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ブーレーズ ドビュッシー・交響詩「海」 [オーディオ]

ブーレーズの、ドビュッシー・交響詩「海」。

ブーレーズといえば、60年代後半に指揮者としてCBSソニーにメジャーデビューしストラヴィンスキー「春の祭典」での精緻なリズム構成や、ラヴェルやドビュッシーではキレの鋭いアーティキュレーアションと透かし彫りのように細部まで精緻に浮かびあがらせた演奏で時代を画しました。

La Mer Boulez The New Philharmonia merged_1.jpg

私の持っている盤は、(おそらく)再販の国内盤。これがものの見事に《SX68 MARK II》。
 
前の投稿でご紹介したキャッチフレーズには続きがあります。

『なかでも歪みはSX-68カッティング・ヘッドの40~16KHz±0.5dBという広い周波数帯全域にわたり0.03%以下になり、カッティングに起因する歪は事実上追放されました』
 
注目なのは、周波数帯域が40~16KHzとあること。当時のLPの再生帯域上限は16KHzまでと認識されていたこと。もちろんそこでストンとカットされていたわけではないけど、当時のDL-103のデータシートでは文字通り16KHzでストンと落ちていました。放送規格もそうなっていたはずです。

改めていま現在、自分の最新システムでその演奏を聴いてみると、その革新性に再び目が醒める思いがします。「海」といえばドビュッシーのみならずいわゆる「印象派」音楽を代表する傑作であることは間違いありません。けれども、広くゆきわたったある種の思い込みのような受け止めかたがあります。それはこの曲が標題が示す通りの「交響詩」であり印象派の響きの粋をこらした「絵画的」音楽だということ。

ブーレーズの演奏を聴いてみると、説明的な「絵画」というよりビジュアルな「動画」というべきで、海のうねりや千変万化する波の様相を、光や色彩の変化や、泡立ちとかしぶき、水鳥やイルカのような海生動物の躍動など、ある種の触感的な肌理とともに多彩に感じさせてくれる、まさに心に刻まれた《印象》を描いた音楽だということがよく感じ取れるのです。

構成もしっかりしていて、プロローグともいうべき序部と気宇壮大なコーダ、序部における異国情緒の五音音階的な音列が全体的な気分を支配し、第一部の主題が第三部で回帰するなど循環的構造が明白です。それが、広大な大洋の果てしない拡がりと波の生々流転という無限を見事なまでに感得させてくれるのです。

そういうことを明らかにしたブーレーズのドビュッシー演奏は画期的だったのだと思います。それを実現できたのも録音技術やLPのカッティング技術の進歩だったと思うのです。残念ながらオリジナルプレスは持っていないので比較はできていませんが、想像するにこういう演奏においては、SX68の優位性は顕著なのではないでしょうか。

指揮やオーケストラの技術もさらに進歩し、こうした精緻なリズムやアンサンブルを難なく実現できるような時代になりましたが、それでも微妙なずれで響きが薄くなったりかすかに白濁してしまうとかつてのようなのっぺりと茫洋とした「印象」を並べた音楽になってしまったり、逆に粗っぽいディナミークやソロの演技が過剰になればシンドバットの冒険譚のような劇的な音楽になってしまいます。

これをデジタル時代の新盤(CD)と較べてみると、旧盤はさすがに録音に古さを感じさせますが、アナログ特有のコクとしっかりとした隈取りの色合いが鮮やかで、いまだにその魅力を失っていません。新盤は、デジタルらしい高解像度・広帯域ですが、再生システムによってはそれがかえって薄味の印象になってしまい、本来のブーレーズの意図が聴き取りにくくなってしまうので注意が必要かもしれません。
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「SX68サウンド」とオーディオバブル [オーディオ]

グレン・グールドの「二声と三声のインベンション」は、たまたま同じものが2枚ある。ジャケットの色合いが違う。何が違うのかとよく見てみると、一方は「SX68」の新しいカッティングで一方はそれ以前のもの。

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「SX68」とはノイマンの当時最新のカッティング・ヘッドのことで、CBSソニーは「SX68サウンド」と前面に掲げて積極的に高音質を謳っていた。最近、オーディオ仲間から「LPレコードはSX68になってから音が悪くなった(と言われている)。」と聞いた。

