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「悩める劇場支配人」 (新国立劇場・オペラ研修所修了公演) [コンサート]

フレッシュで小気味の良い歌唱と演技に、オペラの楽しさで気が晴れ晴れとした思いがしました。

新国立劇場の研修所というのは、プロのオペラ歌手の養成所。音楽大学卒で厳しい選考を経た15人ほどの歌手たちが、3年課程で研修に励むというもの。一年に一度の研修生たちによる修了公演がここのところ楽しみのひとつとなっていましたが、昨年の『フィガロの結婚』は公演直前になってコロナ禍で中止。とても残念に思っていました。今年は、コロナ感染対策を踏まえ、準備万端、満を持しての公演です。

とにかくコロナ禍でどうやって公演を実現するか、演目の選択・企画から智恵を絞ったそうです。

それが何と日本初演!

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チマローザは確かに聴く機会は少ないかもしれませんが、当時は人気のオペラブッファだったそうでそのことに少しも違和感のない楽しいナポリ派のオペラ。楽屋落ちみたいなお話しのドタバタ喜劇は、モーツァルトとロッシーニを掛け合わせたみたいな楽しさがあります。キャストは、合唱なしで7人だけ。これを2組で14人と研修生がぴったりと総出演だそうです。しかも、お話しは、三人のプリマ争いということで、ソプラノお三方が、それぞれの持ち味を活かした役柄でそろい踏み。オーケストラも、小さめの2管編成なのでピットにほどよい距離で納まります。しかも、とってもアンサンブルが心地よい。

舞台は、この中劇場ならではのセンスのよいシンプルなもので、場面転換も回り舞台で小気味よい。

キャストもこの公演に気持ちを高めて集中したのでしょうか、とても、ひとりひとりの歌唱が凜としていて、重唱も素晴らしいアンサンブル。

特筆すべきは、その演技でした。

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感染対策ということで、キスや抱擁どころか手もつなぎませんが、それだけに間合いを取って自由な手をしなやかに動かし、ステップを踏んで舞台を広く使った演技は、演出演技の技を盛りだくさんに発揮したもので、観ていて本当に気持ちが華やぎます。研修生にとっても演技力の錬磨の成果を存分に発揮したということになっていたのではないでしょうか。

客席は、前4列を空けていたものの中央ブロックは席を空かさずにぎっしりと満員。会話こそ控えめですがオペラらしい華やいだ雰囲気がいっぱいです。閉幕となってのカーテンコールも盛大な拍手への横一列の答礼でも手をつなぎません。全員での何回かの答礼が済むと拍手はすっと収まります。これもまた、コロナ禍のニューノーマルなのでしょう。それでも、順序よくホワイエへと歩んだ皆さんは誰もがとても満足げで笑顔いっぱいでした。

来週、大劇場のほうでは「ワルキューレ」です。歌手の来日中止が相次ぎ、とうとう主役のジークムントは、第一幕と第二幕がそれぞれ別の二人が代役。オーケストラも縮小編成。それこそ、劇場支配人は悩みぬいたことだと思います。果たして公演としてハッピーエンドを迎えることができるのでしょうか。


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新国立劇場
オペラ研修所修了公演
ドメニコ・チマローザ『悩める劇場支配人』
2021年3月7日 14:00
東京・初台 新国立劇場 中劇場
(1階17列37番)

出演
フィオルディスピーナ(プリマ・ブッファ):井口侑奏
メルリーナ(プリマ・ジョコーザ):和田悠花
ドラルバ(プリマ・セリア):杉山沙織
ドン・ペリツォニオ(詩人):仲田尋一
ドン・クリソーボロ(劇場支配人):井上大聞
ジェリンド(作曲家):増田貴寛
ストラビーニオ(ドラルバのファン):森 翔梧

指揮:久恒 秀典
装置:黒沢 みち
照明:稲葉直人
衣裳コーディネーター: 増田恵美
舞台監督:穂積千寿
チェンバロ:大藤玲子
管弦楽:新国立アカデミーアンサンブル

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