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風立ちぬ  (紀尾井ホール室内管 定期公演再開) [コンサート]

2月以来、半年ぶりの紀尾井ホール室内管弦楽団の定期演奏会です。

定期会員のチケットはいったんキャンセルとなり、入場者の数を制限して再度の発売となりました。私のもともとの定席は2階でしたが、それならば、たまには他の席で聴いてみようと1階席を予約してみました。いつもとは違う音の響きを楽しもうと思ったのです。

予定されていた指揮者のリチャード・トネッティさんは来日できなくなり、プログラムも大きく変更されることになりました。トネッティさんはオーストラリア室内管弦楽団のヴァイオリニスト兼指揮者。同楽団は、アンジェラ・ヒューイットのバッハ協奏曲シリーズの録音で共演していて楽しみにしていましたので残念です。

とはいえ、指揮者なしで、紀尾井ホール室内管の自慢の弦楽アンサンブルということで、内容も意欲的な曲を取り上げた会心のコンサート。

1曲目は、弦楽オーケストラのための定番のひとつ。弦楽器だけの合奏の典雅な響きと、グリーグらしい叙情と親しみやすい旋律の魅力がたっぷりです。

2曲目は、マーラーの未完の交響曲。様々な補筆の歴史があって、それぞれに印象がかなり違いますが、このハンス・シュタットルマイア編は弦楽オーケストラ版は、模様が細密で水彩のように色彩が淡く透明です。響きの叙情味と包み込むような耽溺性が、5番のアダージェットのような雰囲気を醸します。ひとつおきに客席が空いているせいなのか、いつもにも増してホールの響きが豊かで空間を満たすように感じました。

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休憩をはさんでの一曲目は、ピアソラ風のバンドネオンの響きのタンゴ。作曲者のゴリホフは実際にピアソラの楽団でピアノを担当していたガンティーニに師事したのだそうです。感染病禍を浄め調伏する、夜空の花火のように炸裂。演奏し終わると、コンサートミストレスの玉井菜採さん以下、ちょっとした冒険を楽しんだ後の晴れやかな笑みを浮かべていました。

掉尾を飾ったのはブラームスの弦楽五重奏曲の弦楽オーケストラ版。原曲にコントラバスを増強しただけの合奏拡大版。オーストラリア室内管弦楽団のパート譜に紀尾井ホール室内管の工夫を加えたオリジナルだそうだ。こういう弦楽四重奏などを弦楽合奏に拡大したものでは、ベートーヴェンの「大フーガ」などいろいろありますが、もともとオーケストラ的スケールを内在したブラームスのエネルギーが存分に発揮されて、重厚かつ壮麗で痛快な演奏でした。

チェロ以外の奏者は全員立っての演奏。その分、ひとりひとりの間隔もあいていて全身を揺らしてのびのびと弓を運んでいます。演奏そのものや、活動再開に向けた皆さんの意気込みが客席にびんびんと伝わってくるような素晴らしい演奏会でした。


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紀尾井ホール室内管弦楽団 第123回定期演奏会
2020年9月12日(土) 14:00
東京・四谷 紀尾井ホール
(1階 9列10番)

紀尾井ホール室内管弦楽団(指揮なし)
(コンサートマスター:玉井菜採)

グリーグ:組曲《ホルベアの時代から》op.40
マーラー:交響曲第10番?第1楽章 アダージョ(ハンス・シュタットルマイア編 弦楽オーケストラ版)

ゴリホフ:ラスト・ラウンド~第1楽章
ブラームス:弦楽五重奏曲第2番ト長調 op.111(弦楽オーケストラ版)
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