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「シューマン&ドヴォルザーク」 (芸劇ブランチコンサート) [コンサート]

たった1時間のブランチコンサート。

ですがいろいろと発見とか驚きがあって新鮮。今回はふたつのサプライズ。

最初に登場したのが、ヴァイオリニストの小林壱成さん。

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小林さんは、実は今年の初めに紀尾井ホールでの「明日への扉」で聴いたばかり。「明日への扉」は、フレッシュなアーチストを紹介するシリーズでいわば若手の登竜門。コロナ禍のせいで延期が相次ぎ、ただでさえ成長著しい若手が登場したときにはもうすでに大活躍で名を知られているということが続いていました。小林さんについても、あの時点で東京交響楽団のコンサートマスターに就任してしまっていました。それで「時期外れの…」などとちょっと失礼なことを感想日記に書きました。

その小林さんが、たった半年でずいぶん貫禄がついて、驚いたのです。

雰囲気もとても落ち着いいて、成熟したロマンスあふれるシューマンを聴かせてくれたことにすっかり感服しました。もともとジュニアオーケストラで子供の頃からコンマス役を担っていたそうですから、根っからのオーケストラ演奏家なのでしょうか。地位がひとを造るということも言われますが、ほんとうに小林さんのはまりようが窺い見える急速な進境ぶりです。

続いて登場したのがチェロの笹沼 樹さん。

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実は、笹沼さんもここのところよく聴いています。ただし、それはカルテット・アマービレの一員として。四重奏の中心にひときわ高くそびえる樹。目立たないわけがない。この芸劇ブランチコンサートでも、今年の初めに登場して清水さんとピアノ五重奏曲を演じています。その笹沼さん、聞くところによるとソロ活動や様々な企画をプロデュースするなど八面六臂の大活躍で大忙しなのだとか。これまた美音の心地よい、密かに情熱を燃やし恋い焦がれるようなシューマンです。

その笹沼さんと小林さんは同学年。ジュニアオーケストラでも首席同志でずっと仲良しという間柄だそうで、ステージ上のスピーチではざっくばらんな会話で、ここは一転して若やいだ雰囲気でした。

ふたつ目の驚きというのは、最後のドヴォルザークのピアノ四重奏。

これがもう、こんな魅力あふれる曲があったのかというぐらいの熱気あふれる名演だったのです。

ピアノと弦楽四重奏団との共演となる五重奏とは違って、四重奏はどうしてもにわか編成ということになって演奏機会も少ない。小林さんも笹沼さんも演奏は初めてとのこと。清水さんも「確か二回目…。でもこれっぽっちも憶えていない。」いったい誰がプログラムとして発案したのでしょう?

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面白いのはヴィオラの佐々木亮さんは何度も経験しているとのこと。謹厳実直にして寡黙な佐々木さんが、あれこれ曲の要所を説明しながらのリハーサル…というのを想像して思わず吹き出してしまいます。

どう考えてもにわか仕立てのアンサンブルのはずなのに、素晴らしい熱演。音色の溶け込みも、互いの主張がぶつかり合い、あるいは呼応するような掛け合いも、美しいハーモニーやそれぞれの音色の際立ちも素晴らしい。何よりもドヴォルザークのちょっと土臭い旋律の魅力がいっぱい。寡黙なはずの佐々木さんのヴィオラが、要所要所で前へ出てきて、アンサンブル全体を結びつけ橋渡しをするように響きが浮き上がってきます。まさにヴィオラの魅力そのもの。

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サロンコンサートとは対照的で、だだっ広い大ホールのステージに、せいぜいが三、四人のアンサンブル。しかも、毎回毎回、清水和音さんが集めるにわか作りの顔ぶれです。昼前のいささか安上がりのブランチコンサート。そんなカジュアルなヴェニューでこんなすごい演奏を聴けてしまってほんとうに申し訳ない…というぐらいのすごい快感でした。



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芸劇ブランチコンサート
清水和音の名曲ラウンジ
第38回「シューマン&ドヴォルザーク」
2022年10月19日(水) 11:00~
東京・池袋 東京芸術劇場コンサートホール
(1階E列30番)


シューマン:3つのロマンス op.94
 小林壱成(Vn) 清水 和音(Pf)
シューマン:幻想小曲集 op.73
 笹沼 樹(vc) 清水 和音(Pf)

ドヴォルザーク:ピア四重奏曲 第2番 変ホ長調 op.87
 小林壱成(Vn) 佐々木亮(Va) 笹沼 樹(vc) 清水 和音(Pf)

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