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林悠介リーダーによる室内楽 (読響アンサンブルシリーズ) [コンサート]

林 悠介さんは、21年にコンマスに就任。オーストリア・ドイツから18年ぶりに帰国しての就任で、まだ36歳の若さ。このシリーズには初登場です。

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レーガーは、いかにもドイツ的正統という作曲家。バッハに倣った独奏ヴァイオリン曲とかオルガン曲など、その多作ぶりのわりにはほんの一部しか聴いたことがありません。力作ながら滅多に聴けない弦楽六重奏曲と、ブラームスの二曲だけという、ちょっと身構えてしまいそうな、いかにも硬派なプログラムです。

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前半のブラームスは、言ってみれば、レーガーの前触れ…みたいなものでしょうか。

正直言って、ちょっと退屈しました。日橋辰朗さんの名人芸が聴けるだけでも儲けものみたいなものですが、今ひとつ気持ちが入っていない感じです。林さんも、ピアノの佐藤卓史さんも、自分のことでいっぱいで、ブラームスのホルンはかくあるべしみたいなことが日橋さんに伝えていない…そんな感じ。リハーサルの時間不足でしょうか。それでも曲が進むにつれて音程もそろってきて熱演となったのはさすがでした。

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レーガーというひとは、ドイツ三大Bの継承者を自認していたとか。ドイツ正統音楽とは何ぞやとついつい考えてしまう作曲家です。いささか古風な作風ですが、何とも晦渋・難解、重々しい強面でうっとうしいという印象が強いというところは、いかにも20世紀初頭の作曲家。聴いてみると、ブラームス以後、シェーンベルク以前という感じです。

弦楽六重奏曲というと、シェーンベルクの「浄められた夜」を思い浮かべます。「浄夜」は、1899年に作曲されました。レーガーのこの曲は、晩年の1910年の作品。シェーンベルクの方が先に行ってしまったという印象を持つのは、レーガーが早逝してしまったからでしょう。

この弦楽六重奏曲が大変な熱演でした。

ガッツリと始まる曲頭にまず驚かされます。実にエネルギッシュ。弦楽六重奏の重心の低い分厚い響きとともに、各パートが分散ソロ的にうごめく目眩ましの巧妙さも快感。舞踏的な第二楽章も、中低音の渋い響きにうっかりと耳を傾けているといきなりひっくり返される。第三楽章のベートーヴェン的な祈りの世界。そして終楽章では、それまでの葛藤や闘いから一気に至福の解決へと向かい終結するところは、まさにドイツ正統音楽。

これからは、レーガーをもっともっと聴いてみたい思いました。


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読響アンサンブル・シリーズ
第39回 《林悠介リーダーによる室内楽》
2023年11月8日(水) 19:30~
トッパンホール
(M列 14番)


ブラームス:ホルン三重奏曲 変ホ長調 作品40
 ヴァイオリン=林 悠介
 ホルン=日橋辰朗
 ピアノ=佐藤卓史


レーガー:弦楽六重奏曲 ヘ長調 作品118
 ヴァイオリン=林 悠介(コンサートマスター)、對馬哲男
 ヴィオラ=鈴木康浩、柳瀬省太
 チェロ=遠藤真理、富岡廉太郎
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