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花の盛りの美女にかぶりつき (タレイア・クァルテット) [コンサート]

東京・春・音楽祭。今年も上野公園の桜は満開です。天候には恵まれなくて、この日もどんよりと曇った空ですが、それでも雨模様ではないのが幸いとばかりの大変な人出です。

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ミュージアム・コンサートは、いつもはなかなか聴く機会のない古楽や小さな編成の室内楽などが聴けるのが楽しみ。もうひとつは、そのついでにちゃっかりと美術館も楽しもうということ。ところが、この日が月曜日ということをうっかりしていて、「エゴン・シーレ展」はお預け。「記念コンサート」という看板にちょっと騙された気分です。

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この日は、若手クァルテットの演奏。

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タレイア・クァルテットは、2014年に東京芸大在学中に結成されました。2018年には宗次ホール弦楽四重奏コンクールでカルテット・アマービレとともに第1位受賞。第2ヴァイオリンが海外留学などの事情で入れ代わっているが、他の3人は創設メンバー。2016年から18年にメンバーだった大澤里菜子は現在は読響に在籍。

ともかく若く、今を盛りに花開くミューズ。

会場は美術館の講堂で、とても響きがデッド。必ずしもクラシック音楽のコンサート会場には向いていませんが、時として意外にマッチすることがあります。この日は、果たしてどうなのか。期待をこめて、前から2列目というかぶりつきの席を確保しました。

曲目は、弦楽四重奏のレパートリーとしてはとびきりのご馳走ともいうべき2曲。ともに濃厚なロマンチックな薫りが馥郁と匂い立つような、花弁がこぼれ落ちるかのような華麗豊穣な音楽。

そういう音楽が、生々しく響く。直接音が主体で残響は極小。しかも、個々の音律線がクリアに浮き出てくる。和声を響かせるパートや拍節を刻むパートと、ソロとして旋律を艶やかに歌う楽器が、組み合わせも換えながら頻繁に交代する。そういうアンサンブルの構造が実に明瞭。

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とにかくメンバーの顔立ちがはっきり。

一曲目のウェーベルンでは、第一Vnの山田香子さんが恍惚の刹那を歌い上げ、他のメンバーがうねうねと艶やかな対位法的な旋律でねっとりと絡みついていく。それはもう桜吹雪のなかで物狂おしい舞を舞う娘のようにエロチック。

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「死と乙女」の変奏曲は、四重奏の深々とした和声のテーマから始まり、そのテーマは次々と楽器を換えて引き継がれていく。メンバーのひとりひとりがとても積極的に歌い上げ、変奏の綾なすタッチに関わっていく。そのことがこのクァルテットのキャラクターとして、とても印象的。

アンサンブルというよりは、一人ひとりがプレーヤーであること。マルチマイクの録音のようにその時々にソロにスポットをあてて音量を上げるというのではなくて、どんなに音が重なりあっていてもそれぞれの音が聴けるということ。それでいて、「死と乙女」の冒頭のユニゾンは鮮烈で強烈。

正直に言って、響きの心地よさ、音色の滑らかさのようなものは乏しいのですが、片時も目を離せないようなスリルに満ちています。

タレイア・クァルテットは、遅まきながらこの12月の紀尾井ホール「明日への扉」に出演が予定されているようです。本格的な音楽専用ホールではどのような響きになるのか、それまでの進化はどのようなものなのか、今からとても楽しみです。





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東京・春・音楽祭2023
ミュージアム・コンサート
「エゴン・シーレ展」記念コンサート vol.3
タレイア・クァルテット

2023年3月27日(木)14:00
東京・上野 東京都美術館講堂
(B列10番)

タレイア・クァルテット
 ヴァイオリン:山田香子、二村裕美
 ヴィオラ:渡部咲耶
 チェロ:石崎美雨

ウェーベルン:弦楽四重奏のための緩徐楽章
シューベルト:弦楽四重奏曲 第14番 ニ短調 D810《死と乙女》
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