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モーツァルト「春への憧れ」

とても好きなモーツァルトの歌。

メロディは、ピアノ協奏曲第27番の終楽章のロンド主題を転用したものだと言われていて、両者を聴いてみればほんとうにそのままです。モーツァルトは、それを子供の歌にしているのですね。

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この曲は、♪楽しや五月 草木はもえ~♪と、文部省唱歌(『五月の歌』)にもなっていて、まさに今にふさわしい五月の歌になっています。

大好きなのは、バーバラ・ボニー。

Barbara Bonney_1.jpg

軽やかで、純真無垢。ほんとうに五月を楽しみにしている子供心にあふれています。文部省唱歌と違って原曲はあくまでも北国の冬にあって、早く五月にならないかなぁと春への憧れの思いを歌っていますが、そういう子供心そのものの歌唱です。


もうひとつ、素敵な歌唱として手元のCDをよく聴くのは、白井光子さん。

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こちらは柔らかで、ドイツ語の発音がとてもきれい。"grun"なんてほんとうに緑色の木々の葉っぱが目に浮かぶよう。ウムラウトとRの発音がほんとうに美しい。歌詞の韻もきれいにリズミカルに響きます。まるでやさしいお母さんが、子供と一緒になって歌っているようです。

はっとするのは、第3節目の歌い方。ヘルさんのピアノもちょっと音を小さくして、白井さんといっしょになって誰かを気づかうように語りかけます。かたわらの歌詞を確認してみると、ここは病弱なお友だちを気づかっているんですね。この一節は、春を思うにしても手放しではそう言えないところがあって同じメロディの繰り返しなのに、ちょっと雰囲気が違うんです。

それでは、バーバラ・ボニーは、ここをどう歌っているのかと聴き直してみて、ちょっと意外なことに気づきました。

歌詞が違うんです。

調べてみると、実は、原曲は5節あるのです。お二人とも4節を歌っていますが、バーバラは第4節を飛ばし、白井さんは第3節を飛ばして歌っている。調べてみると、シュワルツコップも白井さんのように、病弱のお友だちを気づかう第4節のほうを歌っています。

たったこれだけで、全体の陰影が微妙に変わってしまいます。


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いま、私たちは5月の緑のまっただ中にいるというのに、コロナのせいで、気持ちはむしろずっと先の5月の新緑に憧れているかのようです。何かとても不思議な焦燥感さえあります。

突き抜けるように明るく美しいバーバラの歌声も、気づかいとやさしさにあふれる白井さんの歌声も、どちらも聴いているうちに、ちょっと泣きたくなってしまう気がしてしまいました。
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