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「クロード・シャノン」(ジミー・ソニ、ロブ・グッドマン著)読了 [読書]

クロード・シャノンは、今日の情報社会を築くことになる情報理論の先駆者。時にはアインシュタインと並び称されるほどの天才ともてはやされ、その功績が実社会の発展に寄与したことでは並み居るノーベル賞受賞者たちをはるかに凌駕するが、ついにその栄誉に浴することはなかった。

シャノンは、天才的な数学者でありながら、電気回路にも通じ無類の機械いじり好きでもあった。

その出発点は、学生時代に取り組んだ機械仕掛けの計算機。そして、電気的な開閉器(スイッチ)とブール代数との類似に気づき、オンとオフを操作する開閉器を並列、直列で組み合わせることで論理演算が可能であることを示した。やがて、情報は2進法で符号化が可能であることを示し「ビット」という情報単位を提唱する。

こうした発案は、ノイズに悩まされていた通信技術を一変させたほか、情報の数理化やアナログのデジタル変換など、今日の情報技術の根本的革命をもたらしたが、学術研究としては奇異な面相に写り同時代の学界からは安く見立てられた。本人も通俗な栄誉や金銭的報酬を求めず、天才ぞろいのベル研究所でも、社交性に欠ける変人的天才と見なされ、孤独だが自由気まま研究生活を貫いた。

本書は、どちらかと言えば、シャノンの人生を追いながらも、そうした多方面にわたるとりとめもない浮世離れした多才ぶりに焦点をあてている。チェス好きであったシャノンは、人工知能の萌芽ともいうべき対戦機械を発明したり、果ては、今日のウェアラバルコンピューターとも言うべき小型の計算機を衣服に忍ばせてラスベガスのカジノに挑んだりとのエピソードも紹介されている。

反面、シャノンの情報理論における貢献やその発展、その発想の本質などについては、ほとんど触れられていない。確かに、本当の天才というものは、系統だって発想・思考し行動したわけではないだろうし、自分自身の天才ぶりにさえも気がついていないということなのかもしれない。波瀾万丈な生涯やその破天荒さこそ面白いといえるのかもしれないが、とはいえ、情報理論の入門としては、あまりにも記述の空洞が大きいし、彼の発見や発案がどのようにして科学者やエンジニア達に発見され錬磨されていったかという時代描写に欠けるのは、読んでいていかにももどかしい。




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クロード・シャノン
情報時代を発明した男
ジミー・ソニ、ロブ・グッドマン
小坂恵理/訳
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