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モダンとピリオドの美麗な出会い (吉井瑞穂&川口成彦) [コンサート]

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何とモダンのオーボエと、ピリオドのフォルテピアノの組み合わせというエープリルフールのような話し。

吉井さんのオーボエはたぶんYAMAHA。川口さんのフォルテピアノは18世紀末のレプリカだけれど、A=442Hzにも調弦できるということで、このデュオリサイタルが実現できたとのこと。

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吉井さんが、古楽器と共演するというのを聴いたのはこれが初めてではないですし、フルートやオーボエのモダンと古楽器の合奏ということは、チェンバロなどの古楽器が珍しくなくなった今日、決して希ではありません。でもフォルテピアノとのデュオ・リサイタルというのは聴いたことがありません。

最初の、バッハ親子こそチェンバロでの演奏でしたが、通奏低音を欠いたチェンバロとのアンサンブルは、ある意味ではちょっとエキゾチックな響きに感じました。

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その後は、すべてフォルテピアノ。これが素晴らしかった。

吉井さんのオーボエの音色が冴え渡る。コンクリート打ちっぱなしの小ホールは、やや冷たいドライな響き。それが、いざオーボエになるとかえって音が曇らず実に艶やかで延びのある艶やかな歌を聴かせてくれます。フォルテピアノとの音量バランスはどうなのかまったく未知でしたが、実にしっくりとくる。川口さんのタッチは思い切り繊細で、そのかそけきピアニッシモは本当に幻想の精霊のささやき。思い切って堂々と響かせると、そのダイナミックスの広さに驚きます。その音量の幅が、すべてオーボエとマッチするのが驚き。

吉井さんは、フォルテピアノは「オーガニック」、だから聴いていても疲れない、自然と耳が聴きに行くからアンサンブルが楽しい…というような主旨を言っていますが、それは聴き手も同じ。

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プログラムの大半は、すべてが初聴きの作曲家ばかり。モーツァルトやベートーヴェンと同時代の曲は、やっぱりフォルテピアノが似合う。ドヴィエンヌもヴィダーケアもパリの作曲家。やっぱり木管楽器はフランス。その伸びやかで小粋な歌にフランスの古典時代の典雅さも加わる。ふたりとも管楽器奏者でもあったとのことで、吉井さんのうれしそうなこと。もちろんもっとうれしいのは聴いているほうです。

ブラスコ・デ・ネブラはカタルーニャ生まれ。スペインで初めて初めて出版譜に「ピアノのために= para fuerte-piano」と明記したそうで、スペイン音楽オタクの川口さんはちゃっかりここでフォルテピアノの独奏。その前後に、ちゃんと吉井さんにご馳走しています。プラというリスボンで活躍したオーボエ奏者でもあった作曲家のオーボエ・ソナタ。最後は、パリで活躍したヴィダーケア。その代表作がこのヴァイオリンまたはオーボエとピアノのための二重奏曲集ということなんだそうです。とにかく、相手がいないことには実現できないレパートリー。吉井さんも川口さんも実に嬉しそう。聴いているこちらも、初めて聴くこの曲には何とも言えない幸福感でいっぱい。アンコールもヴィダーケアで、吉井さんの「もし会場に同業者の方がいたらぜひレパートリーに」というトークに会場は爆笑でした。

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二人の朗らかな笑顔が素敵。こんなハッピーなデュオ・リサイタルは前代未聞。


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東京・春・音楽祭2024
吉井瑞穂(オーボエ)&川口成彦(フォルテピアノ/チェンバロ)
2024年4月1日(月)19:00
東京・上野 東京文化会館小ホール
(H列33番)

オーボエ:モダン(A=442Hz)
フォルテピアノ:ルイ・デュルケン(1790年頃)のレプリカ


J.S.バッハ:フルートとオブリガート・チェンバロのためのソナタ 変ホ長調 BWV1031
C.P.E.バッハ:オーボエ・ソナタ ト短調 Wq.135
F.ドヴィエンヌ:オーボエと通奏低音のためのソナタ ニ短調 op.71 No.2
J.B.プラ:オーボエ・ソナタ 変ロ長調
M.ブラスコ・デ・ネブラ:ソナタ ホ短調 op.1-6
J.ヴィダーケア:ソナタ 第1番 ホ短調

(アンコール曲)
ヴィダーケア:デュオ・ソナタ 第3番 第2楽章
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