ある評論家によれば、五味康祐は「このノイマンSX68が音をきたなくした。これを褒めるやからは舌をかんで、死ね」とどこかで書いているそうだ。出所は明らかではない。少なくとも「オーディオ巡礼」にはそんなことはひと言も書いていなかった。

このLPは学生時代に夢中になって三日と空けず繰り返し聴いていたが、二枚になってからも音の違いなど認めず一方ばかりを聴いていた。SX68とそれ以前とはどう違うのか、せっかくなので二枚をじっくりと聴き較べてみた。

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聴いてみると確かに違う。SX68は、ピアノのタッチも明瞭で音色がきれい。低音弦の響きにも深みがある。ダイナミックス、周波数帯域ともにレンジが広いと感じる。例の「鼻歌」や気配も自然で奥行きが感じられる。旧盤は、おそらくウェストレックスのカッティングレースを使用していたのだろうが、よく言えば自然でまろやか。ピアノの打鍵もカドがとれて丸まっていて響きも甘い。驚くのはSNのよさ。SX68の新盤ではマスターのテープヒスが聞こえる。各々の曲間ではこれがすっと静まるのがわかる。

グールドのタッチや音色のデリカシーが伝わるという点で、私にはSX68のほうが明らかに優れているように思う。なぜ、前述のような評価が世にはばかるのだろうかと首を傾げてしまった。それこそ舌をかんで死んでしまえと言いたい気分だ。


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こうしたカッティングレースの革新の時代に、アンソニー・ニューマンの「ゴールドベルク変奏曲」がある。同じ頃のCBSソニー盤だが、よく見るとこちらは「SX68MARKⅡ」とある。

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「西独ノイマン社製カッティング・ヘッドSX68と、ソニー音響技術陣が新開発した全トランジスタ・アンプ及びコントロール・ユニットにより構成される最新鋭のカッティング・システムです。その優れた諸特性は、歪みのないツヤやかな音で、原音の最も忠実な再現を可能にしました。」ということだそうだ。

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なるほどSX68というのは、真空管とトランジスタとの端境期にあったわけで、SX68によるカッティングでも両者が混在していたようだ。ソニー技術陣は、高らかにオール・トランジスタ化を掲げて高音質を標榜したというわけだ。

このニューマンの録音は、すざまじい切れ込みと鮮やかなワイドレンジで、当時のバロックシーンにおいて少なからぬセンセーションだった。当時、当たり前のように使用されていたモダン・チェンバロではなくヒストリカル楽器を使用したことは画期的で、解説にも変奏毎に使用したストップが詳述されて、大いに蒙を啓くところがあった。

ところが、「チェンバロのホロヴィッツ」とやらの演奏はひどく表面的な技巧や新奇性に走っていて、録音もチェンバロの中にマイクを突っ込んで拾ったものらしく、まるでおもちゃ箱をひっくり返したように現実離れをしたあざとい音響。そのウソ臭さにすぐに聴き飽きてしまった。

思うにSX68の時代とは、素朴に「進歩」や「成長」を信じられる幸福感が支配していた最後の時代だったような気がする。決してSX68や半導体アンプが音響的に以前より劣化・退歩したわけではないが、技術信仰が暴走を始めると、自然な聴感よりも耳を驚かすようなステレオ感が優先され、現実離れした近接録音や音色の強調が行われていく。同じドンシャリでも、共鳴や固有振動、インピーダンスのうねりがもたらす「自然由来」のものと、人工的に作りあげるものとは、やはりかなりの違いがある。

価値観が多様化した現在からみれば、70年代は「オーディオ狂時代」であり、ある種のオーディオ・バブルが発生していた時代なのではないだろうか。
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蓄音機で聴くウラディミール・ホロヴィッツ [オーディオ]

東京芸大の膨大なSPコレクションを聴く会。今回はホロヴィッツ。

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会場の第6ホールは、2017年に大改装されたもので、中に入るのは初めて。天井から下がるように突き出た大量の木の束がに目を引きます。下地となる束材を内装側に配置するという逆転の発想なんだそうです。照明はその束材の先端のLED。

