再生システムは「エンファシス自動解除」の夢をみるか [オーディオ]
4月新刊『デジタルなのになぜ音が変わるのか?(大槻 英樹 著)』のレビューの続き…というか、番外編です。
CDリッピングに多くの紙数を費やしている本書では、当然のことながらエンファシスについても触れています。
『もしかして「エンファシスCD」をデコードせずに聴いていませんか?」という一節です。要約すると以下のようなことになります。
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1.リッピング時にエンファシスを解除するリッパー
iTunesはデコードする。WMPはデコードしない。CUEシート運用を重視するリッパー、チェックサムDB照合サービスを利用するリッパーは解除しない傾向がある
2.エンファシス解除を悩ませる「TOCミスマッチCD」
一般的にリッパーはエンファシスの有無を判定するのにTOCを参照している。CDをマウントしただけで検出できるので便利だからである。そのため、フラグは原則としてサブコードに記録されるものだが、TOCにも記録することが一般的になっている。しかし、「TOCではエンファシスなし、サブコードではあり」というタイトルも存在する。そういうタイトルは、TOCのみ参照しているソフトは《エンファシスなし》と誤判定してしまう。例えばiTunesは、そういうCDをデコードしない。
エンファシスがトラックごとに違っている可能性も無しとしない。さらには「TOCではエンファシス有りだがサブコードでは無し」というケースや、そもそもTOCやサブコードのフラグと実際の音声データのエンファシスがミスマッチなものがある可能性も理屈上は否定できない。
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以上のような紛らわしい問題はともかくとしても、そもそも、『エンファシスはいつどこで解除すべきか』という問題があります。
本書では、次のように整理しています。
①リッピング時にデコード済ファイルを得る
②リッピング後にファイルをデコード処理する
③再生時にプレーヤーソフトでリアルタイムデコードする
④再生時にDACでリアルタイムデコードする
エンファシスが、もともとはADC前のアナログ領域で変調しDAC後のフィルターで復調させる技術であったことから、やはり、④のエンファシスをデコードせずファイル化し、リッピング時に立てたエンファシスフラグを検出し自動的にDAC(あるいはプレーヤーソフト)でデコードすることが、最もスマートです。すなわち『エンファシス自動解除』です。
このことを可能にするためには、以下の機能が必要になります。
(1)フラグが立てられるファイル形式、またはCUEシートの利用
(2)リッピング時に(1)が生成できるリッパー
(3)プレーヤーソフトでデコードする場合は、(1)を認識してデコード処理するプレーヤーソフト
(4)DACでデコードする場合は、フラグを立てられるインターフェースの利用
(5)およびフラグを立てて(4)に出力できるハードウェア
(6)および(1)を認識し(5)を制御できるプレーヤーソフト
(7)もちろんフラグを認識して動作するDAC
S/PDIFにはフラグがありますが、USBオーディオインターフェースにはありません。FLACにはありますが、WAVEフォーマットにはフラグはありません。(1)~(7)をすべてクリアするのは相当に難しく、PCによるファイル再生で自動化というのは文字通り《夢》に近いというわけです。『ファイル形式やリッパーやプレーヤーソフトやDACなどの「選択肢に大きな制限を付けてまでやるメリットはあるか」をよく考えたほうがよい』と著者は結論づけています。
私も、もともとそういう考えでした。ですから躊躇なく①を選びます(②はあまり本質的な違いはないと思います)。先日の日記の趣旨はそういうことでした。(プリ・エンファシスはあくまでCDプレーヤーで聴け…というのは、この際、議論外とします)
ところが、これにケチがつきました。
そもそも16ビットでのデコードではプリ・エンファシスの高域小音量信号でのSN改善効果が得られなくなるという論議です。
私が、使用しているdBpowerampでは、あくまでも44.1/24でのデコードです。それでも不都合は感じていませんでしたが、いったんケチがつくと気になってしまいます。そこで、24bitでのデコードが可能なソフトを探索してみましたところ、すぐに、TuneBrowserに行き当たりました。
TuneBrowserは、windows対応の高機能音楽プレーヤーで、その音質も高いとコミュでも評判のソフトです。このソフトにはそのままリッパー機能もバンドルされていて、エンファシスの24bitでのデコードになっているのです。
コントロール画面も、なかなかにオシャレですし、リッピング時にポップアップされるタスクリストもプロフェッショナルな雰囲気ですし、何よりも動作が視認できるので安心です。
これで比較試聴してみました。
このソフトは、バロックの弦楽アンサンブルとチェンバロ、オーボエ・ソロということで高域倍音をふんだんに含んでいるので、こういう比較には最適だと思いました。
聴いてみると、やはり、デコードされていないファイル再生は、ハイ上がりが顕著です。このアルバムでは、音像高さが不自然になってしまいます。弦楽アンサンブルやオーボエがとても高い位置になってしまうのです。通奏低音は低い位置のままなのでステージ・パースペクティヴが少し不自然です。面白いのは、低音はしっかりしているので、全体が軽く薄い音色になるというわけではありません。
それに較べると、デコード済み同士の比較は、ちょっと難しい。プラセボかもしれませんが、24ビットにやはり一日の長があるようです。全体に音調が落ち着いていて分解能が高い。特に弦楽アンサブルのトゥッティでの音のほぐれが優位。16ビットでは、全体に音が奥に引っ込み大人しくなりますが、24ビットでは、もう少し音楽が積極的で音が前によく飛んできます。とはいえ、差はかなり微妙です。ブラインドだったら自信はありません。
TuneBrowserによって改めて確認できたことがありました。
それはdBpowerampが、エンファシスの判定において完全ではなかった…ということです。
話しが長くなりますので、これまた、別途、日記にまとめてみることにします。
