SSブログ

トリオ・アコード (浜離宮ランチタイムコンサート) [コンサート]

東京芸大在学中の2003年に、同級生3人で結成されたピアノ・トリオ。各自それぞれが自分の道を歩み、それぞれが確かな地歩を得た。

ヴァイオリンの白井圭は、昨年、N響のゲスト・コンサートマスターに就任。
チェロの門脇大樹は、神奈川フィルの首席奏者。
ピアノの津田裕也は、多くの演奏家から厚い信頼を得て共演を重ね、室内楽でも活躍。

トリオ・アコード.jpg

それぞれがそれぞれに多忙を極めるなか、同級の仲間が再びトリオとしての活動を再開する。今やそのメンバーひとりひとりの顔に確固たるアイデンティティがある。そういうアンサンブルが、トリオ・アコード。

ベートーヴェンの「幽霊」は、「大公」ほどには聴かない曲だが、聴いてみると確かにベートーヴェンらしさがある。ニックネームのもととなった第2楽章の幽玄な世界は、傑作の森の時代の佳作というよりは、むしろ後期の作風を先取りしたかのよう。

武満の「ビトゥイーン・タイズ」は、その幽玄さの延長にあって、拍節感というよりは、むしろ緩慢で大きな起伏をともなう浜辺に寄せる波のリズムを感じさせる。そういう波動を繰り返すうちに次第に潮が満ちて、足元を静かに濡らす。そこにこのトリオの世界観のようなものを感じました。

休憩をはさんでのメンデルスゾーン。

個人的にはメンデルスゾーンの曲のなかで一番好き。ピアノ・トリオだけれども、聴いていてもピアノ・トリオとは感じさせないほどの音楽としての躍動がある。どこまでも明朗で湧き上がるような幸福感にあふれていて、しかも、古典派とは完全に画するようにロマンチック。軽やかで弾むようなスケルツォを経て、最後は情熱がほとばしるようなフィナーレ。その熱い高揚感に、会場からは大拍手でした。

ピアノ・トリオというのは、日本のクラシック音楽シーンではまだまだ得がたい存在。常設として活動を継続するのは難しい。在学中からの活動という原点を共有し、互いに気心も知るトップ奏者のアンサンブルとして、レパートリーをどんどん増やして活躍を続けてほしい。切にそう願いました。


flyer.jpg

浜離宮ランチタイムコンサートvol.207
トリオ・アコード
2021年10月28日(木) 11:30~
東京・築地 浜離宮朝日ホール
(1階15列16番)

トリオ・アコード
白井圭 (ヴァイオリン)
門脇大樹 (チェロ)
津田裕也 (ピアノ)

ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第5番 ニ長調 Op.70-1「幽霊」
武満徹:ビトゥイーン・タイズ

メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番 ニ短調 Op.49

(アンコール)
メンデルスゾーン:歌の翼に

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