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1800年ブルク劇場 (石上真由子/アンサンブル・アモイベ) [コンサート]

ヴァイオリニスト石上真由子さんが主宰するアンサンブル・アモイベの演奏会。

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石上さんの名前を知ったのはつい最近のこと。京都を拠点に活動しておられるようで、東京では縁が無いのかなと思いつつググッてみると何とトッパンホールでのアンサンブルコンサートがある。それでさっそく予約してみたというのが今回の出会いとなりました。

全席自由席。――その割にチケット代はまとも。予約はネットで、QRコードのチケットレス。今風の手作り感満載のコンサートマネジメント。

自由席というのは、メリット/デメリット両面あるが、メリットは何と言っても自由人の優位性を活かして良い席がゲットできること。1時間前の開場時間以前に列に並んで、前方の中央席をゲットしました。蛇足ながら、久々にトッパンホールの音の良さを満喫。こういう中小規模のホールでは、平面で天井との距離が保てる前方席と傾斜が始まる後方席とでは雲泥の差があります。トッパンホールは、良いホールですが、音響と視界の良い範囲が小さすぎる恨みがあります。

プログラムは、いたってシンプル。

ベートーヴェン・オンリー。しかも、あの七重奏曲とその編成に合わせた編曲版の同交響曲第一番のみというもの。七重奏曲とハ長調交響曲は、ともに作曲者初期の傑作で、1800年、ウィーンのブルク劇場のアカデミーで初演されました。現在のブルク劇場は、演劇用の劇場として移設されたもの、しかも第二次大戦で破壊、戦後に再建されたもので、まったくの別物というのは、音楽評論家・奥田佳道さんのプレトークで初めて知りました。

前半の交響曲第一番。個人的には高校時代のオーケストラで散々練習したので、ベートーヴェンの交響曲のなかではいちばん愛着のある曲。編曲が巧みでまったく違和感がなくて、実に闊達な演奏、個人技の巧みさが大炸裂でした。何しろメンバーは、いずれも一級のソリスト、トップオーケストラの首席クラスの達人ぞろいです。

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後半のアンコールでの石上さんのヴァイオリンの妙技にも感服。後半に演奏される七重奏曲のテーマによる即興曲のそのまた即興的演奏ということだそうで、石上さん自身の委嘱による新作。フラジオレットへの飛躍など細かいことを言えば多少の疵も耳につくのですが、音楽の流れとか躍動が聴いていてワクワクするほど素晴らしい。

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後半の七重奏曲が、これまた素晴らしかった。

実演はあるようでないような曲。その昔、FM放送のクラシック番組のエンディングテーマで耳なじみになり、よく聴いてきた曲ですが、レコード、CDとなるとバリリらウィーン・フィルメンバーの古いモノラル盤しか持っていません。初演当時に大人気の曲となり、この曲ばかりがもてはやされるので、かえってベートーヴェンが嫌がったというエピソードも、今回、実演を聴いて納得です。スリリングで粋なエスプリが効いていて、こんなにベートーヴェンが楽しいとは!と大発見でもしたような気分です。作曲技法も練達で、これを聴くと前半の交響曲は編曲版だけにちょっとバタバタしているところもあったなぁと思うほど。

中央で大活躍のコントラバスの幣 隆太朗さんは初めて。その縦横無尽ぶりにはたまげました。SWRシュトゥットガルト放送交響楽団の首席として活躍されているのだとか。ドイツ公共放送局オーケストラというと、すぐに河原泰則のお顔が目に浮かびます。シュトゥットガルトとケルンの違いとはいえ、こんな素晴らしい後継者がいたのですね。

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翌日の京都公演は、台風のために中止。新幹線に飛び乗る予定だった石上さんのトークはとてもつらそうで、会場全体もちょっとうるうる。でも、そのおかげをいただいて時間の余裕ができて、モーツァルトのジュピター交響曲まで聴かせてもらった東京の聴衆の僥倖はこの上ないものとなりました。



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Ensemble Amoibe vol.60
- ベートーヴェン 七重奏曲 -
2023年8月14日(月) 19:00
東京・文京区 トッパンホール

石上 真由子(ヴァイオリン)
篠﨑 友美(ヴィオラ)
上村 文乃(チェロ)
幣 隆太朗(コントラバス)
アレッサンドロ・ベヴェラリ(クラリネット)
長 哲也(ファゴット)
福川 伸陽(ホルン)

ベートーヴェン:
交響曲 第1番 ハ長調 作品21 (七重奏編成版 [編曲:内門卓也])

七重奏曲 変ホ長調 作品20

(アンコール)
モーツァルト:交響曲第41番ハ長調「ジュピター」より 第一楽章

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