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とにかく独創的な音響デザイン。内装は一面がシナ合板で仕上げられていて、アコースティックは暖かみのあるものですが、音楽ホールとしてはかなりデッド。練習場とか卒業試験に使われるからなのでしょう。

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蓄音機は、クランクで巻き上げる手回しモーターの米国VICTOR社のビクトローラ・クレデンザ (Victrola Credenza)。鉄針を使用し、電気増幅を使わないオール機械式にもかかわらず、そのサウンドの存在感は堂々たるもので100席ほどの会場を十分に音を満たします。

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10インチの円盤に記録されるのは最大限で5分程度。だいたいが1面から3面で1曲あるいは1楽章が納められています。SPならではのスクラッチノイズですが、音楽そのものは不思議とノイズに埋もれない。帯域はせいぜい下は200Hzぐらいで上は1KHzぐらいまで。それでも不満なのは低域ぐらいで、ホロヴィッツの雄弁な中域も、輝くようなダイヤモンドのような高域も、目覚ましい速さのトリルの連打も、実に生々しい。電気増幅のオーディオとは違う実在感があります。再現装置というより楽器そのもの。英国HMVと米国Victorのディスクがかかりましたが、わずかに米国製のほうが帯域も広めで音に艶があると感じます。

コンサートやCDなどでしばしば“ホロヴィッツの愛した”NYスタインウェイのヴィンテージピアノを弾いている江口玲さんと、そのピアノを所有しているタカギクラヴィアの高木裕さんを解説とゲストに迎えての会なので、話題はどうしてもホロヴィッツのピアノのことになります。これがとても面白かった。

ホロヴィッツのピアノは特別。

まず鍵盤のストロークが違う。鍵盤を押すと前端がおよそ10mm下がる。通常はその半分の5mmぐらいでダンパーが上下するが、ホロヴィッツのピアノは2mmでダンパーが上がる。しかも重さが通常は50g前後なのに44-43gぐらいに調整されている。並のピアニストではとうていコントロールできない。例えてみれば、モダンピアノは誰でも運転が容易なオートマ車で、ホロヴィッツのピアノは、ホロヴィッツしか運転できないほどチューニングされたマニュアル車だということ。

音量や音色も今の楽器とまるで違うという。

そもそも音が均質でない。真ん中の帯域はメローで人間の声のようでよく歌う。高域は華やかで輝くようで、低域は沈むように深い。モダンピアノのように音が平均的では音楽が作れないといいます。戦前までは、ピアノは弦楽器のように職人がすべての工程に携わって手作りで制作していた。調律に際しても、例えばハンマーの位置は見た目ではガタガタで凸凹。ところがこれで弦と鍵盤のストロークがぴったり合っている。目でそろえてはダメなのだそうです。

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横板などのケースは楓材が使われているそうです。ハンブルクスタインウェイはブナや合板製。NYでは薄塗りのラッカーだったのに、ドイツではウレタン塗装。これではピアノは鳴らない。演奏家は、まず、作曲家の時代の楽器を求める。ホロヴィッツは、NYスタインウェイのなかからそういう楽器を選びに選んでいたそうです。

調律家もそういう演奏家の好みに合うピアノを見つける。スタインウェイのフランツ・モアはそういう天才だったそうです。ホロヴィッツはルービンシュタインのピアノを絶対に弾かないし、ルービンシュタインもホロヴィッツのピアノを弾かない。ところが調律はふたりともフランツ・モアが担当していたのだとか。メーカーもこうした巨匠・名手に貸与したり寄贈して、その意見を仔細に聞いて開発改良に力を注いだということだそうです。

ヴィンテージのNYスタインウェイを愛したピアニストにグレン・グールドがいます。

彼がまず気に入ったのはCD174。1回目のゴルトベルク変奏曲はこれで録音しています。ところがその楽器は輸送中に破損してしまう。ようやく見つけたのがCD318。ところが、この楽器も移送中に落下させて破損してしまう。スタインウェイのNY工場で修理するが肝心の音はもとに戻らない。それもこれもグールドの気まぐれのせいで、関係者も嫌気がさしていたのです。そういうスタインウェイの不実に怒ったグールドは、嫌がらせのように他社の楽器に浮気する。2回目のゴルトベルクの録音は、このどさくさでヤマハになったというわけですが、グールドが早逝しなければスタインウェイとは早晩和解したのではないかというのが高木さんのお話でした。

