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優雅さのなかに隠された精励恪勤 (田中 渚 ハープ) [コンサート]

あらためてハープという楽器に魅了されました。
新人の登竜門である紀尾井ホールの「明日への扉」が初舞台というひとは、昨今、かえって珍しくなりましたが田中渚さんはこれがデビュー・リサイタル。
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深紅のドレスで現れた田中さんはとてもお美しい。やっぱりハープ奏者は美人でなければ…。ステージ上のお姿を見るとフライヤの写真よりもずっと大人びた印象です。オランダのマーストリヒト音楽院の修士課程に留学中とのことですが、精神的にも音楽的にも成長期の真っ盛りなんだと思います。これからがとっても楽しみ。
プログラムはほとんどが二十世紀まで活躍した作曲家の作品。ほぼ現代音楽と言ってもよいのですが、いわゆる前衛的なものは皆無で、ハープとしての魅せ所がいっぱいの王道、正統ともいってよい曲ばかり。しかも、楽器の魅力を効果的に引き出す表現や技法の粋を凝らしたものばかり。まるで国際コンクールの課題曲みたいな曲ばかりが続きます。優雅でありながら、とてもハードでタフ。
繊細ながらもあちらこちらに様々な意匠や演奏テクニックが隠されているようで、今の音はいったいどうやったのかと、あわてて単眼鏡を覗くのですが決定的瞬間には間に合いません。音楽こそ、ゆったりと優雅で流麗、少しも奇をてらったものではないのですが、飽くことがありません。あっという間に前半が終わってしまいました。
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後半は、シックな灰青色のドレス。長い裾に隠れて見えにくいのですが靴はまるでスニーカーのような編み上げの平底のシューズであることには変わりません。見かけの優雅さはあくまでも表向きで、指先から手のひら、腕、足元のダブルアクションのペダル操作などハーピストは大変に多忙でタフだということも実感させられます。
楽器は、柱がゴールドに飾られ、響胴には花柄の模様があって、とても美麗で豪華なもの。ライオン&ヒーリーの最新モデルだそうです。いかにもヨーロッパの歴史伝統の工芸品とも思えるこんな優雅な楽器がアメリカ中西部のシカゴで作られているというのはちょっと意外でした。
後半は、多少は名曲というのか親しみやすい曲が増えますが、それでも知っているのはファリャとフォーレぐらい。それでもハープのオリジナルとして聴いたことがあるのはフォーレぐらいです。最後のグノー「ファウスト」のテーマによる幻想曲は、壮麗で変化に富んだ15分もの大曲で圧倒されました。
アンコールのアナウンスでは、まだ息が弾んでいて「もう、へとへとなんですが…」と思わずボロリ(笑)。アンコールは、演奏はだいぶ楽な曲なのだそうですが、客席の私たちも静かにクールダウンするように癒やされました。
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紀尾井 明日への扉31
田中 渚(ハープ)
2022年7月28日(木) 19:00
東京・四ッ谷 紀尾井ホール
(1階 18列9番)
田中 渚(ハープ)
グランジャニー : コロラド・トレイル op.28
グランジャニー:ラプソディ
ダマーズ:シシリエンヌ・ヴァリエ
ウーディ:ハープ・ソナタ
マレスコッティ:ムーヴマン(ムーヴメント)
ゴドフロワ:ヴェニスの謝肉祭 op.184
ゴドフロワ:ヴェニスの謝肉祭 op.184
ファリャ:スパニッシュ・ダンス第1番
フォーレ:塔の中の王妃 op.110
ツァーベル:グノーの歌劇《ファウスト》の主題による幻想曲 op.12
(アンコール)
アルバート・ヘイ・マロット:《主の祈り》

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