグリング(マリウス・プティパ原振付による)
【音楽】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
【編曲】ギャヴィン・サザーランド
【美術】川口直次
【衣裳】トゥール・ヴァン・シャイク
【照明】沢田祐二

【オーロラ姫】小野絢子
【デジレ王子】奥村康祐

【リラの精】内田美聡
【カラボス】直塚美穂

【エメラルド】山本涼杏
【サファイア】花形悠月
【アメジスト】金城帆香
【ゴールド】小川尚宏
【フロリナ王女】飯野萌子
【青い鳥】山田悠貴
【長靴を履いた猫と白い猫】菊岡優舞、東 真帆
【赤ずきんと狼】赤井綾乃、渡邊拓朗
【親指トム】石山 蓮


【指揮】ギャヴィン・サザーランド
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

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