SSブログ

沖澤のどか 初見参 (読響・日曜マチネーシリーズ) [コンサート]

いま注目の新進気鋭の指揮者、沖澤のどかを聴いてきました。

IMG_6865_1.JPG

何しろ2019年ブザンソン国際指揮者コンクールの覇者。カラヤン・アカデミーでベルリン・フィルメンバーの薫陶を受け、ペトレンコの足ステンを務め、その代役としてベルリン・フィルのデビューも済ましている。ベルリン在住で、ヨーロッパ中心に活躍しているとあるから、この先も大いに楽しみな指揮者。

IMG_6867_1.JPG

週末のマチネーといえば、大体がポピュラーな名曲プログラムというのが相場ですが、読響のそれはけっこう辛口。この日は、人気のヴァイオリニスト・三浦文彰と組んでエルガーにがっぷりと組むというプログラム。前半は、50分に及ぶこの曲のみ。後半も、ワーグナーの《「トリスタン…」前奏曲》とR.シュトラウスの《死と変容》を続けて演奏するというわけで、前後半いずれも切れ目なく続くというシンプルにして大きな構えの異色のプログラムです。

05121-thumb-autox309-7699.jpg

エルガーの協奏曲は、ロマンチックでそれ自身が大きな構えを持つ。その叙情性は、チェロ協奏曲のデュプレのように演奏者によってはとてつもなく息の長い冷熱を帯びて情熱的になる。沖澤と三浦のロマンチシズムというのはそういう思いつめた主情的なものとは違います。とても情景的。広々とした丘陵地帯の田園風景とか、あるいは暗雲が低く垂れ込めた夕闇の荒野の光景とか。滔々と淀みなく流れる音楽は瞑想的でもあって、終楽章の高まりの中でようやく超絶技巧的なソロがほとばしる。

後半、ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲。それに続けてシュトラウスの「死と変容」を続けて演奏する。なるほど調性的にもつながっていて、ワーグナーの果てしもない死への問いかけが、シュトラウスによって浄化され救済解決へと昇華されていく。この組み合わせはなるほど素晴らしいアイデアです。もともと沖澤がブザンソンで優勝した時に演奏したのが、この「死と変容」だったそうだから得意の勝負曲なのでしょう。それだけに沖澤の独自性がよく感じ取れる演奏でした。

IMG_6872trm_1.jpg

バトンさばきは、大きく、しかも流麗で滑らか。若い頃の小澤征爾を思わせます。それがそのまま曲にも反映されていて、実に壮麗極まりないレガートの音楽。滑らかであっても重くはない。自由で柔らかく、しかもマッシブ。エルガーとシュトラウスという曲の性格も相まってのことなのか、上へ上へと拡がっていく厚いハーモニーが印象的でした。

こういうレガートは、カラヤンのものとはまた違った二十一世紀のレガートなのでしょう。この人の、このレガートで、ハイドンとかモーツァルトとかが聴いてみたいと思う一方で、ブラームスなんかはいったいどんな音楽になるのかとちょっと戸惑うところもありました。これからが楽しみです。



flyer.jpg

読売日本交響楽団
第257回日曜マチネーシリーズ
2023年5月14日 14:00
東京・池袋 東京芸術劇場
(2階 E列 25番)

沖澤のどか(指揮)
三浦文彰(ヴァイオリン)
林 悠介(コンサートマスター)

エルガー:ヴァイオリン協奏曲 ロ短調 作品61

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲
R.シュトラウス:交響詩「死と変容」作品24

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。