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最後に、江口さんがわざわざこの会のために会場に運び込まれていた「ホロヴィッツが愛したピアノ」CD75(1912年製 タカギクラヴィア所蔵)を実際に弾いてくれました。ショパンのノクターンのあまりの美しい表情豊かな音色に思わず息を呑む思いがしました。



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蓄音機で聴くウラディミール・ホロヴィッツ
 ~「石井コレクション」紹介~

東京・台東区 東京藝術大学音楽学部第6ホール
2023年10月25日(日)14:00

解説:江口玲(ピアニスト・東京藝術大学教授)
ゲスト:高木裕(ピアノプロデューサー・ピアノ技術者)

1. ショパン:[Impomptu no.1 in A flat major op.29]
  HMV(英)DB21425 1951年
2. ショパン:[Nocturne in F sharp major op.15, no.2]
  HMV(英)DB6627 1947年
3. ドホナーニ:[Capriccio in F minor op.28, no.6]
  HMV(英)DA1140 1928年
4. ベートーヴェン:[32 Variations in C minor op.191]*
  Victor(米)1689-90 1934年
5. リスト(ブゾーニ編):[Paganini etude in F flat major]
  Victor(米)1468 1930年
6. リスト:[Hungarian Rhapsody no.6]
  Victor(米)11-9844,45 1947年

7. ツェルニー:[Variations on the aria "La ricordanza"op.33]
8. スカルラッティ:[Capriccio]
9. ホロヴィッツ:[Canza excentrica]
10.ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」より第3楽章
  アルバート・コーツ指揮 ロンドン交響楽団
  Victor(米)17200-02 1930年

*表記はすべてレーベルに従ったもの。
ベートーヴェンの「32の変奏曲」は死後に整理されたもので作品番号は無く、現代ではWoO.80という整理番号が振られています。

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岡山 秋の音会 (その3) [オーディオ]

岡山・秋の音会の最後は、久しぶりにとりさん宅にお伺いしました。

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とりさんのサウンドを、オーディオ的観点からひと言で言えば《ハイエンド・オーディオ》ということになります。

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《ハイエンド》というのは文字通りには「高級」「高性能」ということになりますが、オーディオにおける《ハイエンド》というのは、一途な高性能志向ということでしょうか。ひとつひとつ高性能を追求すれば、必然的にセパレートになるしケーブルもモンスター的なこだわりにもなり、結果としてコストも膨大となり結果として「高級」「高額」ということになります。

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そこには趣味的・審美的、所有欲的なブランド愛玩というよりも、どこか工業的な生真面目さがつきまといます。正確さ、緻密さ、微細な描写力、リアルな空間表現といったことへの追求であって、ある意味では日本人の気質に合っているという気がします。

とりさんの部屋にはそういうこだわりがぎっしり。そのシンボルがマジコの小型スピーカー。

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そんなとりさんの本日の目玉は、新規に導入したウェルデルタ。

巨大・重量派のパワーアンプの足元に導入したところ、その目覚ましい効果に驚喜。パワーアンプは背後にあって写真に写っていませんが、今回はさらにマジコの足元にも導入したというわけです。とにかく情報量が半端なく向上したというのが実感だそうです。

そんなとりさんは、J-POP系の女性ボーカルの超マニア。

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今回初めて女性ボーカルの大御所vafanさんをお迎えするということで、この日は尋常ならざる(笑)張り切りようで渾身のレパートリーを披露。いつもにも増してオタク度が高い。聴かせていただいてさっそく気に入ったものを後日、アマゾンでそのお宝的な中古価格を見てびっくり!まぼろし系の伝説的シンガーソングライターが特にお好みのようです。これにはさすがのvafanさんもたじたじ。

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そういう和製女性ボーカルとハイエンドというのがそぐわないと言われてしまいそうですが、こういうマイナーレーベル系の録音はとても生真面目。ハイエンドを工業的生真面目さだと解釈すると、実はすごくマッチングがとれている。まさにJISとJASRACのナイスなコラボレーション。

