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3つの巨大パイプオルガンを堪能 (東京芸術劇場パイプオルガンコンサート) [コンサート]

このところブランチコンサートなどでよく通っている東京芸術劇場コンサートホールですが、ふと、いつも見上げているパイプオルガンを一度も聴いたことがないことに思い当たりました。

このホールのオルガンは、今やオルガン大国である日本でも有数の規模を誇るオルガンです。しかも私にとっては最も身近にあるオルガン。そう思っていたところ絶好の機会が訪れました。

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それは、新オルガニスト就任記念のコンサート。

徳岡めぐみさんとジャン=フィリップ・メルカールトのお二人が、この4月に新しく芸劇のオルガニストに就任し、そのお披露目のコンサートというわけです。そのプログラムは、ここのオルガンを徹底的に聴かせてくれるというもの。

なにしろここのオルガンは、リバーシブル。パイプオルガンの本体が回転します。まるで大掛かりな舞台セットのように、どんでん返しのように変わる。一方はメタリックなSF映画にでも出てくるような外観のモダンオルガン。もう一方は、いかにも歴史を感じさせる荘重な外観のオルガン。しかも、こちらはルネサンスとバロックの音律・音色と即座に切り換えられる。

この日は、その三通りのオルガンを全て聴かせてくれる。休憩時間には、約2分をかけて回転する光景を見せてもらいました。

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まずは、17世紀北ドイツの夭折の作曲家ブルーンス。ルネサンスタイプのオルガンは清澄で清楚な音色がします。そして、次はバッハをバロックタイプでと交互に聴いていきます。やはり、耳になじむのはバロックタイプの音色。CDで聴くオルガンと言えばバッハの曲がほとんどで、音律もピッチもこのタイプなのでしょう。

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前半最後は、徳岡さん、メルカールトさんの連弾でブランデンブルク協奏曲の2番を編曲したもの。原曲は、独奏楽器がトランペット、リコーダー、オーボエ、ヴァイオリンと多彩で、しかも、音色も音量も際だって違うのでバランスが難しく、なかなか生では聴く機会が少ない曲です。それがオルガンの多彩なストップを駆使して4手、4段鍵盤とペダルで弾いていく。実に楽しい瞬間でした。

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モダンタイプ面に反転させての後半は、すべてが20世紀の作曲家の音楽。

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後期ロマン派という時代もオルガン曲の宝庫。バロック期の宗教音楽中心、多声部の対位法的技法から離れて、壮大な響きと平均律独特の劇的な音色に思わず我を忘れるほど。最後の、ドビュッシーなどは、なるほどドビュッシーはこういう新たな和声による巨大な構築物を創り上げていたのだと、原寸大の精密なモックアップを身近に観察するような発見に満ちた感動がありました。

オルガンの歴史は、教会の歴史でもあるのです。だから、オルガンの曲の多くは教会や聖堂のオルガンで聴くようにできています。一方で、コンサートホールのオルガンは、オーケストラとの共演であることが前提。その音造りは微妙に違う。だから、たったひとつの備え付けオルガンでは両立することが難しいのです。

3つのタイプを使い分けるということは、オーケストラとの協奏というコンサートホールオルガンの本職に思う存分に徹することができる一方で、バッハを始めとする宗教音楽などのバロック期のコンサートであってもポジティブオルガンなどを持ち出さずともアンサンブルは可能ですし、もちろん、バロック以前のパイプオルガンの古楽演奏も可能ということになります。

特に、モダンタイプの音量豊かな響きと倍音豊かな音色は特筆もので、これなら大オーケストラとの共演であっても埋もれることなく壮大に鳴るに違いありません。もっともっとオルガン付きのフルオーケストラものを演奏してほしいと願わずにはいられません。ホールからホールへと日を変えて渡り歩く在京オケの現状では難しいのかもしれませんが、何としてもどんどんとプログラムに取り入れて活用してほしい。

そういう魅力のあるオルガンが目の前にあったのだと気づかされるコンサートでした。




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東京芸術劇場パイプオルガンコンサートVol.24
~オルガニスト就任記念~
2023年6月22日(木)19:00
東京・池袋 東京芸術劇場

オルガン:徳岡めぐみ、ジャン=フィリップ・メルカールト

N.ブルーンス/プレリューディウム ト長調 ★
J.S.バッハ/コラール「いと高きところにまします神にのみ栄光あれ」 BWV 662 ★
J.P.スウェーリンク/「我が青春は終わりぬ」 SwWV 324 ◆
B.メルニエ/インヴェンション 第4番 ◆

J.S.バッハ(J-P.メルカールト編曲)/
ブランデンブルク協奏曲 第2番 ヘ長調 BWV 1047 ★◆

C.トゥルヌミール(M.デュリュフレ編曲)/コラール即興曲「過ぎ越しのいけにえ」 ◆
M.デュプレ/「オルガン交響曲 第2番 Op. 26」より 第2楽章 インテルメッツォ ◆
M.レーガー/幻想曲とフーガ ニ短調 (改訂版) Op. 135b ★
C.ドビュッシー(J-P.メルカールト編曲)/『夜想曲』より 「祭」 ★◆

♪ルネサンス&バロック&モダン・オルガンを使用

★:徳岡めぐみ
◆:ジャン=フィリップ・メルカールト


ルネサンス・オルガン
[17世紀初頭・オランダ・ルネサンスタイプ]
(A=467Hz ミーントーン調律法)

バロック・オルガン
[18世紀・中部ドイル・バロックタイプ]
(A=415Hz バロック調律法]

モダン・オルガン
[フランス・シンフォニックタイプ]
(A=442Hz 平均律調律法)
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