SSブログ

バロック音楽のひととき (鈴木優人&鶴田洋子) [コンサート]

浜離宮朝日ホールのランチタイムコンサート。この日は、鈴木優人さんと鶴田洋子さんご夫妻によるバロック音楽のひととき。

IMG_2061_1.JPG

最近は指揮者でも大活躍と多才ぶりを発揮する鈴木さんですが、この日はチェンバロ。鶴田さんは、バッハ・コレギウム・ジャパンにも参加するフラウト・トラヴェルソの若き第一人者。

バロック期の音楽ばかりなので、ひとつひとつの曲は短め。フローベルガーとC.P.E.バッハを交互に演奏する前半、一転してフランスに目を移す後半と多彩で曲数も多い。

面白かったのは、フローベルガーの組曲からの一曲。

「大きな危険の中、小舟でライン川を渡りながら作曲したアルマンド」という長ったらしいタイトルの一曲ですが、まるでポピュラー音楽かなにかの弾き語りみたいなボーカルマイクがチェンバロの鍵盤上にしつらえられます。果たして何が始まるかと思いきや、鈴木さんが語りを入れながら、曲の細かい一節と交互に演奏していきます。

筆写譜には、タイトルの意味するライン川に泊められていた小舟で起きた事件を詳細に書いてあって、その一節一節に対応する小節に番号が振られているそうです。それを日本語に訳して鈴木さんが語り、弾くという趣向。そういう説明を聞いて納得したところで、もう一度、語り無しで通しで演奏。あまりに短い曲なのでちょっと笑ってしまいましたが、実に細かで巧妙なフレーズに満ちているというのがバロック音楽なのでしょうね。

フラウト・トラヴェルソというのは、バッハ・コレギウム・ジャパンなどの大きなアンサンブルで聴いたことはありますが、こうやってリサイタル形式で聴くのはもしかして初めてかもしれません。ブロックフレーテと同じようにピュアで素朴な音質ですが、音色は暗めで運動性も劣るのでアーティキュレーションの面白みは不足します。一方で、陰影に富んだ繊細さにかえって高雅さを感じるところがあります。

IMG_2063_1.JPG

後半のオトテールでは、手にした楽器を見て、おや?と思いましたが、やはり前半のものとは違っていてフレンチタイプに持ち替えたとのこと。よりニュアンスに富んで優雅です。チェンバロの上蓋はほとんど閉じてしまいます。前半のC.P.E.バッハでは半開でしたが、曲の音域が低めでトラヴェルソの音量も小さいからなのだそうです。

鶴田さんのトラヴェルソは、音程も安定していて、クロスが多そうで難しそうなフィンガリングにもほとんど不確かなところがありません。現代の若手世代の技術には驚かされます。音程の微かな不安定さにかそこき危うさがあってそこに萌えるところがあるのですが、かえって淡泊で生真面目すぎるような印象さえあります。最後の大バッハのソナタなど、チェンバロとの対話の遊びがもう少しあってもよいのではという感じも残りました。

午の前後のバロック音楽。優雅なひとときでした。550席ほどのホールであっても、さすがにこうした曲にはやや大きめで、響きももう少し欲しいと感じますが、充足した気持ちになりました。当時の王侯貴族よりも現代の私たち庶民の方がはるかに贅沢な時間を堪能しているのでしょうね。



鈴木鶴田-thumb-350xauto-3850.jpg

浜離宮ランチタイムコンサートvol.210
鈴木優人(チェンバロ)&鶴田洋子(フラウト・トラヴェルソ)
2022年1月21日(金) 11:30~
東京・築地 浜離宮朝日ホール
(2階R列10番)

鈴木優人 (チェンバロ)
鶴田洋子 (フラウト・トラヴェルソ)

フローベルガー:トッカータ集第2巻より第1番 イ調
C.P.E. バッハ:フルートとチェンバロのためのソナタ イ短調 Wq.128 H.555
フローベルガー:組曲ホ短調より
       「大きな危険の中、小舟でライン川を渡りながら作曲したアルマンド」
        FbWV-627 解説付き
C.P.E.バッハ:ヴュルテンベルク・ソナタ 第1番 イ短調 Wq. 49 / 1, H.30

オトテール:組曲ト長調 作品2-3
ラモー: 新クラヴサン組曲集 第2番より「めんどり」
クープラン:クラヴサン曲集第2巻第6オルドル神秘的なバリケード No.6-5
J. S. バッハ:フルートとオブリガートチェンバロのためのソナタ BWV 1030 ロ短調

(アンコール)
J.S.バッハ(偽作):フルートのためのソナタ ハ長調よりメヌエット
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。