一聴すると低域が不足気味。とにかく付帯音がない。そもそもギター一本のボーカルなどには超低域は入っていないし、マイナー系の録音はバンドものでもディスコサウンド的に中低域を持ち上げることをしない。素のままの中低音というのはこういうものだ!と言わんばかりのハイスピード。ただ、マジコとウェルデルタという取り合わせは、何となく行き過ぎのような印象もあってちょっとひっかかります。

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うるさ型のもうひとつのご指摘は、マジコの背後に隠れるように置いてある小型スピーカー。まったくアンプにはつないでいないそうです。処分するに忍びないという気持ちはわかりますが、部屋の外に出すべしとの厳しい声に「他にスペースが無くて…」と頭をポリポリ。同じ部屋にあるのは良くない!せめて端子をジャンパーでショートしておくべしの声に、とりさんも反省しきりのご様子でした。
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岡山 秋の音会 (その2) [オーディオ]

岡山・音会の続きです。

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二日目は、helicats邸訪問。私にとっては本宅へお引っ越しして初めてのお披露目です。

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会のメンバー随一のうるさ型のhelicatsさんは、「音楽なんて音の羅列に過ぎん!」との暴言(笑)もいとわぬピュアオーディオ派。特に低音にうるさくて、低音フェチというイメージが強かったのですが、ニュールームの初印象は「音がきちんと納まっている」というもの。低域が強調されることもなく実にフラット、正統サウンド。

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実のところ引っ越したばかりは、大変な低域の暴れに悩まされたのだとか。システム自体はそのまま移設しただけで少しも変わっていないそうです。複雑なシステムのセッティングだけでも大変そうです。それを1年足らず(スイートサウンドさんによれば半年前から激変)でねじ伏せてしまったとのこと。

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helicatsさんは、HNの通り、大の猫好き。スピーカー左横の大きなラッキーキャットはマスコット置物と思っていましたが、足元をよく見ると…。

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それに気がつくと、スピーカーの足元などそこかしこに似たようなものが目に付きます。

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極めつけは背後の棚に作り付けられた巨大な共鳴箱。すべて自作ということで、その行動力に驚嘆させられます。エンジニア気質で、自作管球アンプをはじめ電気系の細工はお手のものというのは承知していましたが、DIYは何でもござれと知って二度びっくり。

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部屋の音響帯域特性の測定データを見せてもらうと見事にフラット。

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当初のデータでは60Hz付近に強烈なティップがあります。まさに劇的ビフォー・アフターです。

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市販の吸音グッズをやみくもに導入するのではなく、きちんと測定して理詰めで正確な狙い撃ち。ちなみに、背後の棚作り付けのレゾネーターは35Hzだそうです。倍音関係もきっちり押さえておられる。自作派ならではの、測定と試聴の二刀流というわけです。
ヘルムホルツ共鳴は、楽器の原理でもあるし、体幹に響く低音の魅力など武器にもなりますが、ルームアコースティックの暴れなどの元凶でもある。一方でこのように積極的な守りにもなる。まさにヘルムホルツを制する者は、音楽もオーディオも制するというところでしょうか。
勉強になりました。
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岡山 秋の音会 (その1) [オーディオ]

岡山・秋の音会に今年も参加しました。飛び入りのように参加して、以来、毎年の恒例のようになっている楽しいオーディオ遠征です。今年は、久々に横浜のvafanさんも参加。

個性あふれるメンバーはそれぞれが流派が違っていてアプローチの仕方がみんな違います。けっこう辛口のコメントが飛び交う、一見、修羅場(?)のようでいて、雰囲気は和気あいあい。とても楽しいオーディオ仲間です。

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第一日目のスイートサウンド邸は、ちょっとログハウス風のおしゃれな広々としたリビングスペースに、3wayマルチドライブのシステム。アンプはすべて金田式。上流はネットワークでファイル再生と手作りのとても手のかかったもの。

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スピーカーユニットをグレードアップしての満を持してのお披露目でしたが、うるさ型から高域と中域とのつながりが悪いとのコメント。スイートサウンドというHNの通りで、甘い心地のサウンドが持ち味なのですが、確かに中域のクリーミイなおいしさがすっかり後退して高域がかなり耳につきます。

