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マッチョでヴィヴィッドにしてしかもデリケート(メストレ・ハープ・リサイタル) [コンサート]

メストレを聴くのは、ほんとうに久しぶり。

なので楽しみにしていたのですが、事情があって遅参。後半だけの観賞ということになりました。だから、「アルハンブラの思い出」が聴けなかったのは残念。メストレ自身の編曲だったようです。

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調律を終えて、舞台上に戻ってきたハープを見ると、白木のとてもシンプルな楽器です。見かけは少しも名器らしくもなく、ちょっとあっけない印象です。モダンハープの名器というと、意外にもアメリカ製で、しかも中西部の大都市シカゴにあるライオン&ヒーリー社製が圧倒的に多いのですが、この楽器はどこのものでしょうか。

後半の最初はグラナドス。

序奏に続けて様々なキャラクターのワルツを7曲並べて演奏されます。どれも1~2分と短く、あっという間。もともとピアノのために作曲された曲ですが、ハープで演奏されるとその細やかなテンペラメントがとても多彩に響く。短いことで、その多彩な色彩や感情の変化が引き立ちます。ほんとうに繊細。そのロマンチックな味わいも格別で、最後にまた最初のワルツが戻ってきての終結には鮮やかな余韻が残りました。

二曲目は、やはり、ドビュッシー。

《アラベスク》は、やはり、もともとはピアノ曲。それでも細やかな意匠のアルペジオとエキゾチックな色彩、優雅な旋律線は、まるでハープのために作曲された曲であるかのようです。ハープ特有のグリッサンド風のアルペジオではなく、ものすごく指先の仕事量が多いので演奏はとても大変そうなのですが、メストレは実に優雅に弾いてしまいます。

気がつくとメストレは筋肉むちむち。二の腕なんか、まるで大谷翔平君みたい。ハープは女性的な楽器と思われがちですが、このドビュッシーなんかを聴くと相当に肉体的にも鍛えていないとこれだけの技巧が引き締まって響かないのかもしれません。

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やはり圧巻だったのは、掉尾を飾ったルニエの《伝説》。

アンリエット・ルニエは、20世紀初頭フランスの女流ハーピスト。いかにもハープらしい優美で叙情味にあふれた曲。しかも、いかにもハープ奏者ならではの独創的な奏法の技巧が凝らされていて、それをメストレは、さりげない優美さで力強く鮮やかに弾いてみせて、もう聴いているうちに指先から目が離せなくなるくらいにわくわくしてしまいました。

マッチョなイケメン、繊細にして色彩の細かい粒立ちが鮮やかというのがメストレの真骨頂。まさに、そういうメストレにふさわしい演奏でした。



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グザヴィエ・ドゥ・メストレ ハープ・リサイタル
2023年4月27日(木) 19:00
東京・四ッ谷 紀尾井ホール
(1階11列13番)

グザヴィエ・ドゥ・メストレ(Hp)

E.グラナドス:詩的なワルツ集(序奏と7曲)
C.ドビュッシー:2つのアラベスクより アラベスク第1番ホ長調
H.ルニエ:伝説

(アンコール)
ゴドフロワ:ヴェニスの謝肉祭op.184
ドビュッシー:ベルガマスク組曲より「月の光」

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