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ちょいワルの美しきヴァイオリン 石田泰尚 (芸劇 名曲リサイタル・サロン) [コンサート]

池袋・東京芸術劇場の「名曲リサイタル・サロン」も中止や延期が続きました。今回の「第7回」も5月に予定されていたものの振替公演。

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石田泰尚さんは、このところ元気いっぱいで何かと話題の多い神奈川フィルの顔役でもあり、ソリストとしても、あるいは、話題のデュオやユニットや、室内楽アンサンブルのリーダーなど八面六臂の活躍の人気ヴァイオリニスト。

クラシック音楽の世界で活躍する人気の若手…というイメージとはギャップが大きい。

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司会の加羽沢さんからも、その髪型やファッションなど盛んにイジられていた。自ら立ち上げた弦楽アンサブルユニットも「石田組」と名乗り、自らを「組長」と称しているらしい。

ところが、いざ演奏を聴いてみると、とても繊細で優雅。二重のギャップがあります。

キラキラとデコレーションが施された楽器は、どうやらオールドイタリアンらしい。ご本人のがたいのせいかもしれませんが、見た感じは少し小さめ。ここの大ホールは響きがちょっと薄くて必ずしも響きのよい方ではないので、音も決して雄弁にはならないということかもしれません。でも、この楽器の音はとても繊細で品が良い。

クライスラーなどは実に繊細で優雅。音色も暖かみがあって甘味を含んでいる。しかも、フレーズの取り方も素直でアーティキュレーションも甘口の品の良さがあります。ファリャの「スペイン舞曲」なんて、技巧的で身体も大きく動かして演奏するけれども、ピッツィカートの指さばきも軽妙だし、歌い方も柔らかくて節度があって流麗。いかにもクライスラーらしい育ちの良い都会的洗練を感じさせます。

マスネの生クレームとかメレンゲがたっぷりの甘さも、繊細な細さで、とてもうっとりと聴かせてくれます。それとは対照的なブラームスは、ンゴや栗の果実の塊があってもうちょっとガッツリとした聴き応えがありました。

そういった音楽のスタイリッシュなところが外見とはギャップがあるのですが、それは終盤に聴かせてくれたピアソラのタンゴも同じ。もちろん、ステップの踏み音やフィニッシュのキメには、客席も大盛り上がりです。それでも、音楽の中核は、決して、退廃的な濃厚さに行き過ぎずにバランスよく聴かせます。クライスラーやブラームスがウィーンの洗練なら、ピアソラだってブエノスアイレスの都会的洗練なんだと思わせます。

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加羽沢さんが、かなり会話のすき間を埋め尽くしていましたが、この人の口下手で口数の少なさはどうやら演技ではないらしい。そこは見かけ通り硬派なんでしょうね。



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芸劇ブランチコンサート 名曲リサイタル・サロン
第7回「石田泰尚」 ※5月27日振替公演
2020年12月15日(火)11:00~
東京・池袋 東京芸術劇場コンサートホール
(1階 M列23番)

シューベルト/アヴェ・マリア
クライスラー/愛の悲しみ、シンコペーション、テンポ・ディ・メヌエット
ファリャ(クライスラー編)/歌劇「はかなき人生」より スペイン舞曲第1番
マスネ/タイスの瞑想曲
ブラームス/F.A.E.ソナタより スケルツォ
ブラームス/ハンガリー舞曲第6番
ピアソラ/アディオス・ノニーノ、ル・グラン・タンゴ

(アンコール)
シュニトケのタンゴ
ラ・クンパルシータ

ヴァイオリン:石田泰尚
ピアノ:中島剛
ナビゲーター:加羽沢美濃

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