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2階のサブシステムは、ウィーンアコースティックを中心としたシンプルなものです。こちらも金田式。スピーカーはまさにvafanさんから刺激を受けての導入。ネットワーク式なので帯域バランスとしては模範的。いずれ場所を移して、もっとのびのびと鳴らしたいという構想をお持ちなのだとか。

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それにしても、メインシステムのアンバランスは不可思議です。変更はユニットだけなのだそうですが、聴いたところ原因はユニットのせいではなさそうです。先ずは帯域バランスを改めて測定してみる必要がありそうです。スイートサウンドさんも新たなチャレンジに静かな闘志を燃やしておられるようでした。
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スクワランオイル [オーディオ]

スクワランオイルが効きます…というお話。

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スクワランというのは、要するにサメの肝油のこと。

もともとサメの肝油から発見されたが、オリーブオイルにも含まれる。抽出したもの(スクアレン)に水素を添加して融点を低めて安定させたものがスクワラン。もともと人間の皮脂にも含まれるから、一般には高級な化粧品とか保湿剤として知られているけど、潤滑性に優れるので工業的には離型剤、潤滑油に使用されている。

これが、オーディオ用途でも接点に塗布するものとして使われてきたことは知る人ぞ知るという話し。接点改質剤というわけです。

いわゆる接点復活剤とは違う。溶剤の類いは一切入っていないし、鉱物油ではない。あくまでも自然由来のもの。これで接点に塗布すると表面の汚れが取れ、接触面が増えて音質が向上するという。

最近になって、金管楽器のバルブの潤滑剤として高品質のものが売られていて、これがオーディオの接点改質剤としても効果があるとの広告を見て捜しまわりました。が、すでに販売中止。どこにも売っていない。品切れで、いまや広告そのものも削除されてしまいました。

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そうしたら、アムトランスが新たに発売したというので飛びついた…というわけです。

深海ザメの良質な肝油から抽出した精製度の高い製品だという。カーボングラファイトの類いの余計なものを入れてごまかしていないことも気に入った。もともとは潤滑剤としての効能が、接点の振動防止とか接面増加に効果があると期待していた。余計なものはないほうがよい。

その効果は…

先ずは上流から始めました。カートリッジシェルとユニヴァーサルアームの接点、フォノケーブル(RCAコネクタ)のアーム側、フォノアンプ入力に試してみたところ、何となく良さげ。

さらにDAC/CDPの出力とプリアンプ入力。次に、プリアンプ出力とパワーアンプ入力へと拡大。何となく音がクリアで音像がリアルになったような気がします。ついには、スピーカーケーブルにも塗ってみました。両端はバナナプラグ。結局、最後のスピーカーの効果が、もっとも効果がありました。気のせいかも知れないけど…。

すっかり気に入って、最後は電源プラグにも塗ってみました。

ちょっと怪談話めくのですが…

商用電源を使っているのはDAC/CDPのGRANDIOSO K1のみ。出水電器のアイソレーショントランスを200V→100Vのダウントランスとして使っています。コンセントは特注のもの。プラグもどちらも無メッキの銅無垢。

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信号系の接点は、無水エチルアルコールと綿棒で定期的にクリーニングしていましたが、まったく抜き差しすることもありませんでした。丹念にサンドペーパーで磨き直してアルコールと綿棒でクリーニングするとかなり黒々と汚れが取れます。最後にスクワランオイルを綿棒でごくごく薄く塗布します。

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すると…

今まで通電するとかなり筐体が暖まるのですが、スクワランオイルを塗った後では、ほとんど冷たいまま。音質がどうのというより、このビフォー・アフターにはびっくり。

実は、買ったばかりの頃は筐体が暖まることはなかったのですが、二~三年たって夏場の室温が上がる季節にはかなり気になるほど暖まってしまうようになっていました。バルミューダのサーキュレーターなどで風をあててたりしていたのですが、今回、それがピタリと収まってしまいました。

