SSブログ

「真髄」ではないけれど… (パシフィックフィルハーモニア東京) [コンサート]

パシフィックフィルハーモニア東京は、もともとは東京ニューシティ管弦楽団と称していたオーケストラ。「東京で9番目のプロオーケストラ」として1990年に創設。

東京でローカルというのはヘンかもしれませんが、いわゆる「地域密着型」というのでしょうか、そういうものを感じさせます。

まず何よりも、大編成であることに驚きました。メジャーではないのにビッグ。正規メンバーの人数(試用期間中4名を含み45名)よりもはるかに大人数の楽員がステージ上に並んでいます。堂々の3管編成でコントラバスは7台。さすが東京です。

IMG_1039_1.JPG

そのオール・フランス音楽・プログラム――フランス音楽とは、言いながらとても日本的。

最初の「牧神の午後」には、うむと唸らされました。ゆったりとしたテンポで、フルートを始め個々の楽器のメロディアスな音色と澄んだ鳴り物の音がどこまでも綺麗に響く。そのことは、次の「海」でも同じ。ドビュッシーの思い描く大洋がどこかは定かではないのですが、この「海」は、まるで日本海。佐渡島を望む日本海の絶景という感覚。

こうしたことは、最後のラヴェルにも共通します。茫漠と混沌とした響きから狂乱のなかで崩壊していく音楽を、ものの見事なマスゲームのようなスペクタクル。飯盛さんのポディアム上のダンスも素晴らしかった。

フランス音楽の「神髄」とは思わないけど、堪能しました。

Ririko Takagi_1.jpg

圧巻だったのは、高木凜々子さんのソロによるサン・サーンス。

サン・サーンスは、ドビュッシーやラヴェルのいささか知性が勝ちすぎの高踏な「フランス音楽」のイメージとは違って古典的で、日本人の西洋音楽――伝統的クラシック音楽にぴったり。パリ音楽院で同窓だったサラサーテに献じた曲だそうです。サン・サーンスのヴァイオリン曲といえば、「序奏とロンド・カプリチオーソ」や「ハバネラ」が大好きでよく聴いていますが、この協奏曲はうかつにも見落としていました。

高木凜々子さんは、アーティスティック・パートナーとして楽団員のひとり。それだけに、オーケストラとはフィーリングがぴったり。息の合った音楽の起伏やダイナミックスのバランスがとても良くて聴き映えがします。第三楽章のコラールから大団円のコーダにかけての技巧の限りを尽くした部分は、まるでモーグルの目眩くターンの連続のよう。ここを駆け抜けた高木さんは快心の笑み。

深く腰を折っての答礼が印象的――何て爽やかで柔らかい身のこなしでしょうか。弾ききったという満足にはち切れんばかりに満面に笑みを浮かべて、とってもチャーミング。

164.jpg

どんどんと国籍不明化していく東京のトップオーケストラですが、このパシフィックフィルハーモニア東京は、この大都会の懐の深さを感じさせて、親近感あふれるシンフォニーコンサートでした。




高木凜々子.jpg

パシフィックフィルハーモニア東京
第164回定期演奏会
飯盛範親X高木凜々子が魅せる
フランス音楽の神髄
2024年4月13日(土)14:00
東京・池袋 東京芸術劇場コンサートホール
(1階D列30番)

指揮:飯森範親
ヴァイオリン:髙木凜々子

ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
ドビュッシー/交響詩「海」

サン = サーンス/ヴァイオリン協奏曲第3番 ロ短調 作品61
(アンコール)
バッハ:無伴ヴァイオリン・パルティータ第3番より Ⅶ. ジーグ
ラヴェル/ラ・ヴァルス

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