ヨーロッパ音楽三昧の旅、春先のミラノに続いて今回は再びベルリンとドレスデンを訪ねました。この二つの音楽都市をしゃぶり尽くそうという旅。

羽田を深夜に出発するパリ経由のフライトは順調で、ベルリンには翌日の日付の朝9時に到着です。テーゲル空港からは市内まではTXLという空港バスが便利でブランデンブルク門の外れのウンター・デン・リンデンで下りてフリードリヒシュトラーセ駅近くのホテルまで徒歩。この駅は、冷戦時代の東西国境の駅となっていたので独特の雰囲気があります。ベルリン分割に際して市内交通は、近郊鉄道のSバーンは東、市内交通のUバーンは西側が管轄するという了解があって、壁間近にあってSとUが交差するこの駅がいわば西側の玄関であり市内への乗換駅となっていたのです。

ホテルに荷物を預けると、さっそく、市内視察。音楽会の会場場所の確認を兼ねて前回積み残しになっていた博物館島に足を伸ばしてみました。



旧博物館(Altes Museum)の前、シュプレー川のたもとにベルリンの象徴ともいうべき大聖堂(Berliner Dom)があります。



1944年に空襲で破壊された大破して、戦後、暫定的に修復されるのみでした。本格的な聖堂再建が始まったのは1975年のこと。最終的に改築・修復が完結したのは2002年。中に入ると高さ114mというドームが圧倒します。このドームは登れるようになっていて、てっぺんの回廊からは旧東ベルリンの街並が一望できます。



ちょうど礼拝の時間で、その大オルガンの音をじかに聴くことができました。式は、まずオルガンの前奏があり司式者の始めの宣言があって再びオルガンの短い即興が響く。祈りの後に再度オルガンによる後奏があり全員が立って賛美歌合唱が続きます。



聖壇に向かって左側に設置されている巨大なパイプオルガンは、バッハゆかりのライプツィヒ聖トーマス教会のオルガンと同じ名工ヴィルヘルム・ザウアーによるオルガン。聖トーマス教会よりも空間容量がはるかに大きいので音響の渦に巻き込まれるような迫力ではないのですが、包み込むような包容力と敬虔で暖かみのある音。低音は空気を揺るがすというオーディオ愛好家が妄想するようなものではなく、静かに足元から満たされてくるような低音です。



配られた式次第のリーフレットには歌われる賛美歌が、そのメロディ譜とともに歌詞が掲載されています。その譜面を見るとなるほどと思いました。ドイツ人の身体に染み渡っている弱起(アウフタクト)。譜の始まりは小節の最初ではなくて、前小節の最後の拍から始まるように表記されているのです。

バッハの自筆譜にもしばしばそういう区切りがしばしば現れるといいます。日本人にはなかなか身体が反応しにくい拍節感覚ですが、行進するときには左足を出だしに指導されることに西欧から倣い学んだこの弱起原則があります。ベルリンの街を歩いていると、信号が青に変わる前に必ず黄の点滅の瞬間があることに気づきます。何かの行動開始の前に必ず準備のような一呼吸のような弱拍を置く。あるいは裏拍のリズム感覚。これは賛美歌(コラール)には徹底しています。

全体で40分ほどでしたでしょうか。本来の参拝者もいれば、私たちのようにたまたま訪れただけの観光客もたくさんいますが、分け隔てなく参列できます。あのオルガンを聴けただけでも幸せでしたので、散会後の出口でのドーネーション(寄付)にわずかならの浄財に応じました。

時間も限られていたので足早に博物館巡り。



旧ナショナルギャラリー(Alte Ntionalgalerie)では、クラシック音楽のジャケットなどによく登場するカスパー・ダーヴィット・フリードリヒの特集もあって、なじみの図柄をホンモノで確かめることができました。



やはり印象深かったのはペルガモン博物館の、古代バビロニアの『イシュタール門』と、新博物館(Neues Museum)の古代エジプト美術『王妃ネフェルティティの胸像』(写真撮影禁止)でした。



そして、私たちが向かったのは今夜のコンサート会場の場所を確認するために、ウンター・デン・リンデンに面したベルリン国立歌劇場付近のベーベル広場です。





(続く)