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恋人たち (カルテット・アマービレ+Plus) [オーディオ]

先日、何気なく録りためた録画を見ていて、とても魅力的な日本人若手の演奏家にちょっと釘付けになってしまいました。

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カルテット・アマービレという弦楽四重奏団。

2016年にミュンヘン国際音楽コンクールに第3位入賞を果たしたという注目のアンサンブル。難関のこのコンクールの弦楽四重奏部門で入賞するのは、日本人アンサンブルとしては、東京クヮルテット、ウェールズ弦楽四重奏団に次いで3団体目という快挙。

映像は、今年1月にハクジュホールでスタートさせたシリーズ「BRAHMS Plus」第1回のもの。

いきなりウェーベルンが演奏されたのですが、これがまた見事なまでに甘美でロマンチック――静かな熱を帯びた演奏で、思わず映像に見入ってしまったのです。

続いて演奏されたのは、ブラームスの六重奏曲。

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四人の恩師である、チェロの堤剛とヴィオラの磯村和英という大物ベテランのお二人が加わっての六重奏。堤も磯村もミュンヘン国際音楽コンクール入賞の先達。しかも、磯村はあの東京クヮルテットのメンバーとしての入賞でした。

この六重奏曲には、もちろん、幾多の名盤があります。そのほとんどが、オールスターの一期一会的録音か、あるいは、常設の名門カルテットにソリストクラスのヴィオラ、チェロが客演するという形をとっています。

その中で、地味な存在ながら根強い人気なのがコチアン四重奏団他によるディスク。

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日本のDENONがチェコのスプラフォンと提携して共同制作されたディスクですが、根強い人気でこの曲の定盤の位置を保っています。加わったのは、彼らの恩師であるスメタナ四重奏団のメンバーのふたり。若手のカルテットに恩師であるふたりの古老が加わるという構図もまったく同じ。

あらためてこのディスクを取り出して聴いてみると、やはり、とても良い。

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第1番の六重奏曲は、ブラームスがまだ20代のころに作曲されたもの。ヴィオラとチェロが加わったことで響きに厚みがまし陰影の濃厚な叙情性に満ちていて、密かにクララ・シューマンへの恋心が秘められているともいわれます。ジャンヌ・モロー主演の映画「恋人たち」で、その情熱的な緩徐楽章が一気に知られるようになりました。名匠ルイ・マル監督の「死刑台のエレベーター」に続く作品で、映画音楽として、いわばマイルス・デイヴィスとは、ジャズvsクラシックの双極をなすというわけです。

映画は、若妻が恋に陥るという不倫の匂いがたちこめているもので、この六重奏曲はまさにそういう、どこか行き場のないような若々しい情熱に満ちています。だから、若い演奏こそがふさわしく、そこにベテランが深い陰を帯びた重厚な響きを加えるのが理想で、コチアン四重奏団+プラスをあらためて聴き直してみると、そういう若々しい精気に満ちた演奏となっています。しかも録音もいい。

カルテット・アマービレ+プラスは、二十一世紀の新進若手だけにアンサンブル技巧が華麗かつ堅固、しかも、甘美さと叙情性という点でさらに濃密さを増しています。素晴らしい。

コチアン四重奏団は、あまり名を知られていませんが、スメタナやマルティヌー、ドホナニーなどのお国もの、ヒンデミットやツェムリンスキーなどニッチでマニアックな路線で息長く活動を続けてきたようです。録音も、PRAGAなど知る人ぞ知るというインディからリリースされています。

このカルテット・アマービレも、これからどのような活動を展開していくのか。とても期待しています。
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