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「想い出をたどって」 (南紫音-名曲リサイタル・サロン) [コンサート]

南紫音さんは大好きなヴァイオリニスト。

だから、いろいろな想い出がつまっています。そしてその想い出がどんどんと連鎖していきます。

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何と言ってもあの東北大地震の直後に最初に聴いたコンサートが南紫音さんでした。震災の年の1月にトッパンホールで初めて聴いて、すっかり魅せられてしまったのです。もう一度聴きたくて、その機会を探していて見つけたのが、町田市の私的な小さなサロンコンサート。さっそく予約を申し込んだのですが、それが震災の翌々日の予定。

当日、半信半疑で出かけました。まだ東北の被災状況など実感の乏しい時でした。むしろ、相次いでコンサートが中止となるのはこの直後からでした。こういう状況だからこそ音楽を聴きたい。音楽は心のインフラなんだ…そう思いました。それだけに、紫音さんのヴァイオリンをその後もずっと心に響き続けたのです。

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紫音さんの追っかけがきっかけになった、その町田市のサロンは、その後もずっと通い続けました。脱サラのご夫婦が経営する小さなサロンに名だたる演奏家が来ていることすら驚きでしたし、経済的なことも考えるとこれだけ続けておられることは奇跡とすら思えました。そのサロンも、きりがないと思えるほどの想い出が積み重ねられましたが、昨年末をもってクローズとなりました。ご高齢のオーナーのご苦労を思うと、よくぞこれまで続けていただけたと感謝の気持ちでいっぱいです。

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その紫音さんのヴィエニャフスキがいきなり凄かった。

私たちになじみのロシア民謡「赤いサラファン」のメロディを元にした変奏曲。そのメロディがピアノの強奏で導入されるけど、主題の提示はそれだけ。ヴァイオリンはいきなり技巧的なカデンツァになる。

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初めは紫音さんにしては音量が不足と感じました。大シンフォニーホールでしかも午前中。座席も前列よりとはいえややヴァイオリンソロには不利な右手側。けれども、パッション全開の演奏にどんどんと引き込まれてしまい、そんなことはどうでもよくなってしまいます。そういうことが生音のパワー。フラジオレットを多用した技巧的な変奏が実に見事。情熱的な演奏の熱量に聴いているほうの頭もかぁーっと燃えてきます。昼前からこんな凄い演奏を聴いちゃっていいのだろうかと思ったほどです。

演奏を終えた清水和音さんもため息交じりに、「この曲を演奏するのは初めてだそうですね。皆さん、信じられます?」確かに、デビュー間もない頃は、ドビュッシーとかバルトーク、技巧誇示的な曲といってもイザイの無伴奏とか硬派のものばかりというイメージでした。ヴィエニャフスキをこれほど自家薬籠中の物という風にパッションで聴衆をあおり立てるということには意表をつかれた思いさえしました。

このヴィエニャフスキは、実は、私にとってもなじみの曲。繰り返し聴いているのは、諏訪内晶子さんのメジャーデビュー間もない頃のCD。

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諏訪内さんは、私がNYに赴任して間もない頃、空港ゲート出口で出くわしたことがあります。追って渡米してきた家族を出迎えに行ったのですが、先に現れたのが諏訪内さん。家族と同じ飛行機に乗っての留学渡米でした。メジャーレーベルにデビューしたのは、ずっと後のこと。あの時はまだ二十歳前で、小柄なお嬢さんという風でした。CDは発売後すぐに購入しましたが、音の良さに気づいたのは、これまたずっと後のこと。導入冒頭のピアノの強奏、カデンツァの重音、変奏の技巧的なアルペジオとフラジオレットなどオーディオ的なチェックポイントが満載で、オーディオ用のレファレンス・トラックになっているので全曲が頭に染み込んでいます。

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メインは、チャイコフスキーの大曲であるピアノ・トリオ。

このアンサンブルには、カルテット・アマービレでおなじみの笹沼 樹さん。笹沼さんは、このシリーズには確か二度目の登場。注目若手の筆頭ともいうべき笹沼さんが参加というのはうれしい限り。このチャイコフスキーもこれまたお二人にとって初めての挑戦というのですから意外です。こんな大作を、濃密極まりない情感豊かなアンサンブルで聴けるということだけでも特別。

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私の愛聴盤は、古いモノラルのLPレコード。ルービンシュタイン、ハイフェッツ、ピアティゴルスキーという、いわゆる「百万ドル・トリオ」ですが、それに優るとも劣らない充実した演奏に大感激。

1時間ほどのブランチコンサートなのですが、昼前からフルコースのディナーをたっぷりといただいたような気分でした。また、ひとつ、想い出が増えました。


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芸劇ブランチコンサート
清水和音の名曲ラウンジ
第41回「想い出をたどって」
2023年4月19日(水) 11:00~
東京・池袋 東京芸術劇場コンサートホール
(1階E列28番)


ヴィエニャフスキ:モスクワの思い出 op.6
南紫音(Vn) 清水 和音(Pf)
チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲イ短調 op.50
「偉大な芸術家の思い出」
南紫音(Vn)笹沼 樹(Vc)清水 和音(Pf)
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