旧醸造試験所を見学してきました。



ここは通称「赤煉瓦酒造工場」。レトロな赤煉瓦の建物ですが、建築界の三大巨匠の一人である妻木頼黄が手がけた遺構のひとつとして重要文化財に指定されています。妻木といえば、横浜の赤れんが倉庫や元横浜正金銀行本店などが有名です。もうお気づきでしょう。銀行や、港湾、税関、そして、酒造と、いずれも財務官僚の管轄。妻木は旧・大蔵省営繕の総元締めだったというわけです。



妻木は、工部大学校(後の東大建築学科)でジョサイア・コンドルに学んだのは、東京駅の辰野金吾や迎賓館赤坂離宮の片山東熊らと同じですが、アメリカのコーネル大学に留学、その後、ドイツにも留学するなど、他の二人と違って西洋建築の堂々とどっしりとした合理的機能美に徹していて赤煉瓦がそのシンボルのようなものだという気がします。



こちらは、日清戦争後の殖産興業の一環として酒造業の発展のための研究所として設立されました。あの時代、官営八幡製鉄所や長崎造船所のような軍事力一辺倒では決してなかったのです。




今は研究所そのものは広島に移転してしまいましたが、かつては山廃酛を開発したり、速醸酛を発明したりと、いささか神がかっていた日本酒醸造技術の近代化の中心となりました。また、全国新酒鑑評会の会場ともなりました。



建築もよし、日本酒もよしで、二度おいしい酒造試験所見学でした。