SSブログ

若いクァルテット、シューベルトに挑戦する(プロジェクトQトライアルコンサート) [コンサート]

プロジェクトQというのは、若いクァルテットの発掘と育成を目的としたクァルテット振興運動。

トップオーケストラのメンバーも、どんどんと積極的に室内楽アンサンブルに参画するようになりました。副業奨励の働き方改革の先鞭をつけるような音楽界の動きでしたが、ウィーン・フィルなどは古くからそういう仕組みがあって、室内楽でアンサンブルを磨き音楽性を高められると、むしろ奨励されてきたこと。ついにその潮流は若いひとたちの育成現場にも及んできたというわけです。

IMG_0552_1.JPG

参加する若いクァルテットは、「マスタークラス」を受講し、本公演の1か月前に「トライアル・コンサート」を経験した上で「本公演」に臨むという3つのプログラムを通し、約半年間で1つの作品に向き合う。私たちは、そのひとつひとつに聴衆として、つぶさに接することができるという仕組み。

IMG_0534_1.JPG

会場は、東京音楽大学の中目黒・代官山キャンパス。池袋キャンパスは、何度かマスタークラスなどに出かけていますが、こちらは初めて。池袋と同じようにとてもモダンな建物で建築関係の賞ももらっている。

IMG_0539_1.JPG

音楽ホールも、池袋に負けず素晴らしいホール。どちらも街中の音楽ホールもたじたじといった本格的なものですが、こちらは木組みのデザインがアイキャッチの素敵な内装。見るからに音は良さそう。座ったとたんに音楽に集中できる――そういうクリーンな響きのホールです。

1組目のクァルテット・テネラメンテは、若いシューベルトの第9番。

古典美のなかにロマンチックな情感の新鮮極まりない萌芽を見せるト短調のクァルテット。とても真摯な取り組みで繊細。しっかりとした構成美はとても安定しています。古典形式にしきりに現れる、繰り返しや回帰、回顧のシーンでもたらされる心理的な効果をどう追求するかが課題なのかもしれません。

2組目のクァルテット・アンジェリカは、定番中の定番「死と乙女」に挑戦。

アンサンブルが見事。第一ヴァイオリンの遠藤望名さんがちょっとハンパない。彼女をリーダーに、他の3人は2連、3連となって寄り添い、時に対峙して絡みつく。ヴィオラの細田菜々美さんもかっこいい。大学生・高校生の混交アンサンブルとは思えないレベルの高さで、シューベルトのリリシズムを歌い上げる。

IMG_0543_1.JPG

ちょっと気になったのは、椅子の配置。

両グループとも共通の椅子で、あらかじめステージにバミってあるようで定位置なのですが、演奏前に微妙に位置取りを調整するので、少し違ってきます。

ただ、共通で気になるのは、チェロがまったく横を向いてしまうこと。

写真を撮れないので、イメージを図にしてみました。

クァルテット・テネラメンテ.jpg

クァルテット・テネラメンテは、中央の第二ヴァイオリンとヴィオラは正面を向き、両脇の第一ヴァイオリンとチェロを相対する。四角四面の配置ですが、ヴァイオリンはまだしもチェロの面が完全に横を向いてしまう。

クァルテット・アンジェリカ.jpg

クァルテット・アンジェリカは、さらに中央の二人がやや左の第一ヴァイオリンに寄っていて、しかもわずかにそちらを向く。右のチェロがやや取り残される格好ですが、チェロがさらにヴァイオリン側を向くので真横以上に内側向きになってしまいます。

音響面でもヴィジュアルな面でも好ましいとは思えません。特に「死と乙女」では、チェロが活躍する場面が多いので、ここは配慮してほしいところです。

こういうステージでの位置取りとか、ホール音響の確認などは、こうした演奏チャンスがなければ実感できることは少ない。マスタークラスから試演まで一貫した本格指導を受けられるのはすごいことなので、3月3日の本番までの仕上げが楽しみです。


flyer_1_1.jpg

プロジェクトQ・第21章
若いクァルテット、シューベルトに挑戦する
トライアル・コンサート 〈第1日〉
2024年2月10日(土)15:00
東京・中目黒 東京音楽大学 中目黒・代官山キャンパス TCMホール

クァルテット・テネラメンテ
[米岡結姫/佐久間基就(Vn)島 英恵(Va)金 叙賢(Vc)]

シューベルト:弦楽四重奏曲第9番ト短調 D.173


クァルテット・アンジェリカ
[遠藤望名/渡邉響子(Vn)細田菜々美(Va)森 朝美(Vc)]

シューベルト:弦楽四重奏曲第14番ニ短調 D.810「死と乙女」

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。