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フランスからの風 (セシリア・トリオ 日経ミューズサロン) [コンサート]

いずれもフランスで生まれ育ったり学んだりという三人組。ピアノとフルート、ファゴットという組み合わせも異色のトリオ。

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ピアノの工藤セシリアさんは、お父さんがフルート奏者でフランス生まれ。そのお父さんとは、言わずと知れたあの工藤重典さん。お父さんはパリ音楽院に学び、リール国立管弦楽団の首席奏者として活躍されたが、つまりはそのリールで生まれたというわけ。

パリジェンヌ…というよりは、ちょっと天然の入ったのんびりとした雰囲気で、いかにもお育ちの良いお嬢様という感じ。ドビュッシーを弾いても、どこか柔らかくてはんなりとした可愛らしさが漂います。

フルートの山内豊瑞(やまうちとよみつ)さんは、高知の生まれ。パリ・エコール・ノルマルに学び、フランス国際ジュンヌフルーティストコンクールで第2位に輝いた。ドップラーのハンガリー田園幻想曲では、曲想もそうなのだろうけど、どこか古武士然とした東洋的な瞑想を感じさせる。実は、土佐藩主・山内家の末裔なのだとか。一豊公以来、男児の名には「豊」の字を必ずつけるのだとか。どうりで(笑)。

ファゴットのスタン・ジャックさんは、もちろんフランス人。フランス国立管弦楽団やラムルー・オーケストラなどの首席奏者を歴任。ところが今や活動の拠点は日本なのだそうで、在日10年ということで日本語はちょっとユーモラスな訛りこそあるけれどぺらぺら。

その楽器は、シュライバー。もともとはドイツのブランドだけれど、今はフランスのビュッフェ・クランポンの傘下。今はドイツ式の《ファゴット》が標準で、フランス式の《バソン》奏者は希少となり製造も絶えているそうですが、ジャックさんの音色にはフランスの品格が馥郁と香り、特にテナー音域はとてもよく歌う。グリンカのソナタは初めて聴きましたが、知性の余裕のようなものさえ感じます。

ハイドンのトリオは、もちろん、ピアノとヴァイオリン、チェロによるピアノ三重奏の名曲ですが、木管のむしろ柔らかく軽ろやかな音色が、まるでオリジナルのようにしっくりときます。ここでもジャックさんの軽妙にしてよく歌うファゴットが縦横無尽に活躍していました。

ピアソラは、アルゼンチンタンゴとしては異端とされたと言われますが、こうやって木管中心のアンサンブルで聴くと、上品で静謐かつ知的な情緒を感じさせます。アンコールのシューベルトのセレナードやアヴェ・マリアという名曲は、決して高い技術を必要とするショーケース的な曲ではありませんが、聴いていてとても気持ちが良い。

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会場の日経ホールは、多目的ホールで決して響きのよさで音楽を聴かせるというわけではなく、人声などの中音域を明晰に聴かせる音響だと思っていましたが、この日はとてもアンサンブルにマッチしていると感じました。

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ここの壁面はオーディオファンにはちょっとおなじみの構造をしています。

600人ほどの大きさに加えて、木の森のような壁面が、木管のソノリティによく合うのでしょうか。とても居心地の良いコンサートでした。



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第515回日経ミューズサロン
セシリア・トリオ フランスからの風

2021年10月22日(金)14:00~
東京・大手町 日経ホール
(G列3番)

工藤セシリア(ピアノ)
スタン・ジャック(ファゴット)
山内豊瑞(フルート)

ドビュッシー/映像第1集(ピアノソロ)
ドビュッシー/ベルガマスク組曲 第3曲 月の光(ピアノソロ)
ドップラー/ハンガリー田園幻想曲 作品26(フルート)

グリンカ/ファゴット・ソナタ ト短調(ファゴット)
ハイドン/ピアノ三重奏曲 第25番 ト長調「ジプシー・トリオ」Op.73-2, Hob.XV-25
ピアソラ/オブリヴィオン(トリオ)

(アンコール)
シューベルト セレナーデ
バッハ/グノー アヴェ・マリア

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