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春の祭典 (新国立劇場バレエ団) [コンサート]

久しぶりに新国立劇場のバレエに足を運んだ。

バレエというよりダンスということで、いずれもモダンな振り付けによる創作ダンス。

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第2部の「春の祭典」が面白かった。

一貫して男女のデュオによって踊られる。原作やベジャール版のような生贄の乙女と原始的祝祭と儀典の群舞ということではなく、男女ふたりの肉体の絡みあう造形の妙味とそこから引き出される融合のエネルギーと愛の変転のドラマを雄弁に表現するというもの。

4手のピアノ連弾は、無駄がそぎ落とされて打楽器的なリズムが強調されていて、デュオダンスによりふさわしいシンプルでダイナミックな音楽になっていた。

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舞台はとてもシンプル。ステージの平面が最大限に使用されて、後方に2台のピアノが向かい合って配置される。最後の悲劇的な結末を暗示する仕掛けが秀逸だった。

この日のダンサーは、ファースト・ソリストの池田理沙子とゲストの中川賢。ふたりとも清新さにあふれていて演技もフレッシュ。複雑な肉体の立体的な造形も見事で難しい体型も安定して決めていた。

ピアノは、若手とベテランの組み合わせ。個人的には、以前にリスト編ベートーヴェン交響曲のシリーズですっかり虜にされた後藤泉がお目当てだったが、ぴったりと息の合った連弾でこの曲の変拍子と打撃的なリズムの饗宴を大いに楽しんだ。それぞれがPAで補強されていたようだ。舞台上の形状から、ラインアレイスピーカーとサブウーファーを組み合わせたYAMAHAのDXL1Kのように見えたが詳細はわからない。舞台最奥なので音量に不足感が否めず、せっかくPAを使うのならもっと厚めに補強してほしかった。

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第1部は、ドビュッシーの「牧神の午後」に振り付けたもの。「春の祭典」とともに初演時のニジンスキーのスキャンダラスな振り付けのエピソードが想起されるが、男性ダンサーだけによる群舞で、いたって平凡で退屈した。恐らく立体的な組み合わせで新奇な造形を狙うという点で第一部の「春の祭典」の二番煎じなのだろうが、ストーリー性に乏しく退屈した。

音響も、純然たるPAによるもので第2部との対比比較で期待したが、新作の序部導入の音楽もドビュッシーも単純な音響構成に終始していた。映画やディスコの音響のめざましい効果をなぜ取り入れないのだろう。最近では音量面はもちろん多チャンネルに効果や、生音からは得にくいPAならではの音響効果が可能になっているはず。二十世紀以前の作曲家の作品をただ録音で流すだけではだめだ。ダンスのクリエイティビティを高めるような音響プロデュースの才能を発掘し参画させることが、こうしたモダンダンスの魅力には必須なのではないか。


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新国立劇場バレエ団
春の祭典
2022年11月26日(土)14:00
東京・初台 新国立劇場中劇場
(1階15列20番)

第1部『半獣神の午後』
【演出・振付】平山素子
【音楽】クロード・ドビュッシー、笠松泰洋
【照明デザイン】森 規幸

福田圭吾
渡邊峻郁、木下嘉人
宇賀大将、小野寺 雄、福田紘也
石山 蓮、太田寛仁、小川尚宏、上中佑樹、菊岡優舞、樋口 響、
山田悠貴、渡邊拓朗、渡部義紀



第2部『春の祭典』40分)
【演出・振付・美術原案】平山素子
【共同振付】柳本雅寛
【音楽】イーゴリ・ストラヴィンスキー
【照明デザイン】小笠原 純
【美術作品協力】渡辺晃一(作品《On An Earth》より)

池田理沙子、中川 賢(ゲストダンサー)

【演奏(2台ピアノ連弾)】後藤 泉、松木詩奈
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