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ウィーン国立歌劇場「ボリス・ゴドノフ」 (ウィーン&ブダペスト音楽三昧 その8) [海外音楽旅行]

早くも滞在二日目にして最高潮に達した私たちのウィーン音楽三昧ですが、まだまだ続きます。

夜のオペラまでにたっぷり時間があるのでウィーン見物ですが、この日は月曜日。おおかたの美術館等は休館ですので、オープンしている場所に集中しながら私たちのウィーン世紀末探訪は続きます。

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まず、トラムでベルヴェデーレ宮に向かいます。

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上宮からの眺望はまさに絶景。ゆるやかな斜面に拡がる幾何学模様の庭園と下宮の背景にはウィーンの市街が遠望されます。この日も雲ひとつ無い爽やかな青空が拡がっています。

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もちろんお目当てはクリムトやシーレ、ココシュカなどのウィーン世紀末の画家たちの作品。特にここにはクリムトの「接吻」があります。

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次に向かったのは、郵便貯金局。

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やはりトラムで公演沿いのリングを北上します。ここはオットー・ワーグナーの後期の傑作。大きなアルミ支柱のリズミカルな反復とガラス天井からの陽光がとてもモダン。

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こんな調度も何気なく置いてあるのが素敵です。

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ここからドナウ川まで散策。ウィーン市内のドナウ川はブダペストのそれと較べるとちょっとがっかり。

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橋のたもとにはちょっと可愛らしいウラニア天文台があります。

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さらに地下鉄に乗って、ベートーヴェンゆかりの地へ。

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駅の前には集合住宅がありました。市建築局のカール・エーンが設計した有名なカール・マルクス・ホーフ。

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ここは田園地帯というよりは緑豊かな超高級住宅街でした。ベートーヴェンが歩いたという小川沿いの散歩道もありましたが、もはや往時をしのぶよすがはほとんどありません。

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この一帯はいわゆる「ウィーンの森」で、丘沿いの斜面にぶどう畑が拡がっています。酒蔵はレストランになっていて、季節になるとその年の新酒(=ホイリゲ)を楽しむ人々で大にぎわいだとか。ホイリゲはそのままそうした居酒屋を指す言葉になっています。そんなお店で昼食に旬のホワイトアスパラをいただきました。

さて、5月の爽やかな晴天に恵まれた私たちはウィーンの文化と自然をたっぷり楽しみ、午後には市街に戻りホテルでひと休み。いよいよ今夜は「ボリス・ゴドノフ」です。

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いちど実際に聴いてみたかったロシア・オペラ。

ロシア・オペラは上演が難しいのかなかなか聴く機会がありません。それをウィーンで最高のキャストで聴けるなんて。特に「ボリス・ゴドノフ」はムソルグスキーの代表作。傑作と言われながらも、既往のオペラの規格から外れた作風は、上演拒否や改訂、改作が繰り返されてきて、なお、上演を難しくしてしまったからでしょう。

ボロディンを愛し、この作品を繰り返し取り上げ、その原典版の復活に心血を注いだのはアバドです。イタリア人であり正統派のアバドとボロディンというと意外に思われるかもしれませんが、アバドはチャイコフスキーも早くから交響曲全曲録音もあって、「ボリス・ゴドノフ」原典版にはベルリン・フィルとセッション録音した決定版ともいえる盤があります。ベルリン・フィルとの来日時にも「はげ山の一夜」の原典版を演奏していましたね。このプログラムは、「火の鳥」、チャイコフスキー5番とオール・ロシアでした。

この日の白眉は何と言ってもタイトル役のルネ・パーペ。独壇場と言ってもよいほど。

このひとは何をやっても立派で、しかも何でもこなしてしまう。当代随一のバス。私たちはこれで、ミュンヘンの「ドン・カルロ」、ベルリンの「ファウスト」と矢継ぎ早にこのひとを聴いてきたことになります。

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ボリス・ゴドノフというの歴史上に実在した人物。動乱の時代に民衆に押されて帝位につき、その民衆による懐疑と暴乱のなかで帝位継承を僭称する若者が率いる反乱軍の攻勢のなかで世継ぎの息子の将来を慮りながら失意に沈んでいく。…そういう、絶えずある種の罪悪感とロシアを深く憂う心の奥底の葛藤をルネ・パーペは見事に表出していました。

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実は、この日の私たちの席は少しだけ節約して三列目の右端(PARKETT RECHTS Reihe3 Platz1&2)でした。ところがこれがとても幸いしたのです。

この日のコンマスは、ウィーン・フィルのコンマスのなかで筆頭かつ最若手のフォルクハルト・シュトイデ。ちなみに連夜のウィーン・フィル(歌劇場管弦楽団)でしたが、この日だけがキュッヒルさんではなかったというわけです。

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…それはさておき、私たちの席はかなりピットに近くて、その目前はトロンボーンとチューバ、ティンパニやグランカッサなど低音楽器がずらりと並びます。特に第一幕の戴冠式の場面では、バスチューバ、銅鑼などが大活躍。重厚かつ壮大な音響で全身が包まれ恍惚となるほど。バスチューバや銅鑼は第一幕だけで退場しますが、その後もとても印象深だったのは、要所要所でヴィオラの深々とした音色がロシアの漆黒の夜や民衆の嘆きを導き出し、ぶ厚い合唱や皇帝の懊悩に苦しむ歌唱を深く彩るのです。

ロシアは低音の魅力。つくづくそう思いました。



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ウィーン国立歌劇場 ムソルグスキー「ボリス・ゴドノフ」
2016年5月9日(月) 19:30(休憩無し)
ウィーン 国立歌劇場



Marko Letonja | Dirigent
Yannis Kokkos | Regie und Ausstattung
Stephan Grogler | Regiemitarbeit
Anne Blancard | Dramaturgie

Rene Pape | Boris Godunow
Ilseyar Khayrullova| Fjodor
Aida Garifullina| Xenia
Zoryana Kushpler| Amme
Norbert Ernst | Schuiskij
David Pershall| Andreej Schtschelkalow
Kurt Rydl | Pimen
Marian Talaba | Grigori
Ryan Speedo Green| Warlaam
Benedikt Kobel| Missail
Aura Twarowska| Schenkenwirtin
Igor Onishchenko| Hauptmann
Pavel Kolgatin| Gottesnarr
Alexandru Moisiuc| Nikititsch
Gerhard Reiterer| Leibbojar
Marcus Pelz| Mitjuch
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