まあ、無メッキなので表面酸化しやすい端子を久しぶりにきれいに磨いた効果もあるでしょうから、スクワランオイルだけではないかもしれませんが、これはもう間違いなくプラセボ以上の効果があります。

私は、管球アンプは使っていないので実験はできませんが、一番効くのは真空管のピンではないでしょうか。USBのコネクタなんかでも効果がありそうです。

タグ:スクワラン
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シングルMFPCのお披露目 [オーディオ]

新しいMFPCのお披露目をしました。

導入して2ヶ月近く経ち、セッティングの周辺の見極めなど落ち着いたので聴いていただきました。

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新しいMFPCは、何とミニデスクPCたった1台という構成です。別に隠すつもりはありませんが、DACとのUSBケーブルが従来使用の短いものがベストだったのでラック裏に押し込めてしまったというわけです。

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従来は、ミニデスクを中心に5台構成でした。ミニデスクにRoon Core、Controller、Bufferとネットワーク経由で分散処理をさせ、RoonBridgeを経由してDiretta Target PCに送り込むという構成。

これが1台のシングルPCで、むしろ、音が良いというわけですから痛快。このPCは、従来、Roon Coreに使用していたミニデスク(i9 2.8GHz)をそのまま転用しましたのでハードの追加費用はゼロです。省スペースの効果で、ラック内に余裕が生じ、このことも音質アップに一役買ったことも思わぬ効果。

初めは roon + HQPlayer + NAA という構成でしたが、Bridge PC 導入時に、まず HQPlayer は卒業。Diretta導入時には、機能的に重複するNAAともおさらば。Diretta導入による音質アップはダントツでした。PC1台に戻って、そのDirettaも不要というのですからネットワークレスの効果は絶大です。

これが実現できたのは、Windowsのプロセスカットをさらに徹底したことによるそうです。これに貢献したのがChatGPTだというからそういう時代なのでしょうね。カットする順番の精緻を極めることで、それまではカットできなかったものも可能になる。その知恵をAIが見つけてくる。最後にはカットのバッチのコマンドラインまで書いてくれるというのですから驚きです。

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さて、その新MFPCのお披露目の比較試聴です…

比較は、CD、PC。DAC以下アンプ、スピーカーはまったく同じというガチンコ対決。CDとそのディスクからリッピングしたファイル再生です。アナログがある音源ソフトは、リファレンスとしてまずアナログ再生を聴いていただき、その上での比較です。

機材の構成はざっと以下の通り。

GRANDIOSO K1 (CD player/USB DAC)
金田式DCプリアンプ(バッテリー駆動+出川式 LCM 電源 Phono-EQ 内蔵)
  〃  パワーアンプ(  〃      〃    )
PSD T-4 (パワーアンプ直結 2wayマルチドラブ)

(参考-アナログ系)
YAMAHA GT2000X
ViV Laboratory Rigid Float
DENON DL103改

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Mさんは、自らギターも弾く音楽ファン。マンション住まいなので2千枚以上のCDの収納に悩んでおられましたので、私のファイルオーディオに目をつけられました。それがシングル体制になったことを聞きつけいよいよ導入に本気になったそうです。

半信半疑だったMさんも、聴いた途端にCDよりも音が良いことに驚かれたようです。ご感想をお聞きすると、やはり楽器をやられている人は鋭い。空間の左右の広がりと前後の深度、バックスの定位の安定感と実在感、コーラスの息づかいや声の質感のリアルさなどがびっくりするほど違うという。こんな音も入っていたのかという発見が続出する…。私は、クラシック音楽派なので、ロック・ポップ系に造詣の深いMさんのお言葉は力強い。


翌日は、板倉さんにも聴いていただきました。

板倉さんのご感想を聞くと、やっぱり板倉さんはボーカルフェチ(笑)だなぁと痛感しました。聴いているところが私やMさんのようなインストフェチとちょっと違う。

最初のE.クラプトン("Tears in Heaven")では、クラプトンのボーカルが少し薄めで芯が弱くなると言うのです。これは多少、私やMさんも感じていたことなのですが、これは弱音の解像度の高さと空間表現の深化とのトレードオフのようなもので、いままで聴いてきたCD再生のコントラストのほうに親しみを感じてしまうからです。