CDリッピングに多くの紙数を費やしている本書では、当然のことながらエンファシスについても触れています。
『もしかして「エンファシスCD」をデコードせずに聴いていませんか?」という一節です。要約すると以下のようなことになります。
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1.リッピング時にエンファシスを解除するリッパー
iTunesはデコードする。WMPはデコードしない。CUEシート運用を重視するリッパー、チェックサムDB照合サービスを利用するリッパーは解除しない傾向がある
2.エンファシス解除を悩ませる「TOCミスマッチCD」
一般的にリッパーはエンファシスの有無を判定するのにTOCを参照している。CDをマウントしただけで検出できるので便利だからである。そのため、フラグは原則としてサブコードに記録されるものだが、TOCにも記録することが一般的になっている。しかし、「TOCではエンファシスなし、サブコードではあり」というタイトルも存在する。そういうタイトルは、TOCのみ参照しているソフトは《エンファシスなし》と誤判定してしまう。例えばiTunesは、そういうCDをデコードしない。
エンファシスがトラックごとに違っている可能性も無しとしない。さらには「TOCではエンファシス有りだがサブコードでは無し」というケースや、そもそもTOCやサブコードのフラグと実際の音声データのエンファシスがミスマッチなものがある可能性も理屈上は否定できない。
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以上のような紛らわしい問題はともかくとしても、そもそも、『エンファシスはいつどこで解除すべきか』という問題があります。
本書では、次のように整理しています。
①リッピング時にデコード済ファイルを得る
②リッピング後にファイルをデコード処理する
③再生時にプレーヤーソフトでリアルタイムデコードする
④再生時にDACでリアルタイムデコードする
エンファシスが、もともとはADC前のアナログ領域で変調しDAC後のフィルターで復調させる技術であったことから、やはり、④のエンファシスをデコードせずファイル化し、リッピング時に立てたエンファシスフラグを検出し自動的にDAC(あるいはプレーヤーソフト)でデコードすることが、最もスマートです。すなわち『エンファシス自動解除』です。
このことを可能にするためには、以下の機能が必要になります。
(1)フラグが立てられるファイル形式、またはCUEシートの利用
(2)リッピング時に(1)が生成できるリッパー
(3)プレーヤーソフトでデコードする場合は、(1)を認識してデコード処理するプレーヤーソフト
(4)DACでデコードする場合は、フラグを立てられるインターフェースの利用
(5)およびフラグを立てて(4)に出力できるハードウェア
(6)および(1)を認識し(5)を制御できるプレーヤーソフト
(7)もちろんフラグを認識して動作するDAC
S/PDIFにはフラグがありますが、USBオーディオインターフェースにはありません。FLACにはありますが、WAVEフォーマットにはフラグはありません。(1)~(7)をすべてクリアするのは相当に難しく、PCによるファイル再生で自動化というのは文字通り《夢》に近いというわけです。『ファイル形式やリッパーやプレーヤーソフトやDACなどの「選択肢に大きな制限を付けてまでやるメリットはあるか」をよく考えたほうがよい』と著者は結論づけています。
私も、もともとそういう考えでした。ですから躊躇なく①を選びます(②はあまり本質的な違いはないと思います)。先日の日記の趣旨はそういうことでした。(プリ・エンファシスはあくまでCDプレーヤーで聴け…というのは、この際、議論外とします)
ところが、これにケチがつきました。
そもそも16ビットでのデコードではプリ・エンファシスの高域小音量信号でのSN改善効果が得られなくなるという論議です。
私が、使用しているdBpowerampでは、あくまでも44.1/24でのデコードです。それでも不都合は感じていませんでしたが、いったんケチがつくと気になってしまいます。そこで、24bitでのデコードが可能なソフトを探索してみましたところ、すぐに、TuneBrowserに行き当たりました。
TuneBrowserは、windows対応の高機能音楽プレーヤーで、その音質も高いとコミュでも評判のソフトです。このソフトにはそのままリッパー機能もバンドルされていて、エンファシスの24bitでのデコードになっているのです。
コントロール画面も、なかなかにオシャレですし、リッピング時にポップアップされるタスクリストもプロフェッショナルな雰囲気ですし、何よりも動作が視認できるので安心です。
これで比較試聴してみました。
このソフトは、バロックの弦楽アンサンブルとチェンバロ、オーボエ・ソロということで高域倍音をふんだんに含んでいるので、こういう比較には最適だと思いました。
聴いてみると、やはり、デコードされていないファイル再生は、ハイ上がりが顕著です。このアルバムでは、音像高さが不自然になってしまいます。弦楽アンサンブルやオーボエがとても高い位置になってしまうのです。通奏低音は低い位置のままなのでステージ・パースペクティヴが少し不自然です。面白いのは、低音はしっかりしているので、全体が軽く薄い音色になるというわけではありません。
それに較べると、デコード済み同士の比較は、ちょっと難しい。プラセボかもしれませんが、24ビットにやはり一日の長があるようです。全体に音調が落ち着いていて分解能が高い。特に弦楽アンサブルのトゥッティでの音のほぐれが優位。16ビットでは、全体に音が奥に引っ込み大人しくなりますが、24ビットでは、もう少し音楽が積極的で音が前によく飛んできます。とはいえ、差はかなり微妙です。ブラインドだったら自信はありません。
TuneBrowserによって改めて確認できたことがありました。
それはdBpowerampが、エンファシスの判定において完全ではなかった…ということです。
話しが長くなりますので、これまた、別途、日記にまとめてみることにします。
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