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生誕100年!リゲティに感謝を込めて…(第一夜) トッパンホール [コンサート]

ジェルジ・リゲティの生誕100年。先日の大野和士/都響とコパチンスカヤのコンサートも大いに盛り上がりましたが、この夜もそれに優るとも劣らないハイレベル。第一夜のみ聴きましたが、充実したコンサートでした。

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東京での連日のリゲティ・プログラムのコンサート。しかも完売です。いくらリゲティ・イヤーとはいえ、数年前には考えられなかったことです。

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実際、最初の弦楽四重奏曲は、ここのところ実演でもよく演奏されていて知られるようになっています。手元にも、ハーゲン弦楽四重奏団とベルチャ弦楽四重奏団のものが2枚ありますし、そのほかにもFMのエアチェックでエスメ弦楽四重奏団(2022年武蔵野市民文化会館)、ウェールズ弦楽四重奏団(2019年紀尾井ホール)の2つの演奏もあります。

それでもこの曲を目の当たりにするのは初めて。気鋭のクァルテット・インテグラが眼前のステージで火花を散らす様は大迫力で興奮させられます。彼らの演奏は、オーソドックスなハーゲンととげとげしいまでに先鋭なベルチャとの中間ぐらい。とはいえリアルなライブ演奏の生々しさとその迫力はCDで聴くのとは大違い。禍々しいまでの緊張や悪夢、不気味なまでの暗鬱な静けさと狂気。そういう戦争の夜の記憶が体臭のように匂い立ってくる。魂を揺さぶられるような思いがしました。会場は、プログラム最初から割れんばかりの拍手です。

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プログラムの二つ目は、チェンバロのための作品。まったくの初体験。

ステージに両脇に控えていた2台のチェンバロが中央に引き出され、川口成彦がまず向かって右手のイタリアンタイプのレプリカを弾きます。こちらは「中全音音律」に調律されているそうで、旋律的な音型が繰り返し織りなす重なりが独特の縞模様の干渉波を浮かび上がらせます。

続けて左側の白いフレンチタイプのほうに移動。こちらは響きが豊かで深みがあります。左手が独特のリズムを執拗に続けてその変則リズムの上で右手が複雑に乱舞する。続けての二曲目は猛烈な速さで細かい連打が右手と左手で微妙にずれながら増幅していく。あまりの細かさ速さがまるで別の流れを感じさせて、それがゆっくりとうねっていくような錯覚さえ覚えるほど。

60年代の前衛は、理屈ばかりで曲を聴いても面白くも何ともないというものが多かった気がします。リゲティの曲は、そのまったく反対で、聴いてみると何とも不思議で、いったい何をやったのかそのカラクリを知りたくて思わずその種明かしをせがみたい気にさせます。

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そのことは、後半のピアノのためのエチュードでも同じ。

10年ぐらい前に購入したCDは、何度も聴いてみたが何がなんだかさっぱりわからずついにギブアップ。

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何をどうしているのか、何が言いたいのか、それがどうにも聞こえないし見えてこない。その不思議さ、もどかしさは、実演を聴いても同じでした。何しろ弾いているのは、そのCDのご本人であるトマス・ヘル。こればっかりは、鍵盤の見える席に座れば良かったのかもと思いました。あるいは、時間がかかるかもしれませんが、演奏者が一曲毎にデモを交えた解説をしてくれるレクチャー・コンサートにするのも一案かもしれません。

そうは言っても、独特の不思議に満ちた興奮は、とても心地よい。目の前で展開するのはまごうことなく超絶技巧。それは手が大きいとか、激しい跳躍、絢爛豪華なアルペジオなどという生やさしいものではないことは確かで、とにかくリズムが複雑で奇妙かつ多彩な響き。生硬で生真面目なピアニズムのなかにもちょっとした滑稽味すら感じさせます。

客席には、前半のクァルテット・インテグラのメンバーも着座して聴き入る姿も。その妙技に客席も沸きに沸きました。




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生誕100年バースデー!リゲティに感謝を込めて…(第一夜)
2023年5月28日(日)19:00
東京・文京区 トッパンホール
(G列11番)

クァルテット・インテグラ
 三澤響果(1st ヴァイオリン)
 菊野凜太郎(2nd ヴァイオリン)
 山本一輝(ヴィオラ)
 築地杏里(チェロ)

川口成彦(チェンバロ
トーマス・ヘル(ピアノ)

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