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音の良いCD(続編) [オーディオ]

 優秀録音としてよく知られている大植英次/ミネソタ管弦楽団のレスピーギのCD。それがいかに優秀録音なのか、その聴きどころは…というお話しの続き。

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 このCDの魅力は何と言っても、レスピーギの大編成オーケストラの醍醐味が味わえること。音楽としての深みはさほどではないけれど、リムスキー・コルサコフにも師事したオーケストレーションの魔術師レスピーギの面目躍如たるところがあるのが「ローマの松」。

 この録音は、特に、俯瞰するような自然なたたずまいと幅いっぱいの拡がりを持つステージ感が最大の魅力。もちろん、特にその奥行きの距離感を見事にとらえた自然な立体音場ということが、再生のポイントとなる。音のキレとスピードがあり、広大な帯域とダイナミックレンジがあり、同時に弱音も高精細で澄み切った美音で鳴ってくれる。しかし、再生システムのクォリティが試されるのは、そういうハイファイ的な解像度とレンジの広さというよりも、色彩のコントラストと、奥行きの距離感を見事にとらえた自然な立体音場にある。


第1曲「ボルゲーゼ荘の松」(Tr.9)は、喧騒の音楽。
 貴族の庭園の松林で子供達が群れを成して遊んでいる。文字通りおもちゃ箱をひっくり返したような騒ぎ。のっけから、トラアングル、チェレスタ、鉄琴、ピアノなどが騒々しく鳴り響く。曲を通じて低音域は一切現れない。コントラバスは完全休止。チェロは参加するが最高域ばかりで走り回る。冴え冴えと分離して密度高く響き渡るかが聴きどころ。 最高域の再生能力が試される修羅場。システムの位相精度が高くなければ騒々しいだけのお団子になる。

第2曲「カタコンベの松」(Tr.10)は、一転して低弦中心の荘重な響きとなる。
 前述したとおり、騒と静、高域と低域の場面転換のコントラストを強調させるレスピーギの技が冴える。
 ホルンやバスクラリネットが墓場から聞こえる聖歌を象徴し、銅鑼が静かに鳴らされる(1'25")。この逆相成分たっぷりの銅鑼の超低音が第一の聴きどころ。
 続いて、例によってバンダから遠くトランペットが聞こえてくる(2'05")。この距離感が第二のポイント。ここでは表情記号としてわざわざ「できるだけ遠くから」と注記されています。
 聴感上の遠近感は、音量や周波数分布、間接音の多寡、トランジェントの頭などで感知できる。だから遠近感はモノーラルでも感知できる。しかし、音が重なった時のそれぞれの音の層をなす感覚(レイヤー)は位相差が正確に再生されないと出てこない。特に音束が絞られている金管は音が前に出がちなので、「さらにできるだけ遠く」とまで注意書きされた、ここのバンダのトランペットは試金石。何本にも細かくパートを分割した分厚い響きの弦楽器群との距離感が出れば、ここのサウンドの魅力が倍加するだろう。

第3曲「ジャニコロの松」(Tr.10)は、弱音のA管クラリネットの音色が魅力。
 オーケストラの録音で難しいのは楽器による指向性の違いだ。特にクラリネットは、音域によって色合いが変化し指向性も違う。その高音域はむしろ床に向かう。だから床の反射を多く伴うので響きが違うことになる。だからクラリネットは録音泣かせ。このCDは、決してクローズアップせず、配置の自然な距離感を保ちながらクラリネットの高音のふくよかで幻想的な美音を見事にとらえている。ちょうどおぼろ月のように霞のように薄く光る外輪を伴い、なおかつ月本体は透明に輝く。そういう相反する響きと音色が両立するかどうか。それが、システムの試金石となる。

第4曲「アッピア街道の松」(Tr.11)は、この曲のクライマックス。
 霧深い夜明けの街道を進軍してくる古代ローマ軍の幻影。一直線に伸びた街道のはるか遠方から徐々に近づいてきて、それとともに日も明るさを増す。そういう音量と明暗の長大なクレッシェンド。最後は圧倒的な盛り上がりで終わる。
 このトラックは、とてもわかりやすいのでオーディオのデモとしても人気だ。だから、あまり聴きどころとして細かく指摘するものはない。際限なく続くクレッシェンドは重量のある軍団のクローズアップであり、同時に霧が次第に晴れていくように音数がどんどんと膨張する。音量の増大に埋もれず分解能を上げ続けるのはシステムにとっての試練だが、同時にそれはリスナーの耳にとっても試練になる。そういうクレッシェンドの快感が最後の最後までまで続くかどうか。
 この第4曲になって、パイプオルガンが登場する。《オルガン付》といえば、サン・サーンスの交響曲とかシュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」、あるいは、バルトークの「青髯公の城」などがよく知られる。「ツァラ…」はやや地味かもしれないが、いずれもオルガンの存在は明快。
 しかし、この曲でのオルガンは、ほぼ一貫して低域と進軍のリズムを刻むだけなので、オーケストラの全奏に埋もれてほとんど聞こえない。最初の登場は、何とペダルのみ。そこでは、8フィート、16フィート、32フィートと最低音域のストップ(音栓)が指定されている。…が、拙宅の小型2wayでは、正直言って聞こえない。
 そのオルガンの登場は、2'22"のところだが、皆さんのシステムではいかがだろうか。さらに、ペダルだけでなく両手鍵盤も参加し出すのが、3'30"。ここのところも聞こえるかどうか。
 低音自慢の方はチャレンジしてみていただきたい。
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