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ミラノ・スカラ座をしゃぶり尽くす その1 [海外音楽旅行]

ヨーロッパ音楽三昧の旅、今回は、ミラノのスカラ座をしゃぶり尽くす一週間ほどの旅です。

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イタリアというのは、言うまでもなくオペラ文化の国。だからイタリア各都市には歌劇場があっていずれもハイレベル。なかでもここミラノのスカラ座(Teatro alla Scala)は、宮廷劇場の伝統をひくイタリア・オペラ最高峰の歌劇場。

その反面、コンサートホールが見当たらず、これはというオーケストラもありません。いわゆるオーケストラ・ランキングを見ても、例えば英国グラモフォン誌のベスト20にもイタリアのオーケストラは登場しません。そのイタリアのベストオーケストラは、実のところスカラ座の座付オケであるスカラ座管弦楽団ということになります。その根拠地となるのはオーケストラホールではありません。つまり、スカラ座。

リサイタルホールも見当たりません。ミラノでトップレベルの音楽家がリサイタルを開くとしたら、そのヴェニューは、これまた実はスカラ座ということになります。つまり、何から何までスカラ座というのがイタリア最高の音楽都市ミラノの現実だというわけなのです。

今回の私たちの日程は、ミラノだけ。その5夜は日曜日を除いてすべてスカラ座通いというわけです。いかにもイタリア・グランドオペラというべきヴェルディから新演出のグルック「オルフェウス」、シンフォニー、そしてポリーニのリサイタルまで、歌劇場であってオペラだけではないスカラ座の七変化をすべてしゃぶり尽くす…ということなのです。

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さて…

今年のヨーロッパは大寒波に襲われていて大変な寒さ。

出発前の天候チェックで、ミラノは東京よりも寒いということにいささか驚いてコートのインナーを着けたりと準備はそれなりにしていきましたが、現地はその予想をも上回る寒さでした。

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到着当日は、さっそく冷たい小雨模様の寒夜。暗い夜道をスーツケースと傘で両手をふさがれてのホテル探しはいささかうんざり。ロンドンからのトランジットで着いた空港は、国際空港のマルペンサ空港ではなくて、ローカル空港に毛も生えていないようなリナーテ空港。都心には近いとはいえバスぐらいしか公共交通しかないので、市バスに乗ってドゥオーモまで1.5ユーロながら30分以上のバスライド。そこからの徒歩はスマホのグーグルマップしか頼るものがなくてさんざんでした。

それでも何とかホテルにたどり着き、さっそく、スカラ座周辺を探索。

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宿は、ちょっと裏道に入った小体なホテル。都心にあって値段もそこそこなのでビジネス客も多く、折からミラノはファッションウィークでどこのホテルも満室。スカラ座までは意外にも徒歩で10分もかからないほどの近さ。ラッキーでした。

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近くのガレリアで食事。

ガレリア・ヴィットーリオ・エマヌエーレⅡ世は、1867年イタリア統一を記念して建設されたというアーケード街。十字形をした豪壮なショッピングアーケードで、高級ブランドのブティックやレストラン、カフェ、バールが軒を並べています。

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イタリアの楽しみは、何と言っても食事です。けれども音楽優先の私たちの旅は、夜が音楽会なのであまり食事はゆっくり楽しめません。到着の日はコンサートがないので、ガレリアの店なら間違いないだろうと目にとまったレストランにさっそく飛び込んでしまいました。観光客であふれる店内は、8時前なのにけっこう混雑していましたが、「コンバンワ」と愛想良く迎えられ、食事も最高でした。

翌朝は、市内観光。

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午前中の早い時間から向かったのは、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会。レオナルド・ダ・ビンチの傑作『最後の晩餐』がある教会です。こんな時間に出かけたのは事前の予約があったからです。教会の食堂の壁に描かれた巨大なテンペラ画で、剥離などの経年劣化が激しく何度も修復が行われてきました。

30年前に私たちが訪れたときは、1977年から始まった大修復の真っ最中で、壁画のほとんどが足場で覆われその合間からようやく一部分を覗き込むという状態。反面、出入りは驚くほど簡単で管理はずさんでした。今は、宇宙船か地下の秘密工場よろしく複数の扉が外気と謝絶し、観光も厳格な人数制限のもとに完全予約制となっています。事前にネットで予約し見学料も払い込んでいますから、予約時間の遅くとも10分前には現地での登録を済ませる必要があります。まだ土地勘のない街角で、地下鉄の駅員にたずねたりして早足でやっと時間までにたどり着きました。

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時間は30分と限られていますが、人数制限されているので、かえって、ゆっくりと心ゆくまで鑑賞できるのはありがたい。写真もOKということです。30年前の記憶からすれば、よくもここまで修復できたものだと感無量の思いで鑑賞しました。

続いて向かったのが、アンブロジアーナ館。

音楽旅行は、夜は音楽、昼は市内や近郷の観光ということで、とても効率的です。国中がローマ遺跡やルネッサンス文化の博物館とも言えるイタリアでも、ミラノはイタリア最大の都市であり商工業・金融の中心ですが、それだけに観光コースとしてはいささか格下に見られがちですが、なかなかどうして見どころがけっこうあります。

アンブロジアーナ館には、17世紀初頭に創設された図書館と併設された絵画館があって、ミラノにもこんな絵があったかとちょっと驚くほどの豊かな所蔵品を見ることができました。まずここに向かったのは、『最後の晩餐』とセットになっていて、ここも予約で時間指定がされていたからです。

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ここにもカラヴァッジョが…ということかもしれませんが、ここの所蔵は『果物籠』という静物画で、その精細でリアルな描写と大胆な構図と意匠にちょっとした衝撃を受けました。

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同じように強い印象を受けたのが、マンテーニャの『死せるキリスト』。足下から亡骸を見上げる大胆な構図に、キリストへの畏怖と深い悲しみとともに作者自身の死への懼れと救済への希求を感じさせて胸を打つのです。

ここにもダ・ビンチの作品があります。『楽師の肖像』の展示はちょっと地味。図書館所蔵の、いわゆる『手稿』の一編があって展示されていましたが、これもやや地味でした。それがかえって、欧米各国に散逸したこの一連の遺品を、生きているあいだに一望にできる機会が訪れないかという思いがそそられるような気持ちがしました。

ミラノ中心のスフォルツァ城も見学。ここには『ロンダニーニのピエタ』があります。

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ミケランジェロが生前最後に手がけた第4のピエタ。視力を失いながらも手探りでノミで削り、最後の床に伏す前日まで制作を続けたと伝えられますが、キリストの顔面はもうこれ以上浮かび上がる表情があるのだろうかと思われるほどに削り取られていて、ほとんどもう遺棄されたような未完成の彫像ですが、それだけにピエタの深い悲しみを感じさせ感動を覚えてしまう不思議な彫像です。

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遅めの昼食は、街角のカフェの2階で軽めのサンドイッチ。ビールを2杯空けながらフォカッチャをかじって、サンドイッチもボリュームはそこそこにあって満腹。

ということで、いよいよスカラ座です。

最初の夜は、ヴェルディ中期の傑作『シモン・ボッカネグラ』。タイトル役は、スカラ座出身の老優レオ・ヌッチ。チョン・ミュンフンがどのような指揮振りなのかが楽しみです。

(続く)
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