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春のフェスティバル室内オーケストラ (東京春祭チェンバー・オーケストラ) [コンサート]

楽しかった。

室内オーケストラというのは、いちばん春祭りにふさわしい。臨時編成だけれども、堀 正文さん、青木尚佳さんのツートップ以下、豪華で華やかな顔ぶれ。文化会館小ホールの小さなステージに所狭しと椅子が並べられている。

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最初のグリーグは弦楽器だけの小さめの編成。

これはもうさすがとしか言えないような素敵な演奏。「デンマーク文学の父」とも呼ばれたルズヴィ・ホルベアの生誕100年の記念式典のために曲ですから、それ自体とても祝典的雰囲気があります。ホルベアが生きた啓蒙時代とバロック時代を映し出す擬古典的な様式ですが、弦楽合奏としてはとても凝った近代的な響きがする名曲。本領発揮の魅力的な演奏でした。

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二曲目は、高木綾子さんのソロでモーツァルトの協奏曲。

このために足を運んだみたいなところなので、当然かもしれませんが、これがこの夜の白眉。――とても幸せ。

もう最初のトゥッティからしてうきうきしてしまう。まさにロココの世界。高木さんのフルートは軽やかで伸びやか。音階を風のように駆け巡り、跳躍し、とても自由闊達。第2楽章のアンダンテはゆっくりとしていてフルートは春風に吹かれて気持ちよく歌う春鳥のよう。わずかに憂いを含んだような美音と、高木さんのブレスを何度も耳にすると何だか切なくなってしまいます。

カデンツァがとても見事でした。深い響きを含みながらこぼれ落ちる中低音のスケールやアルペジオの跳躍、そして、高い高域のロングトーンの何と伸びやかなこと。高木さんは、こうやってオーケストラの面々と並ぶととても小柄なのですが、ソリストとして楽器を構えて前に立つととてもスケールが大きい。

終楽章の、軽快で舞踏的なアレグロ。繰り返しのなかで忽然と現れる短いカデンツァがここでも魅力的。春の花がそこかしこに咲き乱れる緑の庭園で遊ぶ小公女のよう。とても素敵なモーツァルトでした。


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休憩を挟んでフィナーレはモーツァルトのジュピター交響曲。

これはもうお祭り。

やっぱり指揮者無しで、これだけの規模の曲となると、たとえ古典派時代のモーツァルトといえども難しい。いや、モーツァルトだけに難しいのかも知れません。モーツァルトをなめるなよとちょっと言いたい気もしましたが、みんな楽しそう。これもまたフェスティバル・オーケストラの醍醐味。何よりも演奏者みんながわいわいガヤガヤ楽しそうで、互いに本音で遠慮がない。ガールズトークのようなジュピターもまた楽しからずや…というところでした。

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東京・春・音楽祭2024
東京春祭チェンバー・オーケストラ
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2024年3月26日(火)19:00
東京・上野 東京文化会館 小ホール
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東京春祭チェンバー・オーケストラ
 ヴァイオリン:堀 正文、青木尚佳、荒井章乃、枝並千花、北田千尋、
        城戸かれん、武田桃子、戸原 直、外園萌香、水野琴音
 ヴィオラ:佐々木 亮、髙梨瑞紀、柘植藍子
 チェロ:佐藤晴真、河野明敏、藤村俊介
 コントラバス:赤池光治※
 フルート:高木綾子
 オーボエ:古部賢一、沖 響子
 ファゴット:水谷上総、佐藤由起
 ホルン:日橋辰朗、山岸リオ
 トランペット:佐藤友紀、尹 千浩
 ティンパニ:清水 太

グリーグ:組曲 《ホルベアの時代より》 op.40]
モーツァルト:
 フルート協奏曲 第2番 ニ長調 K.314(Fl:高木綾子)
 交響曲 第41番 ハ長調 K.551 《ジュピター》

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