ファイル再生だけでしたが、私が自分で課題と思っている女性ボーカルの検定もお願いしました。中森明菜の(「セカンドラブ」)でお褒めいただいたのはうれしかったですね。竹内まりやのセルフカバー(「元気を出して」)のエンディング・リフレインのバックコーラスが鮮やかと評されてうれしくて天にも昇る心地。コーラスから薬師丸ひろ子や山下達郎の声が鮮度明瞭に聴き取れて心が華やぐのです。竹内まりやもまだまだ若々しかった。

アナログをまず聴いてもらうという狙いもうまくはまってくれました。

従来は、デジタル再生をいろいろ聴き較べて、最後にアナログディスクを回すと、「なぁんだ、やっぱりオリジナルのアナログ再生が一番だね」となるのがオチでしたが、新・MFPC は、デジタルの情報量の多さとアナログのエネルギッシュな濃密さとのいいとこ取り。特に、太田裕美(「青春のしおり」)の声の強さと濃度の高さがアナログと遜色ありません。この《自己満足》をご納得いただけたことも何よりでした。

タグ:MFPC
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アスカオーディオの「韻」 [オーディオ]

今、マイブームなのが、アスカオーディオの「韻」。
セラミックコーティングマイクロカーボンによる調音、吸音グッズ。

http://aska-audio.com/%e9%9f%bbhibiki%e3%81%ae%e7%99%ba.../

今までの吸音グッズは、吸音の周波数帯域が限られていたけれど、これは驚くほど広帯域。こんな小さなグッズで低域までまんべんなく調音してくれる。

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吸音は音を殺してしまうと信じ込んでいたけど、これを使ってみて(最初は貸し出し試聴)考えが一変しました。吸音がダメなのは周波数に極端なバイアスがあるため。このHIBIKIを使ってみると、スピーカーから出た音がいろいろと回り込み反響・残響としていかに音を汚していたかがわかりました。

吸音は、音が薄くなるとか響きが貧しくなるというのはウソ。HIBIKIでは、むしろ音が部屋中に充満し、本来録音に入っているエコーがとても豊かに聞こえるようになりました。

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スピーカーの背面に回り込む音が、後ろの壁面で反射していかに悪さをしているかがよくわかります。

このスピーカー後ろの設置がなかなかによくて気に入りました。私が、試行錯誤の結果、考えついたセッティングです。小さく軽い(紙製のボックス)ので、いくらでも試行錯誤ができて設置場所は自由です。
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ラフマニノフが愛したピアノ [オーディオ]

メジューエヴァのラフマニノフ作品集。

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先日のNHKBS「クラシック倶楽部」にすっかり魅せられしまいました。

その演奏の素晴らしいこと。TV音声ですがピアノの音も素晴らしい。

使っている楽器は、《ラフマニノフが愛したピアノ》。

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画面を見ると、傷だらけ。鍵盤を覆わんばかりの大きな手を持ったラフマニノフの爪がぶつかって引っ掻いた痕なんだとか。

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その楽器は、アメリカの倉庫で長期間保管されていて、虫食いやひび割れで演奏できない状態。2020年4月 ピアノは日本に運び込まれ、調律師の高木祐さんが 約1年かけて修復。1つ1つの部品が修理され よみがえった。そして、ラフマニノフが弾いていた当時の音を響かせる。

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メジューエヴァさんは、こう言っています。

『ラフマニノフのタッチを覚えている楽器
 古い楽器なので調子が(定まらない)
 時間と共に様々な音色を出してくれるすばらしい楽器だと思う』

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これを見てたまらずCDを買いました(正確にはe-onkyoからDL)。

プログラムもほぼ同じなのでライブかと思ったら、これはれっきとしたセッション録音。収録場所も違います。そして肝心のピアノなのですが、残念ながらこれも違う。とはいっても、こちらの楽器も、あのピアノ(1932年製)と同じニューヨークスタインウェイCD135(1925年製)。むしろ、こちらのほうが目鼻立ちがよりはっきりしている。

メジューエヴァさんは、日本の宝もののようなピアニスト。その真正のロシアンピアニズムにいつも魂を奪われる。ラフマニノフを堪能